海外派遣スタッフ体験談

温めていた人道援助への思いを形に

倉之段 千恵

ポジション
正看護師
派遣国
イラク
活動地域
アルビル
派遣期間
2017年1月~2017年8月

Qなぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?

看護師になってから漠然と海外の看護に興味がありましたが、人道援助という分野は考えていませんでした。そんなときにMSFの展示イベントを見て、大きな衝撃を受けたことを覚えています。

今まで自分のことではないと見過ごしてきた事柄を考えるきっかけになり、それ以来ずっと「どうしても参加してみたい」と思い続けていました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?

語学については、海外のドラマや映画を見るなどしてリスニング力を鍛えました。ほかには洋書を読むなどし、できるだけ英語に触れる機会を増やしていました。

また、MSFの資料やガイドラインなどを読み、少しでも派遣前に理解を深めるようにしました。

Q今までどのような仕事をしてきましたか?また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?

救命救急、内科、手術室とさまざまな分野で経験してきました。さらに青年海外協力隊(JICA)ボランティアとして2年間、海外にて活動しました。

日本から離れて異文化に触れながら看護師として経験ができたこと、何度かのホームステイの経験が、今回の派遣において、さまざまな国籍・文化の人びとと仕事をするうえで大変活かせたと思います。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
診療所の前で、現地スタッフとともに 診療所の前で、現地スタッフとともに

イラクのモスルからの国内避難民が生活するキャンプ内にあるMSFの診療所に毎日赴き、主にNCDs(非感染性疾患)の患者への医療ケアの提供を行っていました。

外国人派遣スタッフは10人、現地スタッフは約50人で、私の所属していた医療チームのほかに、心理ケアのチームもありました。

医療チームは医師・看護師・薬局スタッフ・IEC(健康教育担当者)からなり、毎日オフィスからバスで1時間ほどかけてキャンプ地や現地コミュニティへ行き、活動していました。

コミュニティではNCDsの患者だけを対象に医療サービスを提供していましたが、キャンプではNCDs患者だけではなく基礎医療を提供している時期もありました。患者数は週に1000人ほどで、2~3チームに分かれて活動していました。

私は診療所における現地看護師を監督するスーパーバイザーの立場でしたので、日々キャンプ地に赴き、問題点はないか、看護技術は適正かなどをチェックし、週1回勉強会を開催して、看護技術の統一化や疾病に関する知識の底上げを行っていました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

朝7時50分にセキュリティーに関するミーティングを行い、8時にバスへ荷物の詰め込み作業をして出発します。9時30分~9時45分には目的地に着き、活動を開始します。

午後は2時30分~3時の間に活動を終了し、キャンプ地を出発してオフィスへ帰ります。4時15分までにはオフィスに到着し、その日に使用した物品の補充を行い、4時半~5時半まで書類チェックを行っていました。

毎週1回、医療チームと心理ケア・チームとの合同ミーティングがあり、隔週ごとに外国人派遣スタッフ全員によるプロジェクト・ミーティングがありました。

勤務外は、週末にはほかのメンバーと大きなショッピングモールへ買い物に行ったり、映画館に行ったり、バザールに行ったりしていました。また家では映画を見たりして過ごしていました。

Q現地での住居環境について教えてください。

大きな一軒家を借りていて、個室が9部屋、シャワールームが3つあり、全員個室でした。お湯ももちろん出ましたし、ジェネレーターが設置されているので、24時間電気供給がありました。

また、それぞれの個室、各階のホールにはエアコンが設置されていました。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

自分がスーパーバイザーだから、と思って意気込んで行きましたが、現地スタッフの技術や経験値が高く、基礎医療の場面では多くのことを学びました。

NCDsへの対応がメインの活動として派遣されましたが、それ以外に多くの新生児や小児を診ることができ、新たな分野に興味を抱くようになりました。

また、現地スタッフのおもてなしの精神はびっくりするほどで、自分も故郷を離れている人が多い中、遠くから来た外国人派遣スタッフを気遣ってくれました。

みなさん温かくて思いやりにあふれ、芯の強さを感じました。私自身が精神面で大きく学ぶ機会を与えてもらい、本当に感謝しています。

Q今後の展望は?

是非とも次回の派遣も参加させていただきたいと思っています。今まで世界情勢に無知であったので、いろいろ知識をつけたいです。

あと、MSFはフランス語圏の活動も多いので、できれば少しフランス語を勉強したいです。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

応募するまではいろいろ尻込みしていましたが、思い切って参加して本当に良かったです。

私は「今忙しいから…」とかいって何年も過ごしていました。皆さんは、もし人道援助に興味があれば、思いは温めるだけではもったいないので是非どーんと一歩、前へ進んだほうがいいです。

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