海外派遣スタッフ体験談
国連保護区内で2度目の活動、ニーズの大きさを知る
関 聡志
- ポジション
- 外科医
- 派遣国
- 南スーダン
- 活動地域
- ベンティウ
- 派遣期間
- 2017年3月~2017年5月
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- Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?
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MSFでイエメンの派遣活動中に、次の活動としてオファーがありました。南スーダンのベンティウは初回の派遣と同じプロジェクトでもあり、もう一度そこで活動したいと思っていたので参加を決めました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?
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前回の南スーダンの派遣で歯科の患者さんを診ることが多かったので、知り合いを通じて日本の病院の歯科口腔外科を紹介してもらい、抜歯や歯科診療について勉強させてもらいました。
MSFでは基本的に歯科の診療はしませんが、南スーダンのように、医師が自分だけ、という状況では、専門外のことでもいろいろな知識を持って対応ができると大いに役に立つと思います。
- Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?
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同じ場所に2回目の派遣でしたので、現地スタッフもお互いに知った顔で、スムーズに活動をスタートすることができました。
また、周辺地域で小さな衝突が起こっていたためか、今回は前回よりも銃創や爆弾で受けた傷の患者さんが多く運ばれてきました。イエメンの活動でそういった患者さんを診る機会が多かったので、その経験は生きたと思います。
今回は、実際に抜歯などをすることもあり、日本の病院で歯科を研修させてもらった経験を生かすことができました。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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灼熱(しゃくねつ)のテント内で汗をかきながら手術
国連の民間人保護区域(POC)内にある140床の病院です。POC内には約12万人が住み、周辺地域を含めて唯一の入院できる病院でした。そのため、かなり遠方から来る患者さんも多く、またMSFの別のプロジェクトからの搬送も多くありました。
医療チームの外国人派遣スタッフは、チームリーダーの下、内科医1人、外科医1人、小児科医2人、麻酔科医1人、助産師2人、看護師3人という構成でした。そのほかにロジスティシャンやアドミニストレーターなど、総勢約20人の大きなプロジェクトでした。
外科医は自分1人ですので、外科系の患者さんはなんでも診なければなりません。患者さんは膿瘍(のうよう)や蜂窩織炎(ほうかしきえん)、尿路結石などが多いですが、銃創や骨折、壊死(えし)による四肢切断、腸閉塞(へいそく)や虫垂炎、帝王切開などの手術もたびたび行いました。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
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朝は8時から医療スタッフのミーティングや当直帯からの引き継ぎがあり、その後に病棟回診、処置や予定手術などを行います。外来や緊急を要する症例はその都度対応していました。
外科医は1人で毎日24時間オンコールのため、仕事がないときは自分のテントで休んだり、治療についてインターネットやMSFのガイドラインで調べたりしていました。
- Q現地での住居環境について教えてください。
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同僚の麻酔科医と一緒に洗濯
外国人派遣スタッフは個別のテントに住み、昼・夕食は現地の担当スタッフが作ってくれます。食事は、ぜいたくはできませんが週末はヤギ肉のグリルが出ることもあり、物資が届くフライト状況にもよりますがオレンジやリンゴなどもよく食べていました。
派遣された時期は乾期の終わり頃で、気温は50℃を超える日もあり、扇風機はただのドライヤーでした。ただ、朝晩は毛布が欲しい程度に冷えるため、温かいシャワーが非常に恋しくなりました。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
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ある日、急性腹症の若い男性が別のプロジェクトからセスナ機で搬送されてきました。手術を繰り返したのですが、結局亡くなってしまいました。
最期に、もう状態が厳しいことを母親へ説明すると、泣き崩れながらも「自分たちが住んでいた場所では何も治療してもらうことが出来なかった。ここまで連れてきてくれて手術してもらって感謝している」と言ってくれました。
その後、ご遺体は避難民キャンプの外の指定区域に埋葬され、母親はMSFのセスナ機で村へ帰って行きました。現在の情勢を考えると、もしかしたら家族はお墓参りももう出来ないかもしれません。どんな気持ちでセスナに乗ったのだろうと考えると、いたたまれない気持ちになります。
- Q今後の展望は?
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いったん日本の病院で勤務し、1年後を目安にまた活動に参加できればと思っています。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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手術室スタッフと処置室にて
現場の医療状況は日本とは比較にもならないほど悪く、ニーズは非常に大きいと思います。さまざまなハードルはあるかとは思いますが、案ずるより産むが易し、です。たくさんの方がMSFに応募して、一緒に働くことが出来たらと思います。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2016年11月~2017年1月
- 派遣国:イエメン
- 活動地域:アルカイダ
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2016年7月~2016年9月
- 派遣国:南スーダン
- 活動地域:ベンティウ
- ポジション:外科医