コンゴ民主共和国:東部州で活動10年、いまなお膨大なニーズ

2013年12月27日

コンゴ民主共和国のオリエンタル州(東部州)で、国境なき医師団(MSF)が続けて来た活動が、2013年で満10年となった。

広大な熱帯雨林が広がるこの地域では、マラリアやアフリカ睡眠病などの風土病対策が大きな課題となっている。一方、紛争や性暴力が繰り返され、その被害者が十分な医療を受けられない状況も続いている。

MSFが10年間で行った医療・人道援助と、現地でいまなお求められている膨大なニーズについて、MSFの同国での活動統括責任者であるフレッド・メイランに聞いた。

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オリエンタル州の人道状況は変化しましたか。

オリエンタル州での活動開始は2003年、紛争被害者の治療から始まった オリエンタル州での活動開始は2003年、
紛争被害者の治療から始まった

紛争が続いている州東部では、女性と子どもが最大の被害者となっています。例えば、南イルム地域のゲティ周辺では、2013年8月末から政府軍と民兵組織の激しい衝突が繰り返され、何万人もの避難者が出ています。MSFは2006年にゲティで活動を開始しましたが、その当時も紛争被害にあった人の援助が目的でした。

一方、直近2年間には、マラリアとはしかの大規模な流行がみられました。これは、多くの人が医療を受けられておらず、予防策も機能していないことを意味しています。一部の地域では、2012年に5歳未満の子どもの25%がはしかに感染し、10%余りがマラリアで亡くなりました。

この10年間にMSFはどんな活動をしたのですか。

活動は人びとのニーズに応じて展開されています。戦傷外科、避難者の支援のための心理ケアと基礎医療、性暴力被害者のケア、流行病への対応、救急処置施設と小児科施設の支援、HIV/エイズ患者の経過観察、アフリカ睡眠病(アフリカ・トリパノソーマ症)対策などです。

MSFが州内で運営している病院、診療所、仮設施設での診療件数は、10年間で100万件を超えています。入院患者は12万人以上、外科処置は3万8000件でした。性暴力被害を受けた人の治療は約1万2000件で、心理・社会経済・法的ケアも行っています。また、MSFがアフリカ睡眠病対策に着手してから、確定診断は20万件にのぼり、5500人が治療の対象となりました。

活動を続ける上での課題は何でしょうか。

各地に赴いて医療援助を行うMSF移動診療チーム 各地に赴いて医療援助を行うMSF移動診療チーム

人びとが確実に医療を受けられるようにすることです。例えば、紛争下で人びとの緊急ニーズに応じるためには、リスクが伴います。MSFは極めて難しい状況で活動をしてきました。現在も、ゲティで武力衝突が起きている状況下で活動をしています。

MSFが活動を続けられる理由は、紛争当事者が活動を尊重しているからです。陣営にかかわらず、自分自身や大切な人がMSFの無償で良質な医療援助を受けてきました。MSFは危機にさらされた人びとを、宗教、民族、政治的信条の別なく支援します。人びとにとって、MSFの存在は自身の安全を保障するものなのです。

この国では輸送も大変です。しかし、物資の補給なしには医療活動も行えません。多くの人が到達不可能と考えるような奥地でも、MSFは供給体制を構築し、医療施設の運営に必要な薬剤や機材を搬入します。例えば、欧州で購入した薬剤が、目的地に到着するまで6~7種類のさまざまな方法で運ばれることも珍しくありません。トラック、鉄道、飛行機、車、ボート、バイク、自転車など。緊急の要請の場合は非常に短期間で輸送します。

現在進行中の活動をお聞かせください。

州内のディンギラでは複数のプログラムを運営中です。ゲティでは、避難してきた人びとのニーズに対応するため、医療活動を拡充しました。2013年の優先事項は、ゲティおよびディンギラの病院の救急処置室と集中治療室を支援し、院内死亡率を低下させることと、ガンガ・ディンギラ保健区域でのアフリカ睡眠病対策でした。

また、ブニアでは緊急対応チームがウエレ地方とイトゥリ地方の人びとに速やかな援助を行うための準備をしています。MSFは今後も、オリエンタル州の人びとの医療ニーズに全力で応えていきます。

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