広がる廃墟、がれきに埋まったままの遺体──国境なき医師団スタッフが見たガザ北部の今
2025年02月20日
パレスチナ・ガザ地区での停戦が1月19日に発効し、約1カ月。人びとがガザ内に閉じ込められたまま、15カ月にわたって激しい紛争が続いた結果、社会のあらゆる機能が破壊され、人が住むのは不可能に近い状態になっている。
国境なき医師団(MSF)は、イスラエル軍に包囲されていたガザ北部に入り、医療および人道ニーズの評価を行っている。状況はまさに悲惨で、何も残っていない。MSFの現地スタッフは、自分の住んでいた場所すら確認できないほどだ。病院は破壊され、冬を越すための避難所もなく、人びとはがれきの中で暮らしている。
ガザ北部の状況を、MSFの緊急対応コーディネーターであるキャロライン・セガンが語る。
国境なき医師団(MSF)は、イスラエル軍に包囲されていたガザ北部に入り、医療および人道ニーズの評価を行っている。状況はまさに悲惨で、何も残っていない。MSFの現地スタッフは、自分の住んでいた場所すら確認できないほどだ。病院は破壊され、冬を越すための避難所もなく、人びとはがれきの中で暮らしている。
ガザ北部の状況を、MSFの緊急対応コーディネーターであるキャロライン・セガンが語る。
ガザ北部の現在の状況は?
北部は完全に破壊されており、何もない平地になっています。私は今まで生きてきた中で、このような光景を見たことがありません。パレスチナ人の同僚たちは、自分の家がどこだったのか、もはや分からなくなっており、ショックを受けている人もいれば、文字通り倒れてしまった人もいます。
ガザ市ですでに、その破壊のレベルに衝撃を受けていましたが、その後、北のジャバリアに行くと、言葉を失いました。そこにはもう何もありません。
廃墟だけが広がり、がれきの下に救出できなかった遺体が残っているため、至るところで死臭が立ち込めているのです。

医療体制は?
ガザ北部には、医療体制はもはや存在していません。カマル・アドワン病院は破壊され、シファ病院、アル・アウダ病院、インドネシア病院は深刻な被害を受け、部分的にしか機能していません。
インドネシア病院では、あらゆる医療機器が意図的に破壊されたように見え、非常にショックを受けました。医療が一切提供できないように、ひとつひとつ粉々に壊されていたのです。
なぜこんなことをするのでしょう? これら医療機器は、人びとの命を守るために作られたものなのに──。こういった病院の惨状を見るのは、本当に胸が痛みます。
何十万人もの人びとが暮らすこの地域では、医療の提供はニーズに比べると大幅に不足しています。例えば、ガザ北部とガザ市一帯にある医療施設の紛争前と今の状況を比べてみると、小児集中治療室のベッド数は150床から6床に、患者用ベッドの数は2000床から350床に激減しています。
何十万人もの人びとが暮らすこの地域では、医療の提供はニーズに比べると大幅に不足しています。例えば、ガザ北部とガザ市一帯にある医療施設の紛争前と今の状況を比べてみると、小児集中治療室のベッド数は150床から6床に、患者用ベッドの数は2000床から350床に激減しています。

物資の供給状況は?
停戦後、重要な物資の供給は改善されましたが、依然としてニーズは非常に高く、基本的な物資──例えば、食料、水、テント、シェルターに使う資材の不足は未だ深刻です。給水設備は大きな被害を受けており、それら設備が緩衝地帯のアクセスできない場所にあることから、水不足は特に重大な課題となっています。
MSFはジャバリアとベイト・ハヌーンで給水トラックによる活動を開始し、損傷した井戸の修理も行っていますが、これは一時的な解決策であり、膨大なニーズを満たすには不十分です。紛争の影響で、私たちの活動拠点がガザ南部にあるため、北部への再配置に時間がかかっているのが現状です。
停戦合意から4週間以上が経過しましたが、ガザ北部では今もなお、人道援助の大幅な拡大は見られません。ガザで活動する各種の援助団体も、人道支援や医療援助を切実に必要としている人びとに、十分なサービスを提供できていません。
イスラエルと国際社会は、避難所や食料など生きる上で不可欠な物資を早急に確保し、その分配を拡大する必要があります。

ガザ北部の人びとの現状は?

人びとは悲惨な状況下で暮らしています。彼らは廃墟と化した自宅の跡地で生活を続けようとしていますが、それは極めて困難です。
極寒や大雨、強風から身を守るための壁さえないのです。もちろん、医療や適切な住居、水へのアクセスもありません。
極寒や大雨、強風から身を守るための壁さえないのです。もちろん、医療や適切な住居、水へのアクセスもありません。
しかし、15カ月に及ぶ紛争中、避難やテント生活で彼らが直面した状況は今よりもさらにひどいものでした。苦難を乗り越えた今、人びとは愛する人と再会し、元の場所に留まって生活を再建したいと願っています。多くの人びとは、このガザ北部を離れるつもりはありません。
人びとは想像を絶するトラウマを背負っています。彼らへの人道援助を、安全かつ確実に、そして継続的に届けることが重要です。