活動環境における虐待、搾取、ハラスメント対策について

2018年06月22日

国境なき医師団(MSF)は、その活動環境において、虐待、ハラスメント、搾取といったいかなる不正行為も容認しません。そして過去に起きた不正行為、またそうした事例に対し適切な対応が取られなかったと感じた方々からのご指摘について真摯に受け止めております。

これまで不正行為を働いた者に対しては、解雇を始めとする懲戒処分を下しています。同時に、不正行為に対する内部通報制度の改善を継続することで、不正を未然に防ぎ、早期発見による解決を目指してまいります。また、不正に対して内外から厳しい目が向けられることによって、議論が深まり、不正への抑止力が働き、内部通報も促されるものと考えております。今後も、全スタッフが責任ある行動の重要性を認識し、正しく振る舞うよう徹底してまいります。

MSFの活動環境における虐待、搾取、ハラスメント対策の詳細については、2018年2月に発表した以下の声明文をご参照ください。

声明(全文)

国境なき医師団(MSF)は、その活動環境において、いかなる虐待やハラスメントも許さない体制作りを推進しています。MSFの指導部は率先してこの問題に取り組んでおり、内部通報制度の強化や、被害者および内部通報者の保護など、不正行為の予防・解決策の強化を進めています。

MSFの活動の誠実性は、スタッフ一人ひとりの良識ある行動によって支えられています。また活動地がどこであっても、地域の人びとに対する敬意を忘れることはあってはなりません。

MSFの役割は命の危機にある人びとへの援助であるとともに、自らの職業倫理規範を守ることにあります。MSFは全てのスタッフに対し、MSF憲章で規定された基本理念の遵守を求めています。

MSFは、他者の弱みにつけこむ行為、私利のために自らの職務を利用する行動を一切容認しません。また個人の心身に対するいかなる虐待、ハラスメント、未成年との性的な関係ほか、人間としての尊厳を重んじない行動も同様です。

不正行為の通報体制

MSFでは、あらゆる種類の不正行為を、予防、発見、通報、対応するため、組織内外から通報できる体制を以前から導入しています。全てのMSFのスタッフは、所属部門長や専用のメールアドレスをもつ窓口を通じて不正行為を通報するよう奨励されています。MSFの活動地においても、不正行為の被害者や目撃者は、申し立てが適切に取り扱われるよう、不正行為をMSFに通報するよう奨励されています。

意識向上の必要性

MSFは団体内で意識向上運動を実施して全スタッフに通報体制の存在を周知しています。こうした情報はマニュアル化されているほか、ブリーフィング、活動地訪問、研修等の際に伝えられています。活動地では、この問題に特化した意識向上セッションも定期的に開催されています。さらに、虐待とその対応に関するオンライン教育ツールは定期的に更新・改善されています。

MSFは被害者と内部通報者の保護に特に力を入れています。MSFが目指すのは、被害者と内部通報者が、自らの安全や職、機密が守られた上で安心して通報できる環境です。こうした取り組みには、常に一定の注意を払い続けることと特別な予算と人材が不可欠であり、対策に終わりはありません。

機密保持

不正行為が通報された後、MSFにとっての最優先事項は潜在的な被害者と内部通報者の安全と健康です。被害者保護は直ちに行われ、心理ケアと医療ケア、法的なサポートが提供されます。

MSFは、被害者や申し立てに関する調査に同意した目撃者に対し、事実確認やその後の適切な対応、制裁、予防策を判断するために問い合わせをすることがあります。こうした際、MSFは最高レベルの機密保持をもって対応します。不正行為に関与したスタッフへの処置は、正式な警告から研修の義務化、一時的あるいは最終的な契約解除まで多岐にわたります。

事態を司法の手に委ねるべきか否かについて、MSFは常に被害者の判断を尊重しています。未成年に対する性的虐待が起きた場合、MSFは司法当局への通報を基本方針としています。しかしその場合も子どもの利益を最優先するとともに、そうした司法当局が存在しているかどうかを考慮しています。

通報のハードルを下げるために

通報体制の強化によって通報件数は増えていますが、いまだ過小申告の可能性があると考えています。

2017年には、世界で4万人を超えるMSFスタッフが活動し、事務局には合計146件の通報や申し立てが寄せられました。そのなかには職権濫用、差別、ハラスメント、その他の不適切な行動などが含まれています。これらの案件のうち、内部調査によって活動地で起きたハラスメントや虐待40件が判明しました。

このうち24件が性的ハラスメントもしくは虐待に相当し、そのうち2件が、MSFスタッフがMSFスタッフ以外の人(患者もしくは地域住民)に対して行ったものでした。この24件の性的ハラスメントもしくは虐待によって、合計19人のスタッフが解雇され、残りのスタッフは、警告や停職といった他の方法で処罰を受けています。

過少申告となる理由は一般社会と同様であると思われます。たとえば、言っても信じてもらえない、圧倒的な偏見をもたれている、報復の恐れがある、などです。紛争地などMSFの活動地の多くを占める危機的状況下では事態は一層深刻です。一般的に、被害者の保護体制は不完全で、暴力や刑事責任逃れが横行し、住民は外部からの援助にかなりの部分を頼らざるを得ない状況です。MSFの団体としての規模や、スタッフの交代頻度、多様性を考慮すると、ハラスメントや虐待に関する方針について継続的な情報提供をするだけでなく、通報体制の存在が不可欠です。

MSFの重要課題は通報体制を強化し、事務局スタッフから地域住民や患者にいたる誰もが、こうした手続きと利用方法について理解し、被害者と内部通報者が常に守られた状態を確保することです。

ハラスメントや虐待と無縁の活動環境の実現の努力は現在も進行中であり、MSFのスタッフ全員が責任を負っています。MSFが懸命に助けようとしているのは苦境にある人びとであり、MSFは援助活動においてこうした人びとを傷つけないように努めてまいります。

2017年実態調査結果の更新(2019年6月17日)
情報の収集と集計方法を改善した結果、2017年の数値が更新され、通報件数が以前の推計の146件よりも多い182件であることが判明しました。ここでは更新前の件数を残しています。

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