タイ:MSFはモン族のラオスへの強制送還に抗議
2010年01月08日
タイ政府当局は、ペチャブン県のファイ・ナム・カオ・キャンプに残る4000人のモン族をラオスへ追放する意向を表明した。現地に、独立した立場から、送還の自発性を確認できるような第三者機関は存在しない。2009年5月に軍隊から圧力を受けてキャンプを退去した国境なき医師団(MSF)は、この強制送還の方針を非難した。
ラオスおよびタイ政府の二国間協定で4000人が本国送還に

キャンプ。
ラオスから避難し、タイのファイ・ナム・カオ・キャンプで難民生活を送っていた4000人のモン族は、2007年5月にラオス政府とタイ政府が結んだ二国間協定を受けて、本国送還されることとなった。両国は2009年末までに、すべてのモン族をラオスに送還する計画であると述べた。タイ政府は、ファイ・ナム・カオ・キャンプのモン族を難民認定することを拒否し、本国に送還しても国際法に違反しない不法移民と見なしている。
2005年7月の時点で、MSFはキャンプ内に存在する唯一の国際人道援助団体だった。2008年12月には送還は加速し、毎月200人が送還されている。MSFはこれらの人びとは社会的に弱い立場にあり、保健衛生を保つ上でも他の人びとより難しい立場にあるとみている。このことから、MSFはタイ政府に対し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のような独立した第三者機関の立会いのもとで本国送還前の審査を個別に行うように訴えてきた。モン族はラオスで迫害を受けていたと主張しており、第三者機関であれば、これらの難民が帰還に対して抱く不安を考慮し、保護と、難民としての地位を求める彼らの申し立てを検討したはずである。
国際法によると、命と安全が危惧される個人を強制送還することは禁じられている。また、送還されたすべての個人は、安全を保障されていなければならない。これらの条件は、いずれもファイ・ナム・カオ・キャンプの難民に対して守られてはいない。
タイ政府は、再三にわたる送還前審査の要請を拒否
MSFフランス支部会長のマリー=ピエール・アリー医師は語る。
「私たちは国際的な第三者機関が帰還地域とラオスに提供される援助を評価できるよう願っています。これらの本国送還に関し、第三者による監視は一切行われていません。その結果、帰還の自発性と本国送還後の個人の長期的な安全性が、確認できていない状況が起こっています」
MSFとUNHCRなどの再三にわたる要請にもかかわらず、タイ政府は今も独立した機関の立会いの元に本国送還前の審査を個別に行うことを拒否している。
ラオス政府は、NGOや国際機関に対し、モン族の送還現場となっている地域に入ることを禁止している。
MSFは4年間にわたってキャンプで活動を行なった後、タイ軍のモン族およびMSFの活動(治療と食糧の提供)への圧力が高まったことを受けて、2009年5月に活動を終了した。このことにより、難民のラオス帰国への圧力はさらに高まった。
MSFは、2005年7月~2009年5月にかけて、ペチャブン県のファイ・ナム・カオ・キャンプに身を寄せるモン族難民に対して医療・衛生援助を行った。この期間中、MSFはこの地域でキャンプの現状ついて意見を述べることができる立場の、唯一の国際的な団体だった。