遺書と遺言書の違いとは? 法的な効力があるのはどちら?

更新日:2024年10月24日
監修者:三浦美樹 司法書士(日本承継寄付協会 代表理事)

遺書と遺言書はどちらも自分の死後のために作成する文書ですが、法的効力や作成方法などに違いがあります。遺書と遺言書の違いについて解説します。

目次

遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。

パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)

  • 国境なき医師団とは?
  • 遺贈寄付までの流れ
  • 公正証書遺言とその作り方
  • 自筆証書遺言とその書き方
  • 遺贈Q&A

1.遺書と遺言書の違いとは

遺書とは、自分の意思を伝える目的で書く手紙です。家族や友人、お世話になった人などに最後のメッセージを伝えるために作成することが一般的です。遺書は、自由に書くことができますが、法的効力はありません。

それに対して遺言書とは、遺産などについて記載し、相続の方法を指定することを目的に作成される書類をいいます。遺言書は、民法で定められたルールに則って作成され、法的効力があります。

遺産相続に法的効力を発揮するのは「遺言書」

遺言書は民法によって要件が細かく定められている書類であり、法的な効力があります。遺言書においての効力とは、相続人が遺産を受け取る割合などについて記載することで、原則としてその通りに相続する必要性が生じることを指します。なお、民法で定められた要件を満たし、適切な方法で作成された遺言書であることが前提です。

2.遺言書の法的効力について

遺言書に記載することで効力を持つ内容として、相続分の指定や遺産分割方法の指定といった8つの項目があります。詳しくはこちら(※)のページもあわせてご確認ください。

遺言書なしの遺産相続はトラブル発生のリスクも

遺言書なしで相続を行う際によくあるトラブルとして、特定の人に「自分の遺産はあなたに相続してもらいたい」と話していたにもかかわらず、遺言書を用意していなかったケースなどが挙げられます。遺言書がないと被相続人の意思を証明することができないため、親族間での揉めごとに発展し、長期間にわたって遺産分割協議が行われることもあります。

相続に関するトラブルが発生すると、関係者の時間や労力を浪費するだけではなく、その後の人間関係に悪影響を及ぼす可能性もあります。こうした事態を防ぐためにも、できる限り遺言書を作成しておくことをおすすめします。

3.主な遺言書の種類について

主な遺言書の種類として、公証人と呼ばれる専門家に作成してもらう「公正証書遺言」と、遺言者(遺言を遺す方)が自筆する「自筆証書遺言」があります。詳しくはこちら(※)のページをご覧ください。

4.遺言書の正しい書き方について

遺言書に法的な効力を持たせるためには、民法で定められた要件に従って適切に作成する必要があります。詳しくはこちら(※)のページをご覧ください。

5.遺言書が無効になるケース

遺言書の形式に不備がある場合や、相続の内容が明確でない場合、また遺言者の遺言能力が疑われる場合などは、遺言書としての法的効力を発揮できません。せっかく用意した遺言書を無効にしないために、以下のポイントに注意して作成しましょう。

自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言は、本文や日付・署名を遺言者本人が自筆し、押印する必要があります。本文がパソコンで作成されていたり、本人以外が書いたりした場合には、自筆証書遺言は無効になります。また、作成日や署名・押印がない、訂正方法が間違っている、内容が不明瞭、共同で書かれている(例:夫婦連名)、15歳未満の人が書いている、遺言能力が不十分と判断される場合も、無効となります。

自筆証書遺言に添付する財産目録はパソコンでの作成や代筆が認められていますが(※)、財産目録を除く、遺言書の全文は紙とペンを使って遺言者本人が自書する必要があります。また、遺言者の健康状態が悪いといった理由であっても、遺言書を代筆してもらったり、レコーダーを使って他者に作成してもらったりすることができません。

公正証書遺言の場合

公正証書遺言は、公証役場で、2人以上の証人の立ち会いのもと、遺言者が口頭で述べる遺言内容を法務大臣に任命された公証人が文書化して、作成されます。

証人は、遺言内容が本人の意思を表していることを証明する役割を持ちますが、未成年者や相続人、財産を受け取る人は証人になれないなどの欠格事由が設けられています。証人になれない人が立ち会っていた場合は、遺言書は無効になります。

秘密証書遺言の場合

秘密証書遺言とは、遺言の内容を他者に秘密にした上で、遺言書が存在していることを公証役場に証明してもらう方法です。自筆証書遺言とは違い、パソコンや他者の代筆によって作成できますが、本人の署名と押印がなければ無効になってしまいます。

秘密証書遺言は封をした状態で公証役場に持ち込むため、公証人がその内容をチェックすることはなく、遺言内容に不明瞭な点があるために無効になる可能性もあります。ただし、秘密証書遺言として無効となっても、自筆証書遺言の要件を満たしていれば自筆証書遺言として認められます。

その他の場合

これまでに紹介したケース以外にも、脅迫によって作成されたものや、公序良俗に反する内容が含まれているものに関しては、遺言書が無効になります。

また、遺言書で親族以外に自分の遺産を渡すように指定することもできますが、法定相続人(兄弟姉妹を除く)には生活を保障する観点から「遺留分」と呼ばれる最低限の遺産取得分が認められています。遺留分に反したからといって遺言が無効になるわけではありませんが、「遺留分侵害額請求」と呼ばれる手続きによって法定相続人が遺留分を主張する可能性もあります。

6.遺書と遺言書についてよくある質問

遺言書はどのタイミングで書くの?

