事務局からのお知らせ

虐待・搾取・ハラスメントのない活動環境の実現をめざして

2019年06月17日

 国境なき医師団(MSF)は、いかなる虐待やハラスメントも許さない活動環境づくりを推進しています。MSFの指導部は率先してこの問題に向き合い、虐待・ハラスメントの防止や問題発覚後の対応策の強化に取り組んでいます。また、全てのMSFスタッフには、MSFの行動規範憲章で規定された基本理念の遵守を徹底させます。

2018年前半、MSFは虐待・ハラスメント撲滅に向けて行ってきた取り組み、課題、2017年に寄せられた容認できない行動の通報件数と内部調査の結果を声明として発表しました。そしてこのたび、2018年の通報件数、および現在の取り組みに関する最新状況をご報告いたします。MSFは引き続きこの重大な問題に一丸となって取り組んでまいります。

内部通報制度の課題

 かねてから認識されていた最重要課題の1つに内部通報制度の利用が少ないことが挙げられます。スタッフおよび患者の誰もがこの制度の存在を認知し、安心して利用できるよう、制度の信頼性を高めるようさらに努力する必要がありました。2018年、容認できない行動に関する通報件数は、前年と比較して増えたものの、依然として実態より大きく下回っていると考えられ、過少申告とデータ収集の両方に課題が残っています。 

取り組みの強化

 昨年発表した声明では、容認できない行動を早期に発見し、未然に防ぐ一連の対策についてふれました。これらには、研修、ワークショップ、活動地訪問、冊子や視聴覚資料の制作と配布などが挙げられます。2018年はこれら全ての対策を継続するとともに、MSF内部の担当チームの増員、容認できない行動に関する意識改善・防止・早期発見を促す新たな対策、組織全体でのデータ収集・共有の改善を図りました。この問題に向けられる社会的関心の高まりが、関係者の意識の向上と通報を後押ししていることも考えられます。 

2018年実態

 2018年は世界で4万3千人を超えるMSFスタッフが活動し、その活動地からさまざまな行動に関して計356件の内部通報が寄せられました(活動地からの通報件数であり、計4000人の事務局スタッフは含まれていません)。通報件数は、2017年の182件から大幅に増えた結果となりました。

2018年の通報のうち、調査の結果、虐待または不適切な行動と認められたものは134件ありました(2017年は83件)。これには、性的虐待・ハラスメント・搾取、権力の乱用、心理的嫌がらせ、差別、身体的暴力など、何らかのかたちで虐待に分類される事案が78件含まれています(2017年は61件)。今日までに計52人のスタッフが何らかの虐待への関与を理由に懲戒解雇されました(2017年は58人)。

2018年に虐待と分類された合計78件のうち、内部調査により性的虐待・ハラスメント・搾取と確認されたものは59件(2017年は32件)ありました。その結果、36人のスタッフが懲戒解雇されました(2017年は20人)。

また、不適切な行動と認められた56件(2017年は22件)には、不適切な人事管理や人間関係、社会通念上不適切とされる行動や、チームの団結を揺るがす行動、薬物やアルコールの乱用が含まれます。

内部通報制度の改善に向けて

 こうした現状は、MSFが求める全容把握のレベルには至っていないことを示しています。情報収集も前年より改善していますが、過少申告を含め取り組む課題が多く残されています。一方、この問題を重視し体制強化したことで、より多くの通報件数につながったと認識しています。MSFは今後も、スタッフと患者、関係者の誰もが、容認できない行動について積極的に通報を行うよう強く促してまいります。 

2017年実態調査結果の更新

 情報の収集と集計方法を改善した結果、2017年の数値が更新され、通報件数が以前の推計の146件よりも多い182件であることが判明しました。虐待または不適切な行為と確認された事案の数も合わせて微増しています。本報告の前年件数は更新済みの数値を用いていますが、昨年の声明には更新前の件数を残しています。また、2018年に通報のあった事案の一部は依然調査中で、まだ集計に含まれていないため、今後件数は更新される可能性があります。 

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