海外派遣スタッフ体験談
インフラの整わないコンゴで調達システムを構築
堀 正貴
- ポジション
- 副サプライコーディネーター
- 派遣国
- コンゴ民主共和国
- 活動地域
- キンサシャ
- 派遣期間
- 2015年10月~2016年2月

- Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?
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2015年8月に前回のシエラレオネの活動から戻り、9月に日本事務局へ次の活動への参加意思を伝えると、すぐにコンゴ民主共和国のプロジェクトの話がありました。業務内容は調達システムの構築で、仕事のイメージが明確であり、4ヵ月の期間で形が作れると思い参加しました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?
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自分が住んでいる北海道では外国語に触れる機会があまり無いので、毎日英語のプレゼンの本を参考にして自分の発表テキストを英語で作る練習をしていました。これは結局、現地でスタッフのトレーニングに使う教材のもとになり、やっておいてラッキーでした。
フランス語での活動だったので、仏語構文の勉強に集中してブラッシュアップしました。現地では英語とフランス語が会議中も入り混じり、国際色豊かでした。
- Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?
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アフリカでの現地調達は業者との直接交渉なので、商習慣が欧州とはかなり異なりますが、前回のシエラレオネで経験済みだったので、1人で街に出て70件ほどの業者と交渉し、契約までの実務を実施できました。
現金決済を最小限にして銀行送金が可能になるよう、またEメール交信と自社デリバリーが可能で、不正取引が出来ないようにトレースを残せるシステムを作り、取引金額のデータ管理が出来るようにしました。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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首都のキンシャサは、各地方のプロジェクトへの物流拠点として、ロジスティックとサプライがそれぞれ独立して業務を行っていました。
自分は副サプライコーディネーターとしてサプライ部門で着任しました。4ヵ月の短い任期だったので、調達システムの構築業務に集中しました。
コンゴ民主共和国は、国土が巨大であるのに交通網や連絡・情報インフラが貧素で、業務遂行には困難が多くあります。実務の向上を目指しているにもかかわらず、人材と組織構成が間に合わず、無理・無駄となっている点が見られました。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
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調達システムの構築だけだと、自分の作成したタイムスケジュールで充分できましたが、関連業務で改善点があまりにも多く、組織変更やトレーニングなどは時間的にも無理で、今回は手が出ませんでした。
土日が休みで、ほとんど毎日、残業も必要ありませんでした。原則は車移動ですが、大勢のスタッフが動くと車の手配も大変なので、集団移動に出来るだけ協力しました。土日が休みにもかかわらず、こうした状況であまり外出もせず、早朝に決まった地域でのジョギング、プールで水泳、週の食材購入で外出する程度でした。日中は暑いのでクーラーのある部屋でビデオなどを見ていました。
Wifiが事務所にしかないので、休日もクーラーの効いた事務所に行って同僚家族と交流をしていました。長期活動しているスタッフのほとんどは、現地でSIMカードを購入して、電話会社へプリペイドで支払いインターネット接続をしていました。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
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MSFでは、首都勤務のコーディネーター職のなかには家族同伴で参加できる場合がありますが、今回、家族持ち、夫婦で1~2年の任期で来ているスタッフも多く、これまでとまったく異なる雰囲気の現場でした。
子どものいる家族は庭付きの家で車が付き、単身者は一軒のアパートに数人がそれぞれ部屋を与えられて住んでいました。僕はアパートに3人で住み、キッチンと浴室をシェアしていましたが、やはり文化の違う人同士が一緒に暮らすので結構いろいろな問題がありました、
また、電気と水がよく止まり、自炊のため苦労しました。集団生活でキッチンが一緒だと、菜食主義や偏食、宗教上の規制など、仕事よりも帰宅後のほうが気を使うことが多かったと思います。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
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良い悪いは別として、アフリカ人同士、欧州人同士、またイスラム教、キリスト教、肌の色など、実際存在する人間同士の偏見を、活動の中で多く経験しました。日本人にとっては新たな発見だけれど、多くの人はその中で生きて来た、という状況もあるわけです。MSFの組織の中で1つの目標に向かって協働しているなか、日常ではぶつかり合いが存在しているのも事実です。それをどう、自分なりに消化していくかが重要です。
- Q今後の展望は?
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今回は首都での業務で、問題の多くは想定内でしたが、MSFの活動はやはり医療現場にいて実感があると思います。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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MSFの活動を通じ、自分が何かを変えるのは難しいけれど、自分が変わる事は出来ると思いました。ほかではできない貴重な体験ができ、そこで自分がどこまで対応できるかだと思います。そしてまた、その評価は実際に参加して経験しないとできません。
欧州から参加している20~30代の若いスタッフが、新しい体験に胸を躍らせながら参加しているのを見て、うらやましかったです。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2015年4月~2015年8月
- 派遣国:シエラレオネ
- 活動地域:フリータウン
- ポジション:ロジスティシャン
- 派遣期間:2014年5月~2014年8月
- 派遣国:エチオピア
- 活動地域:アロレッサ
- ポジション:ロジスティシャン