アフガニスタン:妊婦とお腹の子を貫いた銃弾 紛争地に暮らす母親たちの証言

2020年10月27日掲載

MSFが支援するブースト病院。医療を求める多くの人が訪れる © MSF/Elise MoulinMSFが支援するブースト病院。医療を求める多くの人が訪れる © MSF/Elise Moulin

10月11日、アフガニスタン南部に位置するヘルマンド州の州都ラシュカルガとその周辺で、政府軍と武力勢力による激しい武力衝突が発生。国境なき医師団(MSF)は、2009年から支援を続けているブースト州立病院で、次々と運ばれてくる負傷者を受け入れ、医療を提供した。

この病院を訪れる患者はみな、身体的なけがだけでなく、心にも深い傷を負っている。同病院の院内コーディネーターを務めるマリアンナ・コルテシが病院で出会った2人の母親も、紛争に巻き込まれ壮絶な経験をしたという。
これは、コルテシが2人に代わって語る、彼女たちの体験談だ。 

奪われた赤ちゃんの命

サフィアさんは妊娠7カ月で、赤ちゃんは4年も前からずっと望んでいた待望の第一子でした。家族全員が心から喜び、そろそろ産着の準備をしようと相談しながら、誕生を楽しみにしていたそうです。

11日の日曜、自宅の前でおしゃべりをしていたサフィアさんは、突然お腹に激しい痛みを感じました。前日から彼女の住む村に迫っていた戦闘の流れ弾が、サフィアさんとお腹の赤ちゃんを貫いたのです。家族はサフィアさんを連れて急いで外傷病院へ向かいましたが、戦闘地を避けるため、回り道をするほかありませんでした。

何時間もかけてたどり着いた外傷病院から、さらにMSFの支援するブースト州立病院へと搬送。救命のための帝王切開を受け、サフィアさんは一命をとりとめましたが、お腹の子は助かりませんでした。

翌日、赤ちゃんを埋葬するために家族は村へと一度帰りましたが、その道中、そして退院するサフィアさんを迎えにまた病院へ来るときにも、戦闘が起きている地域を慎重に避けなければならなかったそうです。

生まれてくる前に奪われてしまった、赤ちゃんの命。サフィアさんとご家族の悲しみは計り知れません。  

乳飲み子を家に残して

ふたりの子を持つジナさんは、生後8カ月になった我が子に母乳を与えていたところ、流れ弾を胸に受けました。赤ちゃんにけががなかったことは不幸中の幸いでしたが、ジナさんは入院して治療を受けるため、赤ん坊と、まだ幼い上の子どもを自宅に残してこなければなりませんでした。

家に置いてきた子どもたちのことを考えると、いても立ってもいられなくなるようで、「いつ家に帰れるのですか?赤ちゃんにおっぱいをあげないといけないのに……」そう私に尋ねてくる姿が忘れられません。 

紛争の一番の被害者は民間人だ。戦いに巻き込まれ、命の危険に晒されるだけでなく、暴力や家族との別離などにより深いトラウマを抱えることもある。

2人の女性たちと対話したコルテシは語る。「患者さんに医療を提供するのはもちろんですが、その声をより多くの人に伝えていくこともまた、私たちの責務だと感じています」 
※患者のプライバシー保護のため、仮名を使用しています。

MSFは2009年から10年にわたってブースト州立病院を支援している=2019年 © MSF/Elise MoulinMSFは2009年から10年にわたってブースト州立病院を支援している=2019年 © MSF/Elise Moulin