南アフリカ:性被害者は女性だけじゃない。集団レイプされた男性の告白
2017年12月27日
男性は重い口を開き、性暴力の体験を語った
性犯罪率が世界でも突出して高い南アフリカ。「プラチナ・ベルト」と呼ばれる鉱山帯では、女性の4人に1人が生涯に一度以上レイプされている。しかし、性暴力の問題は決して女性だけのものではない。元警察官のエリ・キグスウェインさん(仮名)は21歳のとき女3人から集団レイプを受けた。「事件のせいで、私の人生はめちゃくちゃになりました」と振り返る。
絶望の先にも「希望はある」と伝えたい
非番の夜、エリさんの車が故障し動かなくなった。そこへ1台の車が止まり、街まで送ってくれると言う。車に乗った途端、中にいた女3人がエリさんを押さえつけて性的暴行を振るった。
「事件を届け出たとき、警察は笑いました。それから間もなく私は脳卒中を起こして歩けなくなり、失業。何年も怒りが収まりませんでした」
国境なき医師団(MSF)の診察室でエリさんはゆっくりと話す。声は深く、穏やかだ。
「殺人を犯しかねなかったこともあります。怒りのあまり、銃を手にすることがありました。父が止めてくれなかったら、私はあの日人を殺していていたでしょう」
家族から治療を勧められたが、どこに行けばいいのか分からなかった。そんなとき、MSFが性被害者の支援センターを設立したことを知る。エリさんはここで、タボ・クゴアルというカウンセラーに出会った。
エリさんの話に耳を傾ける、MSFカウンセラーのタボ
「最初のセッションではまだ怒りを感じていました。2回目のとき、タボさんが『ワーク』(カウンセリングで行う演習課題)を教えてくれました。それをすると、心が落ち着くようになりました。3回目の後にすっかり変わり、4回目のセッションが終わる頃には治ったと感じました」とエリさんは話す。
エリさんは今、性暴力に遭った男性に対し支援センターへ行くよう呼びかけている。
「事件後、数年間は人生への希望を失っていました。でも今では女性に対する怒りは消えています。女性にキスして抱きしめることもできます。同じような経験をした男性に、『希望はあるよ』と伝えたい。性暴力を経験すると、男性も女性も同じように苦しむことになる。男性の被害者も、女性と同様に支えてあげることが大切です。何もしなければ後悔しますから」
このケア・センターでMSFは性被害者を支援している
MSFはボイテコンに専門の支援センターを置き、医療や心理・社会面で性暴力被害者を支援している。受診の大切さを呼びかけるキャンペーンも展開し、患者数は増加傾向にある。2015年からは州の保健局と協力して、複数の指定施設でこうしたサービスを提供できるよう整備している。