もし、レイプ被害に遭ってしまったら 被害後72時間以内にするべきこと

2019年04月25日掲載

医療コーディネーターを務める、タニア・マリン © Christina Simons/MSF医療コーディネーターを務める、タニア・マリン © Christina Simons/MSF

72時間———。

もし、レイプ被害に遭ってしまったら。被害者の健康を守るために、被害後、最初の72時間がとても重要だ。

メキシコとホンジュラス両国では近年、性暴力の被害者の支援が大きな問題になっている。多くの被害者が医療者による対応を受けようとしないため、公的な統計データ上では、性暴力被害は実際よりも下回っているとされている。両国で、国境なき医師団(MSF)の医療コーディネーターを務める、タニア・マリン。タニアは、性暴力が引き起こすさまざまな影響について、若者と話し合うことが大切だと考えている。 

総合的なケアが必要

メキシコとホンジュラスの両国では、レイプ被害が大きな問題になっています。被害者の多くは、医療者による対応を受けに行こうとはしません。公的な統計の値は、実際の数を下回っているとみられています。また、本来であれば総合的なケアをすべきだと思いますが、公衆衛生部門と非営利部門ではケアの内容が異なるため、必要なケアを一括して受けられないこともあります。 

活動を支えるMSFの専門家チーム

ホンジュラスで業務に携わるMSF医療コーディネーターのタニア(右)© Dominic Bracco / MSF
ホンジュラスで業務に携わるMSF医療コーディネーターのタニア(右)© Dominic Bracco / MSF

医師、心のケアの専門家、ソーシャルワーカーによる「プライオリティ・サービスチーム」を設け、レイプ被害のケアをすぐ開始できる態勢を整えています。医師は体のけがを治療し、HIVなどの性感染症に感染していないか、望まない妊娠をしていないかなど検査もできます。心のケアチームは、被害者の経過観察治療を担います。ソーシャルワーカーは、医療機関の利用や、保護してもらえる場所などについての質問に答えます。

健康教育チームはレイプについての情報を発信し、レイプの影響と、影響がどのように現れるかを伝えています。病院と診療所スタッフ向けの訓練も行っているほか、地元や全国で活動する団体と協力して被害者をより配慮するための活動の連絡調整も担っています。現在、MSFはホンジュラスで専門委員会の一員として、国の治療プロトコルを策定しています。これは、レイプ被害者の救急診療時に使われるものです。 

患者の多くは被害後72時間たってから来院

レイプに被害に何度も遭った経験を持つ女性。その後、MSFの心理ケアを受けた(メキシコで撮影) © Christina Simons/MSFレイプに被害に何度も遭った経験を持つ女性。その後、MSFの心理ケアを受けた(メキシコで撮影) © Christina Simons/MSF

MSFは2018年、ホンジュラスとメキシコ両国で、675人のレイプ被害者を支援しました。被害から72時間以内に適切なケアを受けることで、望まない妊娠、HIVなどの性感染症を防ぐことができます。またこの時間は、被害者が一番切実に心のケアと社会面の支援を必要とする時でもあります。

残念ながら、支援情報が行き渡っていないことに加えて、被害者女性は、身体的、社会的、文化的な高い壁に直面しています。患者の多くは被害から72時間以上たってから、MSFのところに来ています。

MSFには、レイプ被害者のための救急診療プロトコルがあります。性感染症の予防などについてまとめられています。被害から72時間以内に抗レトロウイルス薬(ARV)治療を受けなければ、患者はHIVに感染するかもしれません。また、緊急避妊薬をのまなければ、望まない妊娠をしてしまうことがあります。

重要なことは、たとえ72時間が過ぎた後でも、被害者は医療と心の治療を受けに行ったほうがよいということです。社会福祉サービスについても同様です。MSFの総合治療チームは、さまざまな暴力の被害者のケアも担っています。 

身近な場所で起こる被害

身近に起きた暴力を目撃した女性と話すMSFスタッフ(ホンジュラスで撮影)© MSF/Christina Simons身近に起きた暴力を目撃した女性と話すMSFスタッフ(ホンジュラスで撮影)© MSF/Christina Simons

メキシコとホンジュラスでは、レイプはタブー視されています。レイプの多くは、被害者の自宅で起きていて、加害者は家族か、親しい友人ということがよくあります。その上、加害者が自宅にいる事実を言うことさえ、不利な場合があります。経済的な依存や、家庭内の問題も絡んでいることが多いためです。さらに、思い込みというハードルが存在しています。「医療従事者による対応を受けるにあたり、被害者は、まず警察に通報しなければならない」というものです。通報は良いことですが、義務ではありません。どちらの場合であっても、レイプ被害者は、総合的なケアを受けられます。 

男性もレイプ被害者に

MSFも、レイプ被害者全員を診ているわけではありません。先ほど説明したような、さまざまなハードルがあるからです。MSFが実際に診ている人の大多数は女性です。男性はレイプを受けないのかというと、そうとは限りません。ジェンダーに対する固定概念や、男らしさにまつわる誤った考えのせいで、男性は通常のケアを受けに行きません。

それとは別に、未成年の被害者は過小報告されています。男子も女子もいて、両親や保護者を頼りにしています。しかし、両親や保護者は未成年の子どもたちを信用しないか、被害に遭ったのは自分のせいだと思い込ませる傾向があります。 

レイプによる妊娠のリスク

2018年に、ホンジュラスの首都・テグシガルパ市のプロジェクトで受け入れた患者の9%は、プライオリティ・サービスに着いたとき、妊娠していました。こうした症例の90%の被害者は、自分の妊娠はレイプによるものだと話していて、その19%は18歳未満でした。10代での妊娠は、合併症を引き起こしやすく、母子の健康にはよくないことが分かっています。でも、被害者の女性が、適切な時に緊急避妊薬をのめば、こうした事態も避けやすくなります。 

若者向けての情報発信

リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)に関する情報発信と、セクシュアリティに関する学校教育を、活動の重要要素に位置づけています。ホンジュラスのチョローマ市では、学校でのワークショップを開催して、同意とは何か、暴力にはどういったものがあるのかなどのテーマを解説しています。若い人たちと教師、保護者と一緒に活動しています。

今は、フレンドリー・サービシズというものも実施しています。これは10代の若者向けの情報提供と、個人から求められた場合に、個別にリプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する健康)を提供しています。

一方で、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)というトピックについて、もっと公に話せる雰囲気を作っていくことが大切です。これらのサービスをもっと多くの人に利用してもらえるようにしていくことです。情報提供だけでも、患者への医療と心のケアにつながると考えています。 

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