地震から5年、ハイチ保健省へプログラムを引き継ぎ

Q国境なき医師団（MSF）の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか？また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか？

MSFでいろいろな経験を積みたかったからです。
このプログラムへの派遣は4年前にも経験し、今回が2回目でした。前回、産科の現地スタッフのチームワークが良かったので、もう一度一緒に働きたかったのと、彼女たちがどのように育ったかを見たかったので、連絡があった時にすぐにオファーを受けました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか？　どのような準備をしましたか？

前回の派遣活動終了後、出発までの間が2週間とちょっとしかなかったので、送られてきた資料を読み、また出発前にエイズ母子感染予防のワークショップに参加することになっていたのでその資料を読んだり勉強したりしました。おかげで全然休めませんでした。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか？　どのような経験が役に立ちましたか？

すでに同じプログラムを経験し、現場を知っていたので、何が必要か想像がつきました。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか？また、具体的にどのような業務をしていたのですか？

レオガン病院で生まれた赤ちゃん

レオガンの病院は2010年のハイチ地震の時に作られた病院で、地震後、壊滅状態になってしまった現地の保健医療体制を援助するため、MSFが管理・運営を行っていました。

今回、私が赴任した時はプログラムの終了および、現地保健当局へ業務を引き継ぐための活動を開始したばかりでした。私は産科のスーパーバイザーを担い、結局、閉院まで活動しました。ハイチでは子癇（しかん）発作がとても多く、助産師として勉強になりました。

海外派遣スタッフは、赴任時は18人くらいいましたが、現地保健当局へ引き継いだときは10人にまで減らしていました。現地スタッフは一番多い時で450人ほど、その6割はロジスティックスのスタッフです。

レオガン病院の小児科病棟

病院は産科、新生児科、小児科、外科、ICU（集中治療室）、救急外来、コレラ治療センターがありました。コレラ治療センターは、地震後に流行したコレラ対応のために設置されましたが、その後状況が落ち着き、ほとんど患者さんがいなかったので2014年の3月に閉鎖となりました。

そのほかにも、外科、ICU、救急外来は2014年10月、小児科は2015年3月、産科と新生児科は2015年8月に閉鎖と、段階を追って閉鎖しました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか？　また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか？

月曜日から金曜日の午前7時～午後5時が勤務時間とされていましたが、よく午後6時過ぎまでいて、夜勤の助産師の顔を見て帰りました。土曜日も出勤していました。病院を2日空けると、患者さんの状況がすっかり変わってしまうので……。

日曜日はビーチに行きました。カリブ海を満喫していました。

Q現地での住居環境についておしえてください。

1人1軒のバンガローで、インターネットも部屋で可能でした。回線がよくなかったので使えないことも多かったです。トイレは汲み取り、シャワーは水です。12月とか1月は水シャワーでは寒くて、お湯を沸かしていました。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

母子感染予防ワークショップで現地スタッフと

プログラムの終了に向けて病院の規模を小さくしていったので、現地スタッフが解雇されていくのを見るのがつらかったです。

MSFは、一般からの寄付を資金に、活動地のニーズに対応するためにプログラムを運営しています。患者が減りニーズが解消されればプログラムは閉鎖となり、それまで働いていたスタッフの業務も終了となります。

患者数が減り、同僚が解雇されていくなかでモチベーションを保つのは現地スタッフにとって大変だったと思いますが、そんななかでも、研修があるとそこで学んだことを病棟で復習をしたり、研修に行けなかった人に伝えたりして、現地スタッフの前向きな姿を見られたのがうれしかったです。

Q今後の展望は？

次の派遣活動への参加がほぼ決まっているので、出発までは日本を満喫します。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

健康でいること。語学ができても熱い情熱があっても、体が動かなくては仕事になりません。とにかく体に気を付けてください。

MSF派遣履歴