海外派遣スタッフ体験談

アフガニスタンで34人の助産師をトレーニング

上野 麻実

ポジション
助産師
派遣国
アフガニスタン
活動地域
カブール
派遣期間
2015年1月~7月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

前回のイエメン派遣で自分の課題が見え、もう一度トライしたいと思いました。また、違う活動地にも興味がありました。前回の派遣を終えるときには2回目の参加を考えていました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

日本の病院でアルバイトをしばらくした後、フィリピンへ休暇および医療ボランティアへ行き、医師のいない村で無料診療の手伝いや、学校を巡回して小中高生を対象に性教育指導などを経験しました。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

MSFの現場や日本でたくさんの難産ケースのマネジメントを経験し、MSFのプロトコルを理解していたことは、現地助産師に臨床現場でトレーニングを行うベッドサイド・トレーニング、また産婦人科医との話し合いのうえで大きな助けになりました。日本の臨床での経験、初回派遣の経験はすべてに意味があると思います。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
海外派遣スタッフのチームメンバーと 海外派遣スタッフのチームメンバーと

34人の現地助産師のトレーニング、人材管理、病棟管理、助産師のリクルートが主な仕事でした。

派遣先は、オープンしてまだ間もないカブール市内の病院で、お産は月に800~900件ありました。この地域は、100万人の人口を抱えており、MSFのうわさを聞いた遠くの町からも妊婦さんがお産に来るようになり、日々増える患者さんへの対応、人材の確保、物品の管理・請求、勤務表のアレンジに頭を悩まされました。

海外派遣スタッフは平均10~12人で、医療チームリーダー、アドミニストレーター、ロジスティシャン、助産師、手術室看護師、新生児室看護師、小児科医、産婦人科医、麻酔科医です。

カブール市内は比較的病院も多く、医療施設へのアクセスもあるため、前回のイエメンの派遣で見たような重症ケースはまれで、手遅れになる前にみんな病院へ来ることができます。難産は全体の30%、帝王切開は10%以下でした。一方で、高血圧、肥満の妊婦さんが多数いました。

また、前回の出産が帝王切開で、今回は経膣分娩を目的に来る患者さんも多数いたことが印象的です。塩分、糖分の摂取過多も多く、基本的な健康教育、妊婦検診が不十分だと感じました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
トレーニングの様子 トレーニングの様子

朝は7時15分に業務が始まり、医療チームはミーティング、病棟ラウンドへ向かいます。オフィスは病院のすぐ隣の建物にあり、私はさまざまな用事で両方の建物を毎日20回以上往復していたと思います!

若い現地助産師も多いので、彼らのベッドサイド・トレーニングを重点的に行い、ほぼ陣痛室、分娩室で1日を過ごしていました。1日40件を超えるお産があったときは、人手が足りず、私も助産師のメンバーとして直接お産の介助を手伝いました。

木曜日、金曜日が週末ですがオンコールの携帯電話は常に持ち歩いていました。

Q現地での住居環境についておしえてください。
遠くに広がるカブールの町 遠くに広がるカブールの町

大きな4階建てのテラス付きの家に、それぞれの個室と共同のトイレ・シャワーがありました。食事も申し分なく快適に過ごせました。

活動地域はハザラという少数民族が暮らすエリアで、比較的治安は安定していました。

アフガニスタンのプログラムでは治安上外出できないことがほとんどですが、このプログラムは、カブールにいながら唯一外へ出ることのできるプログラムで(ラッキー!)、治安状況の許す範囲で宿舎の目の前のマーケットに買い物へ行くことができました。

チームの雰囲気も良く、テラスで映画やゲーム、いろいろな料理を週替わりで作って週末を楽しみました。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
無事に生まれた双子の赤ちゃんと 無事に生まれた双子の赤ちゃんと

現地助産師チームのスーパーバイザーを担う助産師のリクルートに関わったことです。履歴書の選別、試験の準備、面接、トレーニングと一貫して雇用プロセスを担当することは、大きなチャレンジと責任ではありましたが、たくさんの人に助けられながらやりきることができました。

私が雇用し、トレーニングをした助産師がチームのリーダーとなって引っ張っていってくれることを願うばかりです。

Q今後の展望は?

公衆衛生の大学院への進学が決まっています。知識をつけてパワーアップして、また現場に戻りたいです。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

一歩踏み出すことでまた自分の見聞、可能性を開くことができると思います!世界の現場はみなさんのことを必要としています。迷っていたらぜひ応募してみることをお勧めします!

MSF派遣履歴

活動ニュースを選ぶ