シリア:増え続ける難民、拡大を続ける危機に、MSFは?
2015年11月04日陸路や海路で欧州へ押し寄せている難民の出身国では、シリアがその上位を占めています。レバノン、ヨルダン、イラク、トルコなどの周辺国へ逃れた人びとを含めると、400万人以上が国外で難民生活を送っています。一方、内戦が続くシリア国内では、2015年初までに少なくとも22万人が命を落としたとみられています。
国境なき医師団(MSF)は、シリアの情勢が不安定になった当初から医療・人道援助を続けてきました。しかし、状況が悪化するにつれて活動は年々厳しさを増しています。本記事では、欧州への難民急増の要因となっているシリアおよび周辺国の現状とMSFの取り組みをまとめました。
- 茶色線は陸路、青色線は海路による難民の移動経路
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寄付をする※緊急支援対象から「シリア緊急援助」を選択してください。
電話 0120-999-199 でも受け付けています。(9:00~19:00/無休/通話料無料)
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シリア閉じる
主な拠点ごとの活動実績
MSFの診療所でやけどの治療を受ける子ども
アレッポ
外来患者2万3010人、入院患者1069人、集中治療1万1251件、手術900件
- 2015年1月~8月実績
イドリブ
やけど治療専門の施設を運営、1万人以上が滞在している国内避難キャンプでも活動ハサカ
診察1万8618件、分娩介助571件、帝王切開196件
- 2015年1月~7月実績
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レバノン開く
冬には酷寒、夏には猛暑となる難民キャンプ
シリア人難民の最大の受け入れ国で、その数が人口の3割近くを占めるまでに。政府は難民の受け入れを減らす方針を打ち出した。これに伴い、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は一時期、難民登録手続きを中断した。MSFは気候の厳しいベッカー高原やトリポリなどで活動。シリア内のパレスチナ人難民キャンプから逃れてきた人びとへの対応も行っている。
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ヨルダン開く
2015年に新装開業したMSFの再建外科病院
MSFは首都アンマンで再建外科病院を運営している。シリア内戦の激化に伴い、患者数の50%以上をシリア出身者が占めている。ザータリ難民キャンプはイドリブの国境地帯などでも医療・人道援助を提供している。
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イラク開く
ドミーズ難民キャンプでは
MSFが最大の医療援助提供者となっているクルド人自治区内に大勢のシリア人難民が滞在しており、MSFが医療・人道援助を続けている。他の援助団体はその規模を縮小しており、ドミーズ難民キャンプでは、MSFが最大の医療援助提供者とされている。
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トルコ開く
トルコに逃れたシリア人一家(2013年10月撮影)
国内の援助団体を通じた支援を行ってきたが、2015年6月、政府からMSFにシリア人難民を対象とした医療・人道援助活動の許可が出された。
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チュニジア開く
MSF・漁業者・行政が共同で行った救助訓練
地中海をわたって欧州を目指す人びとの遭難・漂流が相次いでいることから、MSFは沿岸諸国の海上警備当局や地元の漁業者と協力し、捜索・救助活動を続けている。
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イタリア開く
身動きが取れないほどの人数を乗せて欧州を目指す船
沿岸警備当局と連携して地中海を漂流している船の捜索・救助活動を行っている。また、保健省とも連携し、入国管理局に留置されている人びとへ心理ケアを含む医療提供を行っている。
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ギリシャ開く
過酷な長旅で負傷し、MSFの診療所に運ばれる難民
欧州を目指すシリア人難民が陸路・海路の両方からギリシャに押し寄せている。MSFは海路の到着点となっているレスボス島やドデカネス島、陸路の通過点であるギリシャ・マケドニア国境地帯などで医療・人道援助を続けている。
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セルビア開く
国境通過の機会を待ち続ける人びと
欧州での安全な生活を望んで北上を続ける人びとが押し寄せている国境地帯で、2014年末から、医療援助、心理ケア、衛生用品の配布などを行っている。
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クロアチア開く
体調を崩しMSFの診察を受ける車椅子の少年
ハンガリー入国を望む人びとが集まっている国境地帯に設置された一時滞在キャンプ内に、常時5000人ほどが滞在している、MSFはキャンプ内に診療所を開設して援助活動を続けている。