海外派遣スタッフ体験談
多くの人と連携し、価値観を共有したい
小口隼人
- ポジション
- ロジスティシャン
- 派遣国
- スーダン
- 活動地域
- ダルフール
- 派遣期間
- 2008年6月~2009年1月

- QなぜMSFの海外派遣に参加したのですか?
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今回で2回目の派遣でしたが、やはり1回目と同様に国際人道援助の最前線を知りたいというのが一番の理由でした。また、私のキャリア形成のために経験を積むということも動機の一つでした。これら以外の理由としては、共通の問題意識をもった世界中から参加してくる海外派遣スタッフ、もしくは現地の人びとと一緒に働くことが(驚くことも多々ありますが)楽しいからです。
私のMSFとの出会いは、ロンドンの大学院で一緒に勉強し、よくパーティーをしていたイタリア人とフランス人の友だち(MSF海外派遣経験者)の影響でした。大学院終了後、MSF日本の説明会に参加し、海外派遣に応募しました。
- Q今までどのような仕事をしていたのですか? また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?
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多岐にわたりますが、引越しのムーバー、Jリーグ警備員、銀行ATM清掃スタッフ、塾英語講師、ホテル・フロント、保険営業、飲食店スタッフ、メディア関係、NGOのための募金活動、大使館スタッフなどが挙げられます。どの仕事でも多くのことを学びましたが、私がMSFでロジスティシャンとして働くときに必要な技術的なスキルを得られた仕事というのはありません。というのも、ロジスティシャンは多岐にわたる分野(電気、車・機械整備、水・衛生管理、建設等)を担当するため、各分野の最低限の知識をもとに仕事を進めていくことが求められているからです。私の場合は、派遣前・後のロジスティック研修を受けていますが、2回目の派遣でもまだまだ苦戦しながらやっています。
技術的なスキル以外で考えれば、やはり過去の仕事を通して培った、コミュニケーション力、交渉力、計画力、問題分析力はMSFでも役に立っていると思います。どんな仕事でも必ず応用がすることができる多くの共通点があると思います。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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今回のプログラムは、南ダルフールのアディラ地域における子どもたちの栄養失調を予防するというものでした。この地方では、毎年雨季の直前の6月以降から9月にかけて子どもたちが栄養失調を引き起こすことが指摘されており、2008年4月~10月までの短期間でしたが、MSFが栄養失調予防プログラムをアディラという村にオープンしました。この村を中心に、MSFのスタッフを3チームに分けて半径80kmに点在する大きな村に派遣し、移動クリニックでの診察、フォローアップ、入院のための搬送を行いました。また10月の終わりまでにおよそ6千人の子どもたちに栄養補助食を配布し、栄養失調予防に取り組みました。急遽立ち上げられたプログラムのため一筋縄ではいかないこともありましたが、MSFとしては栄養失調の「予防」を目的としたプログラムを立ち上げる比較的新しい試みだったため、とても興味深かったです。
私の主な仕事は、栄養補助食・医療品の調達・保管、MSF病棟の衛生管理、車両整備、コンピューター・通信機器、発電機などの管理でした。今回は2回目の派遣で少し余裕があったので、時間があるときは医療チーム・スタッフにMSFの実際の医療活動についていろいろと教えてもらいました。
- Q週末や休暇はどのように過ごしましたか?
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週末の過ごし方は、とてもシンプルでした。スーダン人スタッフたちと同じ家に住んでいたので、一緒に料理を作ったり、トランプをしたり、アラビア語を習っていました。その他にも、読書をしたり、現地のチームに混じってサッカーをしたりしていました。ただ、休日に限って栄養補助食などを満載したトラックが到着することもあったので働くことも多々ありました!
休暇は贅沢にもパリへ行きました。しかし、暑いダルフールから肌寒いパリへ行ったために体調を崩してしまい残念な休暇でした。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
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アディラで住んでいた家は材木と乾燥した草で建てられた簡単なもので、とても小さい家でした。このような家が17戸あり、1人1戸与えられていました。各家の距離があまりにも近かったため、プライバシーは一切ありませんでした。電気は発電機に頼っていたので一日に10時間しか使えませんでした。夜は懐中電灯を持ち歩き、万が一にも毒蛇を踏みつけないように用心していました。シャワーはバケツに水を汲んで浴びていました。
- Q良かったこと・辛かったこと
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今回のミッションでは、海外派遣スタッフもスーダン人スタッフも一緒の場所に住んでいたので、スーダン人が考えていることや感じていることをよりよく知ることができました。また、スーダン人流の食生活・生活スタイルを共にしたのがちょっと大変でしたが、終わってみるとシンプルで面白かったです。辛かったことは沢山ありますが、あえて一例を挙げると、ダルフール産の美味しい羊の肉を食べているときにビールが飲めなかったことです。
- Q派遣期間を終えて帰国後は?
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1ヵ月ほど日本に滞在して、その後フランス・パリでフランス語の勉強をします。MSFはフランス語圏にもプログラムを持っているので、パリでの語学勉強が終わったらMSFのロジスティシャンとしてフランス語圏の国に派遣される予定です。新たな挑戦なので楽しみです。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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MSFは「苦境に立たされている人びとの医療ニーズに応え、その事実を社会に証言する」という目標の下、老若男女問わず、国籍、宗教、人種、思想を超えて共に働くことを可能にしてくれる団体です。もちろん、このような理念を持っている団体で働くことは簡単なことではないと思います。しかし、私はMSFの貴重な価値観、また、そこから生まれる世界中の仲間との連帯をこれからも大切にしていきたいです。そして、この価値観をより多くの人びとと共有できることを願っています。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2007年5月~2008年3月
- 派遣国:スーダン・西ダルフール地方
- ポジション:ロジスティシャン