遺言書による不動産相続登記とは? 必要書類、申請場所、費用を紹介

更新日:2024年10月24日
監修者:三浦美樹 司法書士(日本承継寄付協会 代表理事)

相続登記とは、土地や建物といった不動産の所有者を、亡くなった方から相続する方へ名義変更する手続きです。不動産の相続は遺言書・遺産分割協議・法定相続割合のいずれかによって行いますが、遺言書による相続であれば登記申請の手続きが比較的簡単に済ませられます。ここでは遺言書によって相続する場合の相続登記の必要書類・申請場所などについて解説します。

目次

遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。

パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)

  • 国境なき医師団とは?
  • 遺贈寄付までの流れ
  • 公正証書遺言とその作り方
  • 自筆証書遺言とその書き方
  • 遺贈Q&A

1.相続登記とは何か

不動産の相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった際に、不動産登記簿に記録された所有権の名義を変更する手続きです。

例えば、母親が持つ不動産を長男が相続する場合、不動産の所在地を管轄する法務局で相続登記を行い、所有権の名義を母親から長男に変更します。

相続登記が義務化される法律が令和6年(西暦2024年)4月1日に施行され、登記を怠ると10万円以下の過料が科されることになりましたので、忘れずに行うようにしましょう。

2.相続登記の3つの種類

不動産の相続登記は主に以下の3つの種類に分けられます。

遺言書による相続登記

被相続人(亡くなった方)の遺言書がある場合には、基本的にその内容通りに登記申請が行われます。

遺言書には、被相続人が自筆した「自筆証書遺言」と、公証役場で作成した「公正証書遺言」があります。法務局の遺言書保管制度を利用せず、自宅などで保管された自筆証書遺言に関しては、登記申請の前に家庭裁判所での検認が必要です。

遺産分割協議によって決められた割合による相続登記

遺言書がなく、かつ複数の法定相続人がいる場合は、法定相続人全員で遺産分割協議を行うことでどの遺産を誰が受け取るかが決められます。遺産を受け取る相続人や割合を決め、その内容通りに相続登記が行われます。

法定相続割合による相続登記

法定相続割合とは、民法で定められた遺産相続の割合です。対象となる相続人の範囲やその優先順位、遺産を受け取ることのできる権利の割合が定められています。遺言書がない時には、この法定相続割合に従って遺産を分割し、相続登記することもあります。

3.遺言書による不動産相続登記について

遺言書による相続登記であれば、遺産分割協議や法定相続割合による相続登記よりも少ない書類で手続きを行うことが可能です。遺言書による相続登記を行う具体的な方法について紹介します。

不動産を取得する相続人だけで手続きが可能

遺言書の内容通りに相続登記を申請する場合、不動産を取得する相続人だけで手続きを行えます。遺産分割協議で決めた内容で申請する際は、協議に参加した相続人全員が署名・押印した遺産分割協議書が必要などの制約がありますが、遺言書があればそのような制約はありません。

必要書類一覧

必要書類 取得する場所 対象者 その他
戸籍謄本(除籍謄本) 全国の市区町村役場 被相続人 被相続人に対し死亡の記載があるもの
不動産を取得する相続人
  • 被相続人の死亡日以降に発行されたもの
  • 相続人以外が不動産を取得する場合(遺贈)は不要
住民票(除票) 住所地の市区町村役場 被相続人
  • 死亡により除かれた住民票(除票)
  • 本籍地の市区町村役場で取得する「戸籍の除附票」でも可
不動産を取得する人
  • 相続人以外が不動産を取得する場合(遺贈)でも必要
  • 本籍地の市区町村役場で取得する「戸籍の附票」でも可
固定資産評価証明書 不動産所在地の都(市)税事務所
もしくは市区町村役場
 
  • 死亡した年度ではなく、登記申請時の年度のもの
  • 不動産所有者の相続人は取得可能
登記申請書 申請人が作成   法務局のホームページからダウンロード可能
遺言書     自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要(法務局の遺言書保管制度を利用していない場合)

一般的な不動産の相続登記の申請で必要となる書類は、上記の通りです。ただし、被相続人の兄弟姉妹が相続人になるといったケースでは、別の書類の提出が求められる場合もあります。

