【5つの事実で分かる】干ばつ、栄養失調、病気…ソマリアを襲う、危機的な悪循環とは

2022年10月21日
MSFの施設を訪れた母親が、栄養補助食品のミルクを子どもに飲ませる Ⓒ MSF/Suleiman Hassan
MSFの施設を訪れた母親が、栄養補助食品のミルクを子どもに飲ませる Ⓒ MSF/Suleiman Hassan

生きるために必要なものが手に入らず、援助に頼るしかない。絶望的な状態です──多くの人が口をそろえ、そう話す。

洪水や干ばつ、紛争、病気の流行の悪循環に陥っているソマリアでは、人びとはある危機から回復しては次の危機の被害に遭っている。農作物の不作や家畜の死によって生計を立てられない人も多く、自分や家族を養うための選択肢はほぼない。南西部のバイドア市では、数十年にわたる紛争や治安の悪化、人道支援の欠如の中で、ここ40年で最悪の干ばつが続き、深刻な影響を受けている。

国境なき医師団(MSF)は、バイドアで急増する急性栄養失調の子どもたちに対応するため、栄養治療プログラムを拡大中だ。バイドアの危機的状況を読み解く、5つの事実をまとめた。

①国内避難民:バイドアは国内2番目の避難民の受け入れ先である

バイドアの国内避難民キャンプの一つ。ここでMSFは人びとに健康教育活動を行っている Ⓒ MSF/Suleiman Hassan
バイドアの国内避難民キャンプの一つ。ここでMSFは人びとに健康教育活動を行っている Ⓒ MSF/Suleiman Hassan

今年1月から8月の間に、市内に住む約60万人に加え、20万人以上の人びとがバイドアにたどり着いた。首都モガディシオに次いで、バイドアは現在、2番目に多くの避難民を受け入れている。

MSFの対応

緊急栄養、はしか、コレラの対応チームが活動中。市の人口のうち推定20%の人びとに医療を提供している。

②栄養失調:MSFは週に500人の急性栄養失調の子どもたちを診察

今年1月から8月にかけて、MSFはソマリア全土で20万6000人以上の子どもたちに栄養失調のスクリーニング検査を行い、そのうち2万3000人が栄養失調であることを突き止めた。中には、MSFの治療プログラムに来た時には既に危篤状態だった子どももいる。

栄養失調の深刻さをすぐに判断するため、「命のうでわ」を使って子どもの二の腕の太さを測る Ⓒ MSF/Suleiman Hassan
栄養失調の深刻さをすぐに判断するため、「命のうでわ」を使って子どもの二の腕の太さを測る Ⓒ MSF/Suleiman Hassan

バイドアでは、20の移動式診療所と32の栄養モニタリング施設を運営。医療チームは今年最初の8カ月間で1万2000人以上の栄養失調の子どもたちを治療した。

8月には1週間で、955人の子どもたちにスクリーニング検査を実施。761人の子どもたちを栄養治療プログラムに受け入れて治療を開始した。そのうち多くは新たに避難した世帯の子どもだった。現在も週に約500人の急性栄養失調の子どもたちを診察している。

・栄養失調のスクリーニング検査を受けた子どもたち 20万6000人 
・栄養失調と診断された子どもたち 2万3000人  
・MSFで栄養失調の治療を受けた子どもたち 1万2000人

③健康危機:干ばつと栄養失調が、健康状態の悪化に拍車をかけている

Ⓒ Lucille Favre/MSF
Ⓒ Lucille Favre/MSF
何度もの収穫期にわたって起きた干ばつで、現地の人びとの栄養状態は悪化した。だが、長引く人道危機の要因はそれだけではない。バイドアの医療体制は、増え続ける数十万人の避難民への対応に苦慮しており、十分とは言えない。また、長年の紛争や不十分な人道支援、気候変動、食料・燃料価格の高騰なども、人びとを困難な状況に追いこんでいる。

④病気の流行:栄養失調と病気の悪循環に

感染症は栄養失調のさらなる悪化を招く。栄養失調になった人は免疫が落ちるため感染症になりやすく、感染症になると、食欲が落ちることなどから、さらに栄養失調が進行する。

バイドアでは、子どもたちの栄養失調は、はしかなどの感染症によって悪化している上、避難してきた人びとの生活環境が過密なこともあり、はしかの発生率も劇的に増加している。また、市内にある何百もの非公式な仮設シェルターやキャンプでは、水や衛生設備の整備が追いつかず、コレラなどの水系感染症のまん延に拍車をかけている。結果的に栄養失調のリスクは高まるばかりだ。

はしか

ソマリアの風土病とされるはしかは、今年最初の半年間だけで、2021年全体の2倍の患者数が報告されている。

MSFの対応

今年1月から8月、MSFはソマリアの全ての施設で5460人以上のはしかの子どもたちを受け入れた。バイドアにも、はしかの新しい波が押し寄せている。MSFが治療している子どもの約30%は5歳以上で、そのほとんどは新たに避難した世帯の子どもたちだ。

コレラ

今年4月、バイドアではコレラが流行した。

MSFの対応

5月から8月にかけて、15カ所あるMSFの経口補水ポイントでは1万4112人のコレラ患者を記録。989人がコレラ治療センターに入院した。

MSFは避難した人びとの居住地で病気が広まらないよう、給水車を走らせ、水の塩素消毒や掘削井戸の設置を行い、清潔な水を利用しやすくした。また、344基のトイレを設置。健康教育活動を行い、石けんや貯水容器などの生活必需品を3700世帯に配布した。

⑤医療・人道援助:迅速かつ持続的で幅広い対応を行うことで、より多くの命を救える

ソマリアでの活動では、依然として治安の悪さが活動の足かせになっている。多くの場所は、干ばつの影響を強く受け、病気の発生や栄養失調の可能性が極めて高いにもかかわらず、現地に入り活動を行うことが難しい。

人びとの医療ニーズを満たすためには、この危機に対する人道対応の一環として、以下のような対策を実施していくことが極めて重要だ。

・総合的な栄養治療プログラム
・15歳以上の子どものはしかワクチン接種
・コレラの経口予防接種
・地域の水と衛生対策など

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