コートジボワール: 武力衝突で地域医療に危機、MSFが援助拡大へ
2012年06月19日コートジボワールとリベリアの国境地帯にあるタイ近郊で、新たな武力衝突が発生したことを受け、国境なき医師団(MSF)は2012年6月18日までに、負傷者の急増に備えてタイとドゥエクエにある病院の対応能力を拡充した。タイの南側では避難が始まっており、医療従事者も含まれているため、保健医療の空白地帯ができつつある。
コートジボワール西部の治安は、数ヵ月で悪化している。隣国リベリアの民兵と、コートジボワール軍・国連平和維持活動(PKO)部隊との戦闘は、6月7日以降、激しさを増している。6月18日の攻撃では、PKO部隊のニジェール人7人を含む18人の死者が出た。タイの南側ではいまも衝突が続いている。
住民の避難相次ぎ、負傷者急増の懸念も

MSFのコートジボワールにおける活動責任者イシャカ・アブーは「現状に大変な不安を抱いています」と懸念を表明している。戦闘地域の住民が相次いで村を離れているが、避難先も含めて現地の保健医療施設は数が少なく、設備も整っていない。アブーは「治療を受けられる場所がないことも心配です。住民と一緒に医療従事者も避難してしまっている模様です」と話す。
コートジボワール南部のタブーからタイに至る地域は武装地帯と宣言されたため、住民は北部を目指し避難を始めている。コートジボワール軍とPKO部隊は攻撃を牽制するために兵力を増強した。一方、リベリアもカバリー川沿いを中心に国境を封鎖した。
安全上の理由から、各NGOはタイ南側とタブーを結ぶ交通網の利用を控えるよう強く勧告されている。深い森が広がる治安が悪い地域で、道も非常に悪く、人道援助活動が困難だ。
タイには4000人以上が避難中で、大半が親類のもとに身を寄せている。武装地帯内の北部地域では、タイにある病院が唯一の医療機関だ。この地域では数ヵ月前から暴力事件が散発しており、MSFが負傷者の治療にあたってきた。
アブーによると、タイの南側の地域で襲撃を受け、自力で来院した負傷者数人を治療している。6月12日には銃創患者4人を治療し、手術が必要だと判断してドゥエクエに移送した。また、負傷者の急増に備えて病院の対応能力を拡充。約100人を治療できる緊急物資を備蓄している。
しかし、タイの病院はベッドが約20床で、手術室がない。緊急手術の必要な患者は、MSFが緊急対応プログラムを展開しているドゥエクエの病院に移送しなければならないため、搬送能力を強化している。なお、MSFは交戦中の負傷者の搬送ができないため、赤十字社と連携して搬送しているという。