海外派遣スタッフ体験談

すべての経験が活動に活きる

岩木 幸太

ポジション
ロジスティシャン
派遣国
ウガンダ
活動地域
アジュマニ
派遣期間
2014年2月~2014年5月

Qなぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?

学生時代に何かのイベントで、MSFの写真や活動で使われるMUAC(命のうでわ:子どもの栄養状態を計る上腕周囲径測定帯)などを見ました。アフリカの子どもたちがやせているのは知っていましたが、その腕の細さを実際に目の当たりにして衝撃を受けました。

これをきっかけにアフリカなどの途上国に興味を持つようになり、自分もいつかMSFの活動に参加出来ればと思っていましたが、その後、紆余(うよ)曲折を経て本当に自分も参加することになりました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

自分は電気や車両、建築などといった技術的なバックグラウンドがまったくなかったので、関連する本を読んだり、車両整備工場で整備の仕方を見せてもらったりしました。

Q今までどのような仕事をしてきましたか? また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?

大学で政治学を専攻後、広告関係の会社で営業を2年勤めました。その後、日本のNGOで2年活動し、海外の大学院で国際法を専攻、海外の国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)でのインターンを経て、MSFに参加、という経歴です。

MSFのロジスティシャンに求められる技術的な分野での経験はほぼありませんでしたが、日本のNGO勤務時に、スーダンで医療や水を含めたさまざまな分野の業務に携わった経験は活かせたと思います。

技術的な面以外で言えば、バックパッカーとして海外を旅したことや、アフリカで生活したことなどは、現地の厳しい生活環境に対応するのに役立ちました。海外の大学院で50ヵ国ぐらいから集まった同級生たちと交流出来たことや、国連のような国際機関で仕事が出来たことも、MSFのような団体でさまざまな国のスタッフと仕事をする上で非常に役立ちました。

また、日本の民間企業に勤務していたことは、一見まったく関係ないように思えるかもしれませんが、仕事の進め方や社会人としての基礎(企画、提案、コミュニケーション等々)のベースになっています。こうしたものが無ければMSFでも仕事をするのは難しいので、結局のところすべての経験が今も活きています。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
MSFの診療用テント MSFの診療用テント

ウガンダのアジュマニ県で、南スーダン難民緊急支援活動に参加しました。

もともと、ここにはMSFのスタッフが3つの宿泊施設に分かれて滞在しており、その1つであるホテルの大部屋をオフィスとして使用していました。難民キャンプまでのアクセスが悪かったため、この3つをまとめて新たに1つの大きな拠点として活動することになり、現地に到着後すぐにその準備から始めました。

海外から派遣されたスタッフは最大で13人、現地スタッフは250人以上にも上りました。この内、40~50名程のスタッフが1つの拠点から5つの難民キャンプへ毎朝移動するほか、日中もスタッフや患者が各キャンプ間を移動するため、車両(最大で10台)の配備やメンテナンスは容易ではありませんでした。また、夜中に急患の搬送要請が入ることもよくありました。

ロジスティシャンは多岐にわたる業務を担当 ロジスティシャンは多岐にわたる業務を担当

その他、電気関係の簡単な修理やメンテナンスをしたり、井戸水を汲み上げて塩素消毒したり、コールドチェーンの管理、倉庫の資機材の在庫管理や整理、物資の購入・運搬など、多岐にわたる業務を毎日行っていました。
難民の増加が止まらず、日々活動が拡大していったので、休みはあまりなかったです。加えて、現地のアシスタント・スタッフが1名しかいなかったため、自ら手を動かすことも多く、砂やオイルでドロドロになって作業をすることも珍しくありませんでした。逆に実地で基本的なスキルを身に付けることが出来たのは非常に良かったです。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

朝7時前には業務を開始し、上記の作業を必要に応じて行い、夕方は早ければ18時ぐらいに切り上げることも出来ました。ただ、ワクチン保管用の冷蔵庫が壊れたり、車のエンジンがかからなくなったり、タイヤがパンクしたり、停電したり、発電機が動かなくなったりする等、何らかのトラブル(多すぎてすべて書ききれません)がほぼ毎日発生していたので、夜中まで作業に当たることもありました。

医療チームは日曜日に休みを取っていましたが、その間にしか出来ない建築作業などもあったので、完全に丸一日休みという日はほとんどなかったです。ただ、6週間毎に休暇を取り、別のプログラムが行われている比較的大きな町で過ごすことも出来たので、そこで人生で初めてアフリカのサファリに行けたのは良いリフレッシュになりました。

Q現地での住居環境についておしえてください。
大きなヘビが出没! 大きなヘビが出没!

はじめはホテル(と言っても日本のようなホテルではありません)に泊まっていたのですが、難民キャンプまで非常に遠く、毎日の移動が大変だったので、難民キャンプの近くへ移りました。そこにはサッカー場よりもはるかに大きい敷地に5つの建物があって、海外から派遣されたスタッフと一部の現地スタッフの計30人ぐらいで住んでいました。

テント生活などと比べると、各自個室もあったのでまだ良い方かと思うのですが、それでもヘビやサソリが出たり、雨の後には数万匹の羽アリが辺り一面を飛び回ったりと、なかなかワイルドな環境でした。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

正直、苦労したことしか覚えていません(笑)。

ただ、一つ印象に残っていることを挙げるとすれば、南スーダン人難民の力強さでしょうか。彼らはほぼ何も持たずにやって来て、難民登録が終われば、山を切り開いただけの何もない所に案内されます。それでも彼らは、周りから木を拾ってきたり土を固めたりして家を作り、すぐに生活を始めていきます。日本人ではとてもこんなことは出来ないだろうなと感心させられました。

Q今後の展望は?

6月より、MSFのプログラムでパキスタン・ペシャワールにてロジスティック・マネージャーとして活動中です。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

国際協力(医療援助)の現場の「最前線」で仕事がしたいのであれば、MSFをお勧めします。国際機関やNGOは世界に数え切れないほどありますが、医療を必要とする人びとに最も近い位置で仕事が出来るのはMSFだと思います。

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