海外派遣スタッフ体験談
現地スタッフを指導し、また教えられる
井上 理咲子
- ポジション
- 薬剤師
- 派遣国
- 南スーダン
- 活動地域
- ジュバ
- 派遣期間
- 2014年7月~2015年1月

- Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?
-
MSFに参加する前は、日本の薬剤師として一人前になること、一流になることを目標に努力してきました。
初回の活動終了後からMSFへの参加は続けたいと思っていましたが、MSFに参加を続けることは、そのたびに日本の臨床現場から離れることでもあり、それまでに蓄えた知識や技術が衰えることを恐れる気持ちもありました。
日本でも海外でも通用する薬剤師であるため、今回2度目の参加の前に、1年間日本の病院で働き、勉強しました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?
-
初回の活動参加の際、ほかのNGOや国際機関の活動を理解することで視野が広がるのではと思い、帰国後は国際協力について勉強しました。
- Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?
-
初回派遣では、初めてのMSF、初めてのアフリカなど初めて尽くしで、仕事も生活も慣れるのに大変でした。今回は2回目の派遣ということで気持ちにゆとりがあり、同じプログラムに来ている初回派遣者が困りそうなことをサポートするよう心がけていました。
また、初回派遣では思うように発言できなかったので、少しでも自分の意見を言うように、また言いやすい環境を自ら作るように努めました。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
-
マラリア専門外来で、小児患者用に錠剤を粉砕する
南スーダンの首都ジュバを拠点にして、派遣期間の大半は4つの地方プログラムへ出張に行き現地の活動をサポートしていました。
この4つのプログラムでは一般診療に加え小児・妊婦の医療に力を入れていました。雨期であったこともあり、マラリア患者が1日300人を越えるプログラムもありました。
私は、薬品の安定供給と適正使用の改善を目標に、チームと協力しながら業務の見直しやスタッフの教育を行いました。通常業務を手伝い、業務を通じて現地のスタッフと仲良くなり、働きにくいところなどを話し合って改善へ繋げました。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
-
ジュバでは朝8時にミーティングを行い、各部署から仕事の進捗状況や現場の状況などを報告し、日中は現場とメールでやりとりをしながらサポートします。夜は屋上のテラスで夕食をとって仲間と歓談します。
各現場では、同じように朝8時にミーティングをし、日中は薬局と病棟を行き来します。薬局では薬や医療物資の払い出しをし、病棟ではそれらの適正使用をモニタリングします。夕方5時過ぎには薬局を閉め、夜はチームの仲間と食事をして歓談するのですが、私は首都での仕事やほかの現場からのメールなどがあり、夜も働いていました。
また病院や診療所は夜も運営しているので、時間外でも緊急に薬品が必要になり薬局に走ることもありました。チームの仲間と雑談するときは、症例について意見を出し合ったり、自国での治療方針とMSFとの相違点、MSFのほかの活動での出来事など、いろいろな国の「あるある話」などしていました。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
-
土壁とわらぶき屋根のトゥクル
ジュバでは5階建ての新築住居で、各自個室にシャワーと水洗トイレがありとても快適でした。プログラムの現場ではトゥクルという土壁の個室で、シャワーとトイレは共同でした。虫と蛇とトカゲと猫と共存していました。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
-
薬局スタッフへのトレーニングの様子
薬局では薬のほかにガーゼやチューブなどの消耗品、手術用器具、医療機器の部品も管理します。日本で薬剤師をしていたときは薬品のみ扱っていたので、そのほかの物資については仲間に教えてもらいながら扱いました。
外科医には手術を見学させてもらい、必要な物資やその使い方を教えてもらいました。看護師にはケガを処置の方法と必要な資材について教えてもらい、内科医には夜勤に同行させてもらい、現地のベテランスタッフにはMSFのプロトコルがどう改定されたかなどを教えてもらいました。
私は現地スタッフを管理する立場にあり、薬品供給や適正使用について教育もするのですが、現地に特有のやり方などについては、慣れた現地スタッフから教えてもらうことも多くありました。現地スタッフは熱心に教えてくれますし、私が理解して「なるぼど」って顔をすると、すごくうれしそうな顔をしてくれます。
- Q今後の展望は?
-
日本でも薬剤師として働きたいと思いますし、MSFでもスキルアップしてきたいと思います。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
-
MSFで求められる薬剤師の能力は、日本で培ってきた能力とは必ずしも一致しません。ですが学ぶことはたくさんあり、また教えてくれる人もたくさんいます。驚くことも多いですし、考えさせられることも多いです。MSFは見たことのない景色を見せてくれて、新しい発見が今までの経験と結びつき、視野が広がっていくのを感じます。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2012年11月~2013年5月
- 派遣国:マラウイ
- プログラム地域:チラヅル
- ポジション:薬剤師