国境なき医師団、フセイン国王人道主義指導者賞を受賞

2004年11月25日

国境なき医師団(MSF)は2004年11月、ヨルダン王国の「フセイン国王人道主義指導者賞」を受賞しました。以下は、アンマンでの授賞式におけるMSFインターナショナル会長ローワン・ギリス医師のスピーチです。

アブドラ国王陛下、ラニア王妃、ノア王妃、閣下ご一同、そしてご列席の皆様

このたびはフセイン国王人道主義指導者賞をいただき、心から感謝いたします。これはMSFという組織にとって非常に名誉なことであるのみならず、世界中で働く数多くのボランティアや現地スタッフの一人一人にとって、力強い励ましとなります。

コートジボワールで新たな戦闘が発生し、スーダンのダルフール地方や、またウガンダ北部やチェチェンなど状況をあまり知られていない数多くの地域においても援助の必要性が高まっている現在において、市民社会からこのような表彰を受けることは、私たちの活動が支持されており、忘れ去られてはいないということを実感させてくれます。

しかし私は、ファルージャで大規模な軍事作戦が進行中であることを憂慮しています。医療を提供する人道援助団体として、MSFはファルージャの一般市民の運命を深く案じています。また一人の医師として、病院の占拠や医療施設の破壊などの報道を耳にし、非常に動揺しています。病院とは、一般市民が戦闘を避け、医療を受けることができるような、中立で安全な避難場所でなければなりません。

現在、ファルージャで一般市民が被害を受けていることは疑う余地がありません。私はすべての紛争当事者に対して、一般市民の被害を防ぎ、援助を受けられるようにし、医療スタッフや医療物資の安全な通行を保証するよう、自らの義務を果たして最大限の努力をすることを求めます。

紛争時に一般市民が巻き込まれたり、あからさまに攻撃を受けたりすることは、残念ながら今に始まったことではありません。しかし現在では、最も援助を必要としている一般市民を支援しようとする人を標的にするという、危険な風潮が生じています。アフガニスタンで私たちの同僚5人が殺害された衝撃的な事件は、この現象を裏付けるものです。

この残虐で無慈悲な攻撃や絶え間ない脅しにより、MSFは24年間にわたって支援を続けてきたアフガニスタンから、チームを撤退させるという苦渋に満ちた決断をせざるをえませんでした。また最近では、イラクにおいて外国人やイラク人の援助従事者が極めて高い危険にさらされたため、深い悲しみと失望を感じつつも同国から撤退することになりました。

人道援助団体に対するこうした攻撃は、偶発的なものではありません。その背景には、西側政府が人道援助活動と称して軍事作戦や政治的な策略を押し進め、人道の名を利用しようと企てる傾向が強まっていることがあります。

私たちは「われわれの味方でなければ敵と見なす」と告げられ、人道的行為と医療倫理の普遍性を否定する文化の衝突について警告を受けました。

もちろん私たちは援助従事者として、活動地の政治的背景に目を向けないわけではありません。しかしながら、人道主義者であるということは、

  • 人々の心を勝ち取ることではありません。
  • 良し悪しに関わらず、政治的または文化的な制度を押し付けることではありません。
  • その目的は戦争に勝つことでも、平和を築くことですらもありません。

人道主義とは、他者の苦難に対する、人間としての本能的で現実的な反応なのです。政治とは無縁の行為であり、文字どおり民間の活動です。

この理念が脅かされている現在、人道援助団体は厳しい選択を迫られています。一方からの攻撃のみならず、この巧みな操作をも強く拒絶しなければ、いずれかの側に加担することになってしまいます。そして敵として利用され、敵として扱われることを受け入れることになるのです。

MSFが自らの独立性に対するこうした脅威に屈してはならないことは明らかです。というのも、援助の必要性を公平に評価し、スーダンやコートジボワール、あるいは報道すらされない多くの場所にいる最も助けを必要としている人々に援助を届けることができるのは、ひとえに私たちの独立性によるものだからです。

最後に、MSFの活動に支援と理解を示してくださっているフセイン国王基金に、感謝申し上げます。

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