ヨーロッパを目指した・・・だが飲み水もなく汚い施設に押し込められた人びと

2018年08月15日掲載

「海上で死と隣り合わせの状況を味わった人びとを、勾留施設へ送っていいはずがありません。さらに痛めつけることになります」

そう、憤るのは国境なき医師団(MSF)の緊急対応責任者カルリーネ・クライエルだ。国連機関によると、イタリア~マルタ~リビア間の国際水域で、リビア沿岸警備隊の拿捕によりリビアに引き戻された難民らは、2018年から1万1800人以上に上る。リビアに送り返された後、管理が不十分な沿岸の勾留施設へと送られる。

MSFは約2年前から、リビアの首都トリポリ、ミスラタ、ホムスの各3都市で、不法移民対策庁(DCIM)などが管轄する施設に勾留されている難民らに対して、医療援助活動を続けてきた。勾留者には医療の保証がないためだ。患者は、気道感染症、急性水様性下痢、疥癬、尿路感染症などといった症状を抱えている。自殺を考えたり、心的外傷後ストレス障害を示したりする患者も多い。非人道的な環境下での勾留が主な要因とされる。

「大半の人が、リビアや自国からの避難の中で、暴力を振るわれ、搾取されている。性暴力、人身売買、拷問や虐待の被害者もいます。特に無力なのは、子ども、妊婦や母親、高齢者など弱い立場にある人びとです」 

一方で勾留施設に入れられた人びとは、正式な登録もされず、適切な記録も作られないため、勾留施設に入った後の消息をたどる術がない。勾留や待遇の合法性を問うこともできない。

国際移住機関(IOM)と難民高等弁務官事務所(UNHCR)は2017年、非合理な勾留から難民らを助け出す避難プログラムの範囲を拡大した。だが実際は、リビア国内のごく限られた人びとしか助け出せていない。IOMは主に、難民らに勾留施設から出身国へと帰国するよう促しており、昨年11月以降、約1万5000人が戻された。ふるさとへの帰国を望みながらリビアで足止めされている人にとっては歓迎すべき話だが、この場合の帰国には疑問符が付く。だが、勾留施設から出るために他に手段はない。

UNHCRは先日、難民ら約1000人を勾留から救い出した。だが、大半がニジェールに送られた。ニジェールでは、別の第三国に転出するよう緊急に求められている。
 

3都市で活動するMSFチームは、海上での拿捕が増えた結果、既に過密状態だった勾留施設の難民らの数も急増したという。先日もMSFは、海上で拘束されトリポリの施設に送られた319人を1日で診療した。大半が数ヵ月にわたって人身売買業者に拘束され、その後、地中海を渡ろうとした人びとだった。また、ミスラタとホムスでは、やけどや疥癬、呼吸器感染症、脱水症を抱える勾留者を治療した。海上で拿捕され、全ての荷物を海で失った一団が連れて来られることもあった。

「ホムスでは、とても幼い子を含む300人余りが過密な勾留施設に閉じ込められています。息苦しくなるほど暑いのに換気もされておらず、清潔な飲み水もほとんどありません。あるのは、塩水と下水の混ざった汚い水です」

そう話すのはリビアで活動するMSFのアン・バリー・医療副コーディネーターだ。

「施設内は緊迫しており、勾留者はありとあらゆる虐待にさらされています。極限状態にあり、私たちが診ている患者の中には、外傷や骨折を負っている人もいます。脱走を試みる人もいますし、ハンガーストライキをする人もいます」

勾留の背景には、欧州各国政府が、難民らが欧州に入り込むのを阻もうという思惑がある。その鍵となるのが、リビア国沿岸警備隊だ。欧州各国政府は警備隊に対して、海上で難民らを拿捕してリビアに連れ戻すための装備、訓練、支援の提供をしている。

MSFは、欧州連合(EU)やリビア、リビア沿岸警備隊に対して、リビア国外に避難しようとしている難民らを非合理に勾留することをやめるよう求めている。地中海の国際水域で救助された人びとは、リビアに送還するのではなく、国際法および海事法が定める安全な港へ返すべきである。

クライエルは、「海上で拿捕された難民らをリビアに送り返すことも、非人道的な環境で勾留することもあってはならないことだ」。

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