食べるものもままならない現実 身を寄せ合う避難民たち

2020年02月19日掲載

幼子を背負う子ども  © Alexis Huguet幼子を背負う子ども © Alexis Huguet

 「今はツェ・ロウィの避難キャンプで、息子1人、孫6人と一緒に暮らしています。故郷の村を追われて、もう2年になります。ある日の夜、武装集団が村を襲ってきたのです。家々に火をつけて、むごいやり方で住民を殺していきました。息子の嫁も死にました。私の家も焼かれたので、とにかく着るものだけ持ち出して、深夜に逃げ出しました。連中に捕まらないよう、ずっと歩き続けて、茂みの中で野宿しました。それはもう恐ろしかったです。ツェ・ロウィに着いたのは3日目のことでした」。

そう語るのはイボンヌさん。自分たちの住む藁ぶき小屋の前に座っている。裸足のままで、着ている服もボロボロだ。小屋のなかを見ると、彼女の孫の1人が、沸騰した鍋の下でパチパチと燃える火をあおっている。ちょっと風が吹けば燃えてしまうのではないかと思えるほどのもろそうな小屋。ここが彼らの寝室であり台所だ。信じがたいが、このような狭いところで8人が寝起きして生活しているというのだ。

暴力から逃れ、避難民キャンプで暮らすイボンヌさん一家 © Solen Mourlon/MSF暴力から逃れ、避難民キャンプで暮らすイボンヌさん一家 © Solen Mourlon/MSF

 イボンヌさんら多くの避難民が生まれているのは、コンゴ民主共和国(DRC)の北東部にあるイトゥリ州。2000年代初頭、この地域では、牧畜民ヘマ人と農耕民レンドゥ人とのあいだで歴史的な殺りくが繰り広げられた。そして、2017年12月から、両者の暴力的対立が再び悪化したのである。国連人道問題調整事務所(OCHA)の推計では、2017年以降、100万人余りが暴力から逃れるため避難民になったとされる。ただし、人口移動が頻繁なため、正確な人数を知ることは難しい。現在、避難民キャンプで、約20万人が身を寄せ合って暮らしている。しかし、水、食料、医療といった生活基盤がほとんど欠けた状況だ。この他にも、受け入れ世帯のもとで生活している人びとも多い。

イトゥリ州ニジ地域にある丘陵には、数十ものキャンプが急ごしらえで設置されている。一帯に延びる埃だらけの道路を曲がるたびに、それらが視界に入ってくる。いつからそこにあるのかは、各キャンプのつくりから推測できる。最近できたばかりのものは、藁ぶき屋根の小屋ばかりだ。もう少し良いつくりのキャンプだと、トイレなどの衛生設備があるし、雨露をしのぐためのビニールシートも敷いてある。なかでも、人道支援団体の設置したキャンプが最も良質だ。

イトゥリの避難民キャンプ © Solen Mourlon/MSF イトゥリの避難民キャンプ © Solen Mourlon/MSF

 しかし、それでも避難民のニーズを十分に満たしているとは言えない。食料も飲料水も衛生環境も足りていない。下痢や栄養失調など、本来なら防げるはずの病気が発生している。呼吸器感染症やマラリアなども見受けられる。いずれも、劣悪な生活環境と深く結びついた病気だ。こうした状況下で命を奪われる子どもも多い。国境なき医師団(MSF)が最近実施した調査によると、2019年春以降に逃れてきた5歳未満児の死亡率は、緊急水準の3倍を上回っている。

「孫たちの具合が悪くなったら、キャンプ内にある地域診療所に連れていきます」とイボンヌさんは語る。

MSFは、現地のキャンプ24カ所のうち19カ所に地域診療所を設置している。運営を担うのは、重要な病気について見分ける訓練を積んだ地域住民たちだ。診療所では、栄養失調の状態を判断する「命のうでわ」を使って、子どもの二の腕の太さを測り、栄養失調に陥っていないかを調べている。また、マラリアの簡易検査や、発熱や下痢の検診も実施しているほか、鎮痛剤や抗マラリア剤など、初期治療用の扱いやすい薬剤も備蓄している。

MSF現地スタッフが子どもの腕の太さを測り、栄養失調に陥っていないかを調べる様子 © Solen Mourlon/MSFMSF現地スタッフが子どもの腕の太さを測り、栄養失調に陥っていないかを調べる様子 © Solen Mourlon/MSF

 必要に応じて、MSFが支援している7つの中央診療所のいずれかに、病気の子どもを移送するケースも出てくる。各々の中央診療所には、MSFの看護師が1人ずつ常駐しており、現地の医療スタッフをサポートしている。

重症の子どもは、そこからさらにニジ総合基幹病院に移され、入院・専門治療を受ける。この病院でMSFは、保健省の管轄する集中治療・蘇生施設、小児科病棟、栄養施設、産後施設に協力している。MSFの活動目標は、子どもたちをできるだけ早期に治療し、合併症を防ぐことにある。地域のニーズは非常に高い。小児科の病床利用率はたびたび100%を超えており、入院患者の受け入れ体制を強化する必要に迫られている。現在、小児科用のベッド数は56だ。

発熱が続くため、中央診療所からニジ総合基幹病院に移されてきた少年 © Solen Mourlon/MSF発熱が続くため、中央診療所からニジ総合基幹病院に移されてきた少年 © Solen Mourlon/MSF

 イボンヌさんたち一家が暮らす藁ぶき小屋は、立ち上がることすら困難な小ささだ。雨が降るたびに、一家全員がずぶ濡れになる。ただし、幸いなことに、このキャンプにはトイレなどの衛生設備があり、プライバシーを守るための囲みのなかで体を洗うこともできる。これが最近の避難者のために作られたキャンプになると、そうもいかない。例えば、7カ月前にできたカンベ・キャンプには、現在426人が身を寄せるが、共用トイレはわずか4基で、シャワー施設はない。

MSFスタッフのエメ・マヴ・デシは語る。「カンベ・キャンプは4つの区画に分けられます。私が担当しているのは第2区で、入居者数は300人を超えます。区画の一端にトイレ用の小屋が1つあるだけです。シャワー設備がないので、夜になって誰にも見られなくなるのを待ってから体を洗います。食べ物も足りていません。狭い土地でタマネギ、カボチャ、ジャガイモなどを育てていますが、とても皆に行きわたる量ではありません。水についても、一番近い水源まで歩いて45分です。避難民は、少しでもお金を稼ぐために、地元民の農作業を手伝っていますが、収入は平均して、1日約1000コンゴ・フラン(約175円)。食料を買うには少なすぎます。病気になって仕事ができなくなれば、家族のみなが飢えに苦しむことになります」。

2019年12月以降、MSFは、避難民のニーズに応えるため、活動を拡大させてきた。しかし、現在もまだ支援規模は十分ではない。人びとは依然として極度の困窮状態のなかで生存している状況だ。イトゥリ州で活動する人道援助関係者は、この危機に早急に取り組み、さらに援助を拡大しなければならない。

カンベ・キャンプにて支援活動に従事するMSFスタッフ © Solen Mourlon/MSF カンベ・キャンプにて支援活動に従事するMSFスタッフ © Solen Mourlon/MSF

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MSFは、避難民に向けて、医療ケアと飲料水を提供し続けており、3つの保健区(ニジ、ドロドロ、アングム)の合計34カ所で、蚊帳や救援物資を供給している。