海外派遣スタッフ体験談
内戦で荒廃したダルフールでプログラムを立ち上げ
江藤俊浩
- ポジション
- ロジスティシャン
- 派遣国
- スーダン
- 活動地域
- 西ダルフール州
- 派遣期間
- 2008年9月~2009年3月

- QなぜMSFの海外派遣に参加したのですか?
-
今回2回目の派遣となりますが、前回は派遣地の治安が悪化し、半年の任期満了前に帰国せざるを得ず、仕事をやりきった感がありませんでした。欲求不満を感じたので、今度の派遣に参加しました。
- Q今までどのような仕事をしていたのですか? また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?
-
製油所や化学プラントを建設する仕事をしていました。その中で、海外の建設現場で現地スタッフと一緒に仕事をした経験がとても役に立ちました。また、仕事を通して得た、建設に関する広範囲な技術的な知識が役に立ちました。技術に関する英語の専門用語の知識は、取扱説明書やガイドラインを読むのに役立ちました。医学用語は相変わらずさっぱりなのですが。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
-
スーダン西ダルフール州のゴロという町にある病院とキリンという町にある診療所を補修し、運営するというプログラムでした。現地の病院・診療所は内戦でとことん略奪され、荒廃していました。
プログラムは2008年4月に開始されたのですが、私は2代目ロジスティシャンとして(そして途中からはアドミニストレーターとしても)活動しました。
それこそ住居も何もないという状態からプログラムが始められたので、前任者がかなりパワフルに住居や事務所や倉庫の建設、病院・診療所の補修(特に水まわりの建設)を進めてくれたのですが、資機材の納入に時間がかかったり、ロジスティックアシスタントが辞めたりして、一部が未完のままでした。また、そうした状況ではよくあることですが、記録が残っておらず、例えば何が発注されて何が未納なのかわからないといった状況でしたので、まずは発注および納入状況と保有在庫の把握から開始しました。
途中からアドミニストレーターを兼任することになったのですが、アドミニストレーションアシスタントも辞めて不在になっていたので、現地スタッフをトレーニングしながら業務を遂行しました。
結局ロジスティシャンとして現状改善(例えば病院の大がかりな補修)をすることができず、在庫管理、修繕、消耗品等の発注、車両の整備等々の日々の活動を維持する業務に追われてしまいました。ようやくロジスティックアシスタントを雇用できたのが私の帰任2週間ほど前でしたが、現地スタッフだけでも何とか病院と診療所を切り盛りできる態勢まで持っていくことができました。
精神的に負担を強いられ、また最も時間をとられたのは、アドミニストレーション業務でした。特に現地スタッフの月給計算ならびに支払い、雇用や解雇もしくは自己都合退職後の処理と言った業務は、後回しにできない上にまだ現地スタッフに任せられる状態ではありませんでしたので、自分でやるより仕方がなかったからです。
- Q週末や休暇はどのように過ごしましたか?
-
週末は金曜日の1日だけですが、他のインターナショナルスタッフと近くの山や沢までハイキングに行きました。と言うのはウソではないのですが、ほとんどの週末はデスクワークをしていました。
1週間の休暇はエジプトのリゾート地に行ってきました(今回で2回目)。そこでスキューバダイビングのサーティフィケートをとりました。一緒にコースを受けた人と友達になり、楽しかったです。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
-
日干し煉瓦で壁を組んで内部をモルタルで上塗りした部屋に寝泊りしました。個室ですが、電気はなかったので夜は懐中電灯とランタンを使っていました。
あと、なんとソーラーヒーターによる温水シャワーがあり、他のNGOにうらやましがられていました。
我々が活動している地域には電灯の類がないので、ジェネレータが停止した夜10時以降はとても美しい満天の星空を満喫することができました。
毎日キャンプをしているような感じで、楽しく快適でした。
- Q良かったこと・辛かったこと
-
良かったことは日本で勤めている時とは異なる経験ができたことでしょうか。初めてヘリコプターに乗れましたし、電気・ガス・水道等々がまともに整備されていない状況での生活も初めてでした。
辛かったことは、プロジェクトの都合で1箇所の事務所を閉鎖したため、一部の現地スタッフを解雇せねばならなかったこと。あと、とにかく忙しく、久しぶりにきつい仕事だと思いました。
- Q派遣期間を終えて帰国後は?
-
スーダンは禁酒の国で、首都であろうと一切お酒が飲めませんでした(殆どのイスラム教国では高級レストランやホテル等で飲酒が許可されています)ので、とにかく酒です。
一月ほどはボーっとしますが、そのあとは再就職する予定です。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
-
まずは現地で精神面やストレス対策を含めて健康を維持できることが大切です。そのために必要なものはためらわず現地に持ち込むようにしたほうがよいと思います。今回私は、普段使っている薬、音楽(MP3)ファイル、指圧球、DVD、日本語の本を持ち込みました。あるインターナショナルスタッフ(海外派遣スタッフ)はキーボードを持ち込んでいて、毎晩弾いていました。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2008年3月~2008年7月
- 派遣国:イエメン・ラゼ行政区
- ポジション:ロジスティシャン/アドミニストレーター