海外派遣スタッフ体験談
大統領選を控えた集団災害対応を準備
鬼頭 佳代
- ポジション
- 手術室看護師
- 派遣国
- ナイジェリア
- 活動地域
- ポートハーコート
- 派遣期間
- 2015年2月

- Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?
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前回の南スーダンでの活動がとても有意義で充実していたので、またすぐに行きたいと考えていました。日本では派遣会社に登録して看護師として働いていますが、更新時に現在働いている病院からMSFの参加と勤務の更新の許可が出たため、再び参加することを決めました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?
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前回の活動から帰国後すぐに、日本の手術室で働き始め、看護技術の向上や学習を重ねていきました。
語学については、積極的に英語番組をみたり、前回の活動で出会った仲間と会話やメールなどをしたり、英語に触れる機会を多くして、語学力をキープするようにしました。
- Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?
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すべてが役に立ったと思います。まずはMSFのプロトコルに関して、特に手術室関連の感染予防は現場で直接的に必要なことなので、2回目の派遣でプロトコルがよくわかっていたことにより仕事自体がスムーズにいきました。
ほかには、ミーティングの進め方や現地での生活など、日本とは違った特徴がありますが、それにも戸惑うことなく入り込めました。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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集団災害対応のトレーニングを受ける
ナイジェリアの大統領選挙と地方選挙に伴う集団災害(マス・カジュアリティー)に対応する緊急援助で、私は外科チームの手術室看護師として派遣されました。
派遣地のポートハーコートでは、プログラム責任者、医療コーディネーターとアシスタント、ロジスティック・コーディネーター、アドミニストレーター、外科医、麻酔科医、手術室看護師の8人で構成されていました。それに加えて現地スタッフが数名いました。
着任1週目は、集団災害のトレーニングを首都アブジャで受け、その後、実際に働く診療所があるポートハーコートに移動しました。ところがトレーニング最終日に、大統領選が延期になるという情報が入り、どうなるのかわからないままポートハーコートに移動することになりました。
ポートハーコートでは仮設の医療施設を建築中
到着後、選挙の延期が確定となり、プログラムの運営を統括するコーディネーターのレベルで、手術物資の移送を一時停止するという決定が下されたため、私たちが現地にいる間に物資は届けられず、幸いにも負傷患者の受け入れは起こりませんでした。
そんな状況のなか、改めて来るだろう選挙日に向け、チームで多くのミーティングを重ねながら集団災害対応の計画を作成し、手術室の配置や必要な設備、物品のリストアップなどを行いました。
さらに、診療所に簡易的な滅菌・洗浄室を設置するために設計や配置などにも関わりました。結局、自分の派遣期間中に実際に患者をケアする機会はなく、主にプログラムの立ち上げ準備などの業務を行ないました。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
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話し合いや情報交換を密に取って活動した
朝8時からミーティングを行ない、1日のスケジュールや情報交換などを行ないました。その後、集団災害に関連した勉強会(集団災害対応計画を立てるにあったっての必要なこと、具体的にどのように計画をたてるかなど)を行ない、実際に計画をたてたり、問題点を話し合ったりしました。
ランチのあとは、患者を受け入れる診療所に出向き物品の配置や、建設中のトリアージ施設・洗浄滅菌室などが十分運用できるか確認・検討をしました。その他に、現地スタッフに集団災害対応ブリーフィングを行なったり、手術室チームで、どのような患者を受け入れるか、手術前から後の流れなどを話し合い、決定したりと、実際に患者を受け入れる準備を整えました。
勤務時間外は読書をしたり、みんなでテレビのサッカーを観戦したりしました。休日にはチームメンバーと近くのレストランに夕食を食べに行くなど、交流を持つこともできました。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
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住居は、オフィスと住居を兼用している建物で1人ずつ部屋が割り当てられていました。私はチームで唯一の女性ということで、シャワーとトイレがある部屋を使わせてもらいましたが、シャワーとトイレは共有という部屋が多かったです。気温が高く湿気もあるため、扇風機を常に回していました。エアコンはありませんでした。
キッチンにはウォーター・サーバーがあり、常に水は飲める状態で、現地スタッフが作ってくれる食事は毎回おいしくいただきました。
生活面では、「ペッパー・スープ」というホルモンなどの内臓をこしょうで煮込んだスープがすごく辛くて、鼻水を流しながら食べていたら、現地スタッフはみんな、そんなに辛くないよ、と笑っていました。主食は「プランテーン」という、見た目はバナナで触感は芋のようなものです。こちらも、現地スタッフから「バナナとは違う!!」と熱心な説明を受けました。食生活はどの場所に行っても新しく知ることばかりで、とても面白く感じました。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
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ナイジェリア保健省スタッフとMSFスタッフ
最初のトレーニングの中で、MSFが活動した集団災害対応の映像や写真が紹介され、実際に自分がこの場に立っていたら、混乱せず落ち着いて的確な仕事ができるのか、少し不安にもなりました。しかし、トレーニングの内容や演習はそういった不安にも応えてくれる内容になっており、充実したトレーニングでした。
今回は、選挙の延期で実際にそうした状況に直面することはありませんでしたが、今回の経験で学んだ集団災害への対応スキルは、必ずどこかで活きると思います。
- Q今後の展望は?
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またMSFの一員として働きたいです。今回は緊急援助プログラムではありましたが、状況の変化で実際に患者のケアにあたる業務がなかったので、通常の緊急援助プログラムとは少し違った経験となったかもしれません。緊急援助や外傷センターなどで活動の経験を積みたいと考えています。それまでには、日本での手術室看護の仕事も1つ1つ丁寧に行っていきたいです。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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派遣前はいろいろなことが不安ですが、行ってみると、大変なこともありますが日本とはまったく違う仕事、生活、楽しいことも大変なことも含めて本当に充実した日々が待っているので、ぜひ挑戦してほしいと思います。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2013年8月~2013年11月
- 派遣国:南スーダン
- 活動地域:アウェイル
- ポジション:手術室看護師