遺産分割協議で決めた割合や、法定相続割合による相続登記とは必要になる戸籍情報の範囲が異なります。遺言書の内容に基づく相続登記は、遺言書によって相続人が把握できるため、戸籍に関しては被相続人の死亡時の戸籍(除籍)謄本と相続人の戸籍謄本だけで構いません。

それに対して、遺産分割協議や法定相続割合による相続登記の場合、対象となる相続人の範囲を把握するために、基本的には被相続人が出生してから死亡するまでの戸籍が必要です。また、遺産分割による相続登記は協議内容をまとめた遺産分割協議書や、全ての法定相続人の印鑑証明書が必要です。

相続登記の申請場所

不動産の所在地を管轄する法務局で相続登記の申請を行います。管轄する法務局が複数ある場合は、それぞれの法務局で申請を行う必要があります。申請が終わると、新たな名義人に対して「登記識別情報通知」が法務局から交付されます。

4.相続登記に必要な費用

相続登記には、登記申請を行う際に国に納める税金である「登録免許税」がかかります。相続登記にかかる登録免許税は、不動産の価値に対して1000分の4を乗じた金額です。

登録免許税 = 不動産の固定資産税評価額 × 4/1000

評価額1500万円の不動産であれば、相続登記の申請の際に6万円を支払います。そのほかにも、申請時に必要な戸籍謄本を取得するための手数料や、公的機関に足を運ぶための交通費などがかかります。

司法書士に依頼する場合

相続登記を外部の専門家に頼みたい場合、主に司法書士に依頼します。司法書士に支払う報酬は、司法書士事務所の考え方や不動産の数・評価額によって異なります。一般的な土地と一軒家で、その評価額が1000万円程度であれば、数万円〜10万円程度に収まることが多いでしょう。

5.相続登記は義務?

2024年4月1日から始まった相続登記の義務化について解説します。

2024年4月1日から義務化

これまで相続登記は申請の期限がなく、手続きをしなくてもペナルティーを科せられることはありませんでした。しかし、所有者がわからない「所有者不明土地」が増加したことから法律が改正され、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。

相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記する必要があります。正当な理由がないにもかかわらず相続登記をしない場合、10万円の過料が科される可能性があります。

相続登記をしないリスク

相続登記をせずに放置すると、前述した過料が科されるだけでなく、その後の手続きが複雑になる可能性があります。

相続放棄をしない相続人は、基本的には遺産分割協議に参加します。しかし、そのうちの誰かが亡くなれば、相続権はその子どもに渡ります。時間が経過するにつれて権利関係が複雑になり、手続きを行うことが難しくなってしまうかもしれません。遺産分割協議が開催しにくく、分割方法の決定も難航するでしょう。

6.まとめ

遺言書で不動産について指定があれば、その内容に基づいて相続登記を行います。その場合、手続きは不動産を取得する相続人が行えばよく、遺産分割協議書を作成して相続人全員が署名・押印するといった作業も必要ありません。

遺言書による不動産の相続は、遺産分割協議や法定相続割合による相続よりも比較的簡単に手続きが済みます。不動産を所有している方は、万が一に備えて遺言書の作成を検討してみてはいかがでしょうか。

遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。

パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)

  • 国境なき医師団とは?
  • 遺贈寄付までの流れ
  • 公正証書遺言とその作り方
  • 自筆証書遺言とその書き方
  • 遺贈Q&A

7.遺贈寄付に関するご相談

遺贈寄付の手続きは、誰にとっても初めての体験。でも、相談できる人が身近にいない、という声も聴かれます。「国境なき医師団 遺贈寄付ご相談窓口」には、幅広い知識と相談経験豊富な専任のスタッフがいます。遺言書の書き方から、手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。

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遺贈寄付専任スタッフがお手伝いします。

国境なき医師団には、幅広い知識と相談経験豊富な専任のスタッフがいます。
遺言書の書き方から、手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。

監修者情報

三浦 美樹 司法書士 (一社)日本承継寄付協会新規ウィンドウで開く 代表理事 司法書士法人東京さくら新規ウィンドウで開く 代表

司法書士開業当初から、相続の専門家として多くの相続の支援を行う。誰もが最後の想いを残せる少額からの遺贈寄付にも力をいれている。

平成19年 司法書士試験合格
平成23年 チェスター司法書士事務所を開業
平成29年 さくら本郷司法書士事務所に名称変更
令和元年 一般社団法人承継寄付協会設立 代表理事就任
令和2年 司法書士法人東京さくらとして法人化