ここが安全な場所?リビアの首都で激戦 多くの命が危険に

2019年04月19日掲載

アイン・ザラ収容センターで勾留される人びと 国連グテーレス事務総長の訪問時 © Mahmud TURKIA/AFPアイン・ザラ収容センターで勾留される人びと 国連グテーレス事務総長の訪問時 © Mahmud TURKIA/AFP

安全に暮らせる場所を求めて世界中で人びとが危険な旅を続けるなか、ヨーロッパを目指す移民・難民が渡航の拠点とするリビアでは、4月上旬から武力衝突が起き、民間人の安全が脅かされている。首都トリポリでは、戦闘激化で何千世帯ものリビア人家庭が自宅からの避難を余儀なくされた。国境なき医師団(MSF)が援助する移民・難民の収容センターも武力衝突に巻き込まれる恐れがあり、3000人以上の人びとを速やかに避難させるよう、緊急に呼び掛けている。 

脅かされる一般市民の命

世界保健機関(WHO)によると、4月16日までの死傷者は1005人(死亡189人、負傷816人)。連日の無差別爆撃は保健医療サービスとその従事者に影響を及ぼしており、ここ数日は、人口密度の高い地区で増加している。WHOの報告では、今回の戦闘で医師2人と救急車の運転手1人が命を奪われ、別の医師1人もけがをしたほか、救急車9台が全・半壊したという。

戦闘の中心地やその付近の移民・難民収容センターには3000人以上が勾留されており、食料や水といった最低限の援助さえ極めて限定的で、多くの人びとが何日も食事を摂れずにいる。

民間人とインフラを守るためのあらゆる手立てを立て、人口密度の高い地区への無差別爆撃を止めなければならない。また、医療スタッフはいかなる事態においても守られなければならない。トリポリ市内外の医療施設の対応能力は限られており、医薬品の在庫も2週間はもたないと見られている。また、市内では一部、水と電力の供給が途絶えたままだ。 

戦闘下の収容センター

アブ・サリム収容センターでMSFの医師と話す青年 © Sam Turner/MSFアブ・サリム収容センターでMSFの医師と話す青年 © Sam Turner/MSF

MSFの医療チームは今回の戦闘の当初からトリポリに入っており、市民に基礎医療、非常食、水を提供している。自宅から逃げて避難所で暮らす家族には、衛生キットを配布するとともに、トリポリ市内と市の南方の2病院に、戦闘で受けた負傷を治療するキット(縫合糸、傷の被覆材、必須薬)も寄贈した。

また、市内の4つの移民・難民収容センターに勾留されている、医療が必要な人びとを別の医療機関に搬送している。さらに、収容センター内の患者に、戦闘が続く最中でも治療を続けられるよう、結核などの病気の必須医薬品3週間分を届けた。

4つのセンターのうち、タジュラの施設では600人以上が食料を地元の人びとに頼っており、状況が心配される。戦闘は施設内の移民・難民の心の健康にも悪い影響を与えており、銃声や空襲を間近で聞いたことで不安感や恐怖感の高まりを覚える患者が多くみられる。

戦線まで1.5kmほどのアイン・ザラ収容センターでは、約200人が約6km離れたサバー収容センターに移された。これによって、サバーの施設では被収容者の数が540人近くに増え、ただでさえ劣悪な環境と保守管理が、ますます悪化している。また、戦闘地域から約6kmのアブ・サリム収容センターにも910人ほどが取り残され、4月16日の夜には周辺地区で砲撃があったため、数日のうちにこの収容センターにも戦闘の影響が及ぶ可能性がある。

トリポリ市外では、ホムス、ズリテン、ミスラタで、理不尽に勾留され続けている800人余りを援助するほか、バニ・ワレドでも診療を続けている。ただし、今回の武力衝突の結果、これらの都市からトリポリ市内の病院への患者紹介はできなくなってしまった。 

欧州各国は人命救助で一致を

トリポリでは、過去7ヵ月間で3度こうした武力衝突が起きている。リビアが移民・難民にとって「安全な場所」と位置づけたいヨーロッパ諸国の無理な企てが、いっそう際立つばかりだ。民間人の安全が守られ、収容センターに勾留されている移民・難民が人道的に避難できるよう、MSFは強く求めている。

また、地中海の捜索・救助活動は速やかに拡充しなければならない。どの国の出身であろうと、戦闘を逃れようとする人は、安全に生きるために残されたごく少ない選択肢の1つとして地中海を渡る。今回の戦闘発生後、リビアからの出航が増加したか否かは確認できないものの、地中海で捜索・救助活動が行われなければ、渡航者の命が脅威にさらされることは明白だ。命の危険は、戦闘下のトリポリ市に劣らない。

そして、海難救助を受けた人は誰であれ国際法に則って安全な港に搬送する必要がある。これを実現するには、欧州諸国が早急に、生存者を安全な港へ上陸させる方策に合意し、MSFや他NGOに対して、人命救助・人道援助を萎縮させるような懲罰的な対応をやめなければならない。 

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