海外派遣スタッフ体験談

限られた資源のなかで創意工夫

中嶋 優子

ポジション
麻酔科医
派遣国
南スーダン
活動地域
アウェイル
派遣期間
2014年7月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

MSFの活動へ参加することは素晴らしい経験なので、いつも、また参加したいと思っています。今回、ちょうど新しい仕事を始める際に1ヵ月仕事の開始を遅らせてもらえることになったので、MSFで1ヵ月間の派遣を希望しました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

今回が4度目の参加なので特に準備はしませんでした。ただ、前任者からの引き継ぎのレポートを読んで、状況の把握をするようにしました。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

MSFの麻酔の機材や薬剤など、前回参加した活動とほとんど同じだったので、過去の経験はだいぶ役にたったと思います。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
南スーダン政府の病院でMSFは小児科と産婦人科を担当 南スーダン政府の病院でMSFは小児科と産婦人科を担当

アウェイルのプログラムは周産期医療、母子医療に重点をおいたプログラムでした。MSFのなかでも規模の大きいプログラムで、海外派遣スタッフは20人ほどおり、私がこれまで参加した活動のなかでもこんなにスタッフが多いことは初めてでした 。

同じプログラムに日本人も4人おり、自分のほかに日本人がいるのは、初回派遣のナイジェリアで一緒だった外科医の先生以来、初めてでした。

病院は南スーダン政府の病院で、成人病棟は南スーダン政府のスタッフが、小児科(小児病棟とICU)と産婦人科をMSFが担当していました。私は麻酔科医として主に麻酔業務をしていましたが、救急医でもあるので小外科的な処置なども行っていました。

症例は帝王切開、小児の熱症の処置や膿瘍切開、骨折の整復などなど多岐にわたりました。自分はあまり関わりませんでしたが、このプログラムではほかにマラリアや低栄養、未熟児の治療にも力を入れていました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

大体、朝8時からお昼を食べずに15時か16時くらいまで麻酔をかけていることが多かったです。その後は、緊急で呼ばれた時以外はゆっくりしていました。勤務外の時間は町を散歩、インターネット(とてつもなく遅いけれど一応あるだけありがたい)、昼寝などをしていました。派遣スタッフの同僚と体力トレーニングなども数回しました。

Q現地での住居環境についておしえてください。
海外派遣スタッフ、現地スタッフの同僚たち 海外派遣スタッフ、現地スタッフの同僚たち

住居はトゥクルという小屋を1人1部屋ずつあてられていました。住居エリアが2つ隣接しており、両方24時間警備されていました。トイレ、シャワー、洗面所は共同。トイレは「ぼっとん便所」で、シャワーは水シャワーでした。食事は毎日、地元の女性たちが作ってくれていました。時々美味しかったです。

一番辛かったのが、共同の「ぼっとん便所」でした。一応、毎日数回掃除が入っていたのでそんなに汚いことはなかったのですが、虫が苦手なので、虫がいるととっても怖かったです。夜中にトイレに行きたくても、怖くて極力行きたくありませんでした。

夕食時などは各国からきた海外派遣スタッフと交流をしました。毎週金曜日は映画の日で、夕食後、映画をパソコンで上映して皆で観たりしていました。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

限られた環境での医療提供は難しいですが、そのなかでもいろいろと創意工夫をすることを学びました。このプログラムではレスピレーター(人工呼吸器)がなかったので、全身麻酔の挿管をした場合は手動換気をしなければならず、手術中はほかのスタッフの手も借りて換気を手動でしてもらいました。

Q今後の展望は?

また年に1回程度のペースで活動に参加させて頂きたいと思います。麻酔でも救急でも知識をもっと広げて、もっと何でも出来るようになりたいと思っています。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

活動に参加することは大変なことも多々ありますが、それ以上の価値があります。毎回新しい出会いや発見、学ぶことが多く、大変貴重な経験が出来ます。活動地で苦しんでいる患者さんを助けることができ、また自分が得るものも大きいです。是非参加をお薦め致します。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2012年11月~2012年12月
  • 派遣国:パキスタン
  • プログラム地域:ペシャワール
  • ポジション:麻酔科医
  • 派遣期間:2010年4月~2010年5月
  • 派遣国:ナイジェリア
  • プログラム地域:ポートハーコート
  • ポジション:麻酔科医

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