ケニア:MSF、ソマリア人難民キャンプの惨状を報告
2014年03月14日ケニアのダダーブには、世界最大級と言われる難民キャンプ群が広がっている。滞在者はソマリアから内戦を逃れて来た人びとで、人口は50万人以上とみられている。現在、滞在者が自発的にソマリアへ帰国できるようにする計画が進められている。
一方、国境なき医師団(MSF)は、ダダーブ難民キャンプ群に残る人びとへの援助が損なわれないように配慮することを求めている。キャンプで活動中の多くの援助団体が資金難に直面している。また、キャンプ内の治安が悪化している。MSFは、各国の資金拠出者に人道援助への支援を続けることを呼び掛け、ケニア政府には難民保護の拡大を呼び掛けている。
MSFは20年にわたりダダーブで活動を続けている。その中のダガレイ難民キャンプでは、唯一の医療提供者だ。月平均で約1万8000件の外来診療を行い、合計450人以上を受け入れている。
記事を全文読む
「住居がない」滞在者の4割に

MSFのケニアでの活動責任者であるチャールズ・ゴードリーは「調査結果はダガレイの著しく不適切な環境を示すものです。例えば、十分に雨をしのげる住居がないと回答した人は41%にのぼります。また、10人に1人がトイレを使える状態にありません」と話す。
2014年のデータでも、現状の深刻さが示されている。1月にMSFが治療した水様性下痢の症例数は2346件で、前年同月よりも900件多い。ゴードリーは「下痢の症例数の増加率は39%で、キャンプの衛生・住環境の向上が急務であることがわかります。キャンプ内の生活条件の悪さはとても見過ごせません」と指摘する。
栄養失調も深刻化

調査では、ソマリア帰国を希望するか否かについても質問した。ダガレイは前述のような過酷な環境だが、8割が「帰国を検討するつもりはない」と答えている。
栄養失調も、ダガレイでは深刻な健康問題となっている。緊急事態には至っていないが、MSFの外来栄養治療プログラムでの新規受け入れ数が月平均175件に及ぶなど、多数の栄養失調児の存在が明らかになっている。MSFが活動している病院でも、合併症を伴う栄養失調の子どもを月平均49人受け入れている。
ゴードリーは「MSFの各医療チームが人びとの栄養状態を注視しています。援助団体への融資減は大変心配です。世界食糧計画(WFP)も、2013年11月~12月のダダーブにおける食糧配給を20%縮小せざるを得ませんでした。同程度の縮小が再びあれば、難民の健康・栄養状態に深刻な影響を及ぼしかねません」と話す。
各国政府・諸機関への呼びかけ
各国の資金拠出者を始め、すべての関係者は、難民キャンプにおける援助と安全の維持に必要な融資を保障しよう。
保護される権利を認めよう。引き続き保護を求めるすべての人が速やかに緊急援助を受けられるように、2011年10月に閉鎖した正規の難民登録所を再開しよう。
国際援助団体の活動が阻まれないように、ケニア政府は難民保護とキャンプの治安向上を徹底しよう。
再び迫害を受けかねない地域へ難民を移送することを禁じた国際法上の「ノン・ルフールマン原則」を尊重し、人びとがソマリアに帰国する際は、法的・身体的・経済的な側面を含め、安全と尊厳が守られることを保障しよう。
ダガレイに滞在している人びとの話
MSFは、ダダーブ難民キャンプ群を構成する5キャンプの1つであるダガレイについて、依然として解消されない不適切な環境と治安を新たに取り上げたレポート『ダダーブの難民:見えない明日』(2014年3月10日付)を発行した。MSFが2013年に同キャンプで行った調査結果も詳述している。
MSFのダガレイでの活動実績(2013年) | |
---|---|
21万6597件 | 1次診療 |
8692件 | 入院 |
2585件 | 医療施設での分娩 |
3670人 | 栄養補助プログラムを提供した中等症以下の栄養失調児 |
3087人 | 外来治療を受けた重度急性栄養失調児 |
1062人 | 入院治療を受けた合併症を伴う重度急性栄養失調児 |
1万827件 | 心理ケアの相談・セッション |
ダガレイに滞在する人びとの声(レポートより抜粋)
- ソマリアに帰国するつもりはありませんが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が世帯ごとの移転を行う可能性がありますので、それには応じるつもりです。私の子どもは皆、このダダーブ・キャンプの生まれです。ケニアの家庭として、この国で教育を受けさせることになるんでしょうね……。
- 私がソマリアを離れた原因は戦争です。状況はいまだに悪く、今すぐ帰国するつもりはありません。帰国することになれば、ゼロから生活を再建することになるでしょう。