スーダン:北ダルフール州からの報告──物資は不足、医療者は動けず さらに多くの命が失われる可能性も
2023年04月21日
Ⓒ MSF/Ali Shukur

尽きつつある病院の物資
MSFの支援するエル・ファシール南病院では、4月15日に戦闘が始まってから、これまでに279人の負傷患者を受け入れ、残念ながら44人が亡くなりました。ひどい状況です。負傷者の大半は流れ弾を受けた民間人です。その中には子どももたくさんいて、銃弾による骨折や、脚、腹部、胸部に銃創や破片創などの傷を負っています。輸血の必要な人も少なくありません。通路の床の上で治療を受けている患者も大勢います。とにかく途方もない数の負傷者がいて、ベッドが足りません。
先週末まで、エル・ファシール南病院では手術ができませんでした。本来ここは産科病院で、昨年MSFが支援に乗り出したのも、周辺地域の深刻な妊産婦死亡率の改善を後押しするためです。しかし、戦闘が発生し、負傷者を治療できるように、この病院を転用する必要に迫られました。
市内の他の病院はいずれも、戦闘地区に近かったり、激しい武力衝突のせいで職員が出勤できなかったりして、一時閉鎖を余儀なくされています。今はそうした病院の外科医がエル・ファシール南病院に来て、相当数の外科手術を行えるようになっています。ただ、物資は急速に尽きつつあります。
私たちは、戦闘が小康状態に入った4月18日に病院までたどり着き、物資を補充することができました。でも、もし、ダルフール地方一帯に追加物資を運び込めず、これまでと同じくらい大勢の負傷者の受け入れが続くとしたら──残っている医薬品では3週間しか持ちません。
さらに大勢の命が失われる
現在のスーダン国内では、誰も何も移動することはできません。戦闘が始まって以来、各地の空港がすべて閉鎖され、街中でも戦闘が起きているため、北ダルフールだけでなく、スーダンそのものに追加物資の搬入ができないのです。隣国のチャドも国境を封鎖しました。このまま状況が変化せず、人道援助の提供が認められなければ、さらに大勢の命が失われることになります。
スーダン北西部に位置する北ダルフール州
今のところ確保されている2つの手術室では、ひっきりなしに来院する外傷や産婦人科の急患には対応しきれません。産科病棟では現在、ベッド1台を2人の女性が共有しています。以前は、近隣の病院が通常1日に3〜5件ほどの緊急帝王切開の全てと、30件あまりの正常分娩を請け負っていました。現在は、エル・ファシール南病院でその全てが行われ、外傷外科医も勤務しているわけです。
医療施設へのアクセスが鍵
現場のスタッフは手が回らないながらも、24時間体制で従事しています。私たちは、状況が許す限り、物資や経験豊富な外傷外科医をスーダン国内に招き入れ、支援を提供する道筋を模索していますが、医薬品の搬入と同じく現時点では不可能です。
国内の全ての医療施設に通えるようにすることが肝心です。今のところ、それこそが人命救助につながるでしょう。医療施設では物資が不足し、職員が出勤できずにいます。医療者や援助・救助従事者が皆、戦闘により活動停止を強いられ、その結果として、人びとが亡くなっているのです。移動を阻まれなければ、そして、紛争当事者が民間人の身の安全を保証すれば、この状況は変わるはずです。