民法第961条では「十五歳に達した者は、遺言をすることができる。」と述べられています。したがって、15歳以上であれば遺言書を作成することが可能です。

交通事故といった突然の出来事に備え、若くても遺言書を作成しておくことが賢明です。自筆証書遺言であれば手軽に遺言書を作成することもできるため、遺産をめぐるトラブルを避けるためにも、早いうちから遺言書を作成しておくことをおすすめします。

遺言書作成にどれくらいの費用がかかるの?

遺言者本人が自筆する自筆証書遺言では、手数料は必要ありません。しかし、法務局で遺言書を保管してもらう「自筆証書遺言保管制度」を利用するためには、保管の申請のために手数料がかかります(※1)。

公証人に遺言書を作成してもらう公正証書遺言では、対象となる財産の価額に応じて手数料が定められています。例えば、財産の価額が500万円を超え1000万円以下である場合、必要な手数料は17,000円です。ただし、全体の財産が1億円以下の場合に「遺言加算」がかかる他、遺言者の病床で公正証書遺言が作成される場合は手数料が加算され、さらに公証人の日当や交通費が加算されます(※2)。

  1. ※1
  2. ※2

エンディングノートと遺書、遺言書の違いは?

遺書や遺言書と似た文脈で取り上げられるものとして、「エンディングノート」という言葉を耳にしたことがある方もいるかもしれません。エンディングノートと遺書、そして遺言書の違いは何でしょうか。

エンディングノートとは、自分自身に何かあったときに備えて、ご家族がさまざまな判断や手続きを進める際に必要な情報や、伝えたい思いを残すためのノートです(※)。

ただし、法的に有効な遺言書と違って、エンディングノートには法的効力はありません。そのため、エンディングノートに書き記したことが実現されるかどうかは、あくまでもエンディングノートを読んだご家族や関係者の意思に任されています。

エンディングノートに決まった書式はありませんが、自分史や家系図、保有財産やもしもの時の延命治療の希望の有無や葬儀、墓のことなどを含めることが多いようです。

7.遺言書ではなく遺書を書いた方がいいケースはある?

遺産相続についての指示を目的とした遺言書とは別に、家族や友人などに自分の思いや希望を伝える手段として、遺書(手紙)やエンディングノートがあります。

家族や友人へのメッセージの他、例えば、墓や葬儀についての希望やペットの世話についての指定、インターネットのアカウントの整理法などを書き残しておくことで、遺された方々の心をケアし、死後の手続きの負担を軽くすることができるかもしれません。

遺書やエンディングノートには法的効力がないため、遺言書のように細かいルールが法律で定められているわけではありません。そのため、音声や動画などの自由な形でメッセージを遺すこともできます。

8.まとめ

遺書には、法的な効力はありませんが自由な形でメッセージを遺すことができます。一方、遺言書は遺産の相続方法を指定する法的効力を持つ書類です。遺言書は民法により要件が定められ、遺産の分割方法などを記載することで効力を発揮します。遺言書がないと被相続人の意思を証明できず、親族間でのトラブルが発生する可能性が考えられます。

遺言書の種類には主に公正証書遺言と自筆証書遺言があり、それぞれ特定の要件を満たす必要があります。自分にあう方法で適切に作成するようにしましょう。

遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。

パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)

  • 国境なき医師団とは?
  • 遺贈寄付までの流れ
  • 公正証書遺言とその作り方
  • 自筆証書遺言とその書き方
  • 遺贈Q&A

9.遺贈寄付に関するご相談

遺贈寄付の手続きは、誰にとっても初めての体験。でも、相談できる人が身近にいない、という声も聴かれます。「国境なき医師団 遺贈寄付ご相談窓口」には、幅広い知識と相談経験豊富な専任のスタッフがいます。遺言書の書き方から、手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

国境なき医師団 遺贈寄付ご相談窓口

遺贈寄付専任スタッフがお手伝いします。

国境なき医師団には、幅広い知識と相談経験豊富な専任のスタッフがいます。
遺言書の書き方から、手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。

監修者情報

三浦 美樹 司法書士 (一社)日本承継寄付協会新規ウィンドウで開く 代表理事 司法書士法人東京さくら新規ウィンドウで開く 代表

司法書士開業当初から、相続の専門家として多くの相続の支援を行う。誰もが最後の想いを残せる少額からの遺贈寄付にも力をいれている。

平成19年 司法書士試験合格
平成23年 チェスター司法書士事務所を開業
平成29年 さくら本郷司法書士事務所に名称変更
令和元年 一般社団法人承継寄付協会設立 代表理事就任
令和2年 司法書士法人東京さくらとして法人化