プロジェクトを地域に引き継ぐ ナイジェリア・クロスリバー州での支援を終了

2019年12月24日掲載

心理社会支援について患者に説明する、MSFの心理カウンセラー © Albert Masias/MSF心理社会支援について患者に説明する、MSFの心理カウンセラー © Albert Masias/MSF

 「この危機の初期に比べると、保健医療や適切な住居が確保しやすくなってきました」
国境なき医師団(MSF)は11月、ナイジェリア南西部のクロスリバー州における医療・人道援助活動を締めくくった。その背景には、自らも困窮の中にありながら隣国からの難民を受け入れる、ナイジェリアの人びとの存在があった。

少しずつ落ち着いてきた人道状況

MSFが行ってきた移動診療 © Albert Masias/MSFMSFが行ってきた移動診療 © Albert Masias/MSF

カメルーンの北西州と南西州の紛争により、53万人が国内で避難生活を送っているほか(※1)、4万4000人余りがナイジェリアへ逃れ、主にクロスリバー、ベヌエ、タラバ、アクワ・イボムの4州に身を寄せている(※2)。カメルーン国内の英語圏である北西州・南西州の騒乱は2016年にぼっ発。きっかけは、この2州の法・教育制度を巡る対立だ。争いは過熱し、2017年10月には英語話者の非国家武装勢力が独立を求め、カメルーン軍および警察隊と衝突するに至った。

これまでのところ、難民の約半数がクロスリバー州オゴジャ地方行政区内の国連正規キャンプ2カ所と、隣のベヌエ州内のキャンプ1カ所で過ごしている。依然として日常的に暴力に遭うカメルーンの2州では、MSFも脆弱な人びとへの支援を拡大中だが、ナイジェリアのクロスリバー州の人道状況はここ何カ月かで落ち着いてきた。

「難民の人たちが地元の人たちによくなじみ、この危機の初期に比べると、保健医療、適切な住居、水・衛生設備が確保しやすくなっていることを現場のMSFチームも確認しています」ナイジェリアでMSF活動責任者を務めるアンドリュー・ミューズはそう説明する。

MSFがクロスリバー州で緊急援助に乗り出したのは2017年後半。最初の活動は、国境のナイジェリア側の村落における緊急の水・衛生活動だ。カメルーンの2州からの避難者数がピークに達すると、2018年半ばには支援を拡大し、クロスリバー州内13カ所へ移動診療を展開し、難民と受入側の地元民の両方を対象にプライマリ・ヘルスケア、性と生殖に関する医療、心の健康支援、水・衛生支援、健康教育の提供を行った。
 

カメルーン人難民を受け入れるナイジェリア人家庭

カメルーンから逃れてきた難民の子どもたち © Albert Masias/MSFカメルーンから逃れてきた難民の子どもたち © Albert Masias/MSF

わずかな数の国連機関や国際団体しか活動していないクロスリバー州では、受入側のナイジェリア人住民がカメルーンからの難民を好意的に受け入れ、自宅に難民を招き入れたりしている。

「ナイジェリア側の農村部の人びとは、今回のカメルーンの2州における危機の以前から非常に困窮していたにもかかわらず、難民支援の最大の担い手となってきました。ただでさえ保健医療の仕組みに対する支援に乏しく、人材も必須医薬品も足らないクロスリバー州の農村部にたくさんの人がなだれ込み、小規模医療施設の対応能力がひっ迫しているにも関わらずです」

MSFは州保健省への協力と、活動終了後の円滑な引き継ぎのための準備を兼ねて、ボキ、エトゥング、オバンリク、オゴジャの4地方行政区の診療所でナイジェリアの公衆衛生従事者のための研修会を50回開催。また、必須医薬品や家具を寄贈した。MSFが撤退しても、住民たちがきちんと保健医療を受けられることを目指して。


※1 国連人道問題調整事務所
※2,3 国連難民高等弁務官事務所
 

ナイジェリア南西部クロスリバー州の町 © Albert Masias/MSFナイジェリア南西部クロスリバー州の町 © Albert Masias/MSF

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