海外派遣スタッフ体験談
異なる環境で価値ある経験を
中嶋 優子
- ポジション
- 麻酔科医
- 派遣国
- シリア
- 活動地域
- —
- 派遣期間
- 2013年7月~2013年8月

- Qなぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?
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MSFは高校生の頃からかっこいいなぁ、と思っていましたが、医師になってみて改めて、「自分の仕事を活かしながらいろいろな国に行ったり、いろいろな人に出会ったり、めったに出来ない体験が出来る、こんな素晴らしい仕事はない!」と思って、参加させていただきました。
- Q今までどのような仕事をしていたのですか?どのような経験が海外派遣で活かせましたか?
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日本では通常は麻酔科医でしたが、救急総合診療も少しやっていました。現在はアメリカのイェール大学病院で救急レジデント(救急専修医)をしていますが、選択期間*を利用してMSFの活動に参加させていただきました。
*救急専修医のカリキュラム中、一定期間、救急医療に関連した活動を自由に選択できる制度
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?どのような業務をしていたのですか?
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限られた機材を工夫して使い治療を行った。
緊急医療活動で、いわゆる麻酔器はなかったのですが、ポータブルの人工呼吸器と吹き流しのガス麻酔気化器がありました。機材も麻酔薬も限られているなか、いろいろ工夫して主に熱傷、銃創、爆弾による外傷、帝王切開、虫垂炎などの麻酔を行いました。1日平均5~8件の予定手術と、緊急手術が2~3件ありました。朝8時頃から、夕方は早い時で5時、遅い時は9時頃まで仕事をし、あとは緊急が入れば夜中にオペ室に入っていました。
- Q週末や休暇はどのように過ごしましたか?
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外科チームは1ヵ月の短期派遣であることと、業務が忙しかったので休暇も週末もありませんでした。たいていは、いつ呼ばれるかもわからない状況で、宿舎に帰ってバタンキューでしたが、少し時間がある時はインターネットでコミュニケーションをとったり、ほかの海外派遣スタッフとおしゃべりをしたりして過ごしました。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
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シリアの小さな村でMSFが一軒家を借りて、皆で住んでいました。2~3人の相部屋で、トイレやシャワーは共同でした。電気は屋根裏のジェネレーター発電で、1日のうち何時間は電気が使えない状況でしたが、あまり家に居なかったのでそんなに困ることもなかったです。ただ、冷蔵庫の電源がついたり消えたりしていたので、いつも中が生温かく、冷たい飲み物はガマンです。電気が使える時はWiFiがあって、遅いインターネットが出来ました。掃除、洗濯や食事は、休日(金曜日)以外は現地の人を雇ってくれていたので楽でした。(食事はお昼に夜の分も作ってくれ、朝は適当に自分で済ませました。)
- Q良かったこと・辛かったこと
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良かったことは、やはりさまざまな国の人と交流できたこと、めったに行けないところに行けたこと、めったに出来ない体験を出来たこと、やりがいのある仕事が出来たこと、そして、痩せたこと(理由は下記)です。
辛かったことは、期間がちょうどラマダンの時期だったので、断食する義務はなかったのですが、現地の人びとが断食しているなか日中おおやけに食べたり飲んだり出来ず、忙しいのと合わせて結局現地の人と一緒にラマダン状態(忙しい時はさらに長時間)になったことです。帰国時、ラマダンが明けたのですが、日中何も食べないことに慣れてしまっていました。あとは、暑いなかイスラムの習慣に従って頭にショールをかぶり長袖の服を着なくてはいけないことが大変でした。
- Q派遣期間を終えて帰国後は?
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帰国後は、日本で数日過ごしてからアメリカに戻って救急医の仕事をしています。シリアとは全然違う、人材も機材も薬も豊富すぎる環境です。ちなみに、日本に帰った際、出身高校のミニ同窓会のような機会があったのですが、高校以来会っていなかった同級生が毎月MSFに寄付していることを知った時、とっても嬉しく思いました。あと、せっかくラマダンで落ちた体重も着々と戻ってきています。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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1回目の派遣で先輩外科医からいただいたアドバイスですが、体力、免疫力、適応力、鈍感力はやはり今でもとても大事だなと思います。まったく違う環境で生活し、仕事をするのは少々大変かもしれませんが、本当に、それ以上の価値のある経験が待っています。そして、それを感謝してくれる人びとがいます。1回きりの短い人生、ぜひぜひ参加することをおすすめいたします。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2012年11月
- 派遣国:パキスタン
- プログラム地域:ペシャワール
- ポジション:麻酔科医
- 派遣期間:2010年4月
- 派遣国:ナイジェリア
- プログラム地域:ポートハーコート
- ポジション:麻酔科医