プレスリリース

中央アフリカ共和国:相次ぐ病院や医療スタッフへの攻撃 各地で医療活動が中断

2021年07月21日
中央アフリカ・バンガスーにて、ヘルニア患者を治療するMSF手術チーム=2021年1月 © Alexis Huguet
中央アフリカ・バンガスーにて、ヘルニア患者を治療するMSF手術チーム=2021年1月 © Alexis Huguet

中央アフリカ共和国(以下、中央アフリカ)では、昨年末に紛争が再燃して以来、暴力事件が多発している。医療施設やスタッフ、患者に対する執拗な攻撃も続き、国内各地の医療活動が停止や中断に追い込まれている。

国境なき医師団(MSF)は、人びとの医療へのアクセスが著しく制限されているとして、同国政府と全ての紛争当事者に対し、医療施設の中立性の尊重と、人びとが医療・人道援助を受ける機会を保証するように求めている。

急増する医療への攻撃

中西部ボセンベレ付近で略奪・破壊された<br> 保健所=2021年1月 © Renate Sinke
中西部ボセンベレ付近で略奪・破壊された
保健所=2021年1月 © Renate Sinke
国内で武装グループによる略奪、破壊、占拠などを受けた医療施設は、MSFが目撃しただけでも過去6カ月間で数十カ所に上る。患者が暴力や虐待、尋問、拘束を受けたケースもある。農村部では、地域医療担当者への脅迫や暴行が相次ぎ、医薬品の配達や患者の搬送を担うオートバイの運転手が、銃で襲われ、けがを負い、強盗に遭ったこともある。こうした暴力行為について紛争当事者は、さまざまな武装グループ内で統制が取れていないことが原因だと説明してきた。

MSFの現地活動責任者を務めるリアン・ガスティノーは、「昨年12月から市民や医療に大きく被害が及び、患者や医療従事者、医療施設への攻撃が繰り返されています」と危機感を募らせる。

ロケット弾、略奪、虐待

今年2月、中部ワカ州バンバリで政府軍と武装勢力の間で戦闘があり、近郊のエレバージュ避難民キャンプにあるMSFの支援先診療所がロケット弾を受け損傷した。6月には、8500人の避難民が同キャンプから追い出され、近くの診療所が破壊された。

ワカ州とその西側に位置する、ウハム・ペンデ、オンベラ・ムポコ各州にある複数の医療施設では、過去6カ月間、医療物資、太陽光パネル、マットレスなどが盗まれ、ドアや窓が壊されているのをMSFの移動診療チームが目撃している。

首都バンギなどでMSFが運営や支援を行う医療施設でも、武装グループが侵入し、患者を尋問し、拘束する事件が相次いでいる。2月には、西部の都市ブワルのMSF支援先病院で、武装グループが患者を殺害しようとした事件が起きた。

バンバリ郊外に2013年に設置されたエレバージュ避難民キャンプは先月上旬、破壊され焼失した=2021年6月 © Vivien Aristide/MSF
バンバリ郊外に2013年に設置されたエレバージュ避難民キャンプは先月上旬、破壊され焼失した=2021年6月 © Vivien Aristide/MSF

治安悪化で移動困難に

5月には、北部の町カボ付近で、MSFの研修を受けた地域医療従事者2人が強盗に襲われ、足と頭を撃たれた。2人は下痢やマラリア、栄養失調など現地で多い病気の治療を担っていた。他にも2人の担当者が、殺害予告を受けて活動を続けられなくなった。

6月には、北部バタンガフォにあるMSF病院へ患者を搬送する車両が、武装グループの待ち伏せに遭い、付き添い人が殺害され、オートバイの運転手と患者2人が負傷した。同じ月に再びこの付近で2件の襲撃が起きたほか、中西部ボサンゴアや中東部ブリアの近くでも同様の事件が発生した。

MSFの副オペレーション・マネジャー、ギサ・コーラーによると、昨年12月以降、大きな町の郊外では、検問や強盗、襲撃などのために移動が難しくなり、危険な状態が続いているという。

今年1月、武装集団にバンガスーの町が襲撃され、何百人もの住民と共に病院へ避難した家族 © Alexis Huguet
今年1月、武装集団にバンガスーの町が襲撃され、何百人もの住民と共に病院へ避難した家族 © Alexis Huguet

MSFも活動を中断

一連の事件と治安の悪化を受け、MSFは救命処置、診療所スタッフの指導、医薬品の供給、患者搬送などの一時中断を余儀なくされた。

例えば西部パウア、中部ブリアなどの地域では、MSFは支援先診療所への定期訪問ができなくなった。またカボでは4月以降、移動リスクを考慮して農村部から町へのオートバイでの患者搬送を減らしたため、毎月の搬送患者数が半分近くに減少。6月には、カボ周辺地域で、MSFの地域保健担当者が実施した週次診療件数は普段の4分の1にとどまった。

コーラーは「活動中断で医療の質は低下し、人びとの健康はますます脅かされます。特に幼い子どもや妊娠・出産時に合併症を起こした女性が影響を受け、避けられる死を招くことになります。いまはマラリアやその他の命にかかわる病気の患者数が、ピークに達する雨期でもありますから」と話す。

恐怖とパニックによる二次被害

治安の悪化により、多くの人が恐怖のため外出して医療にかかることができず、また安全確保のため医療スタッフの離職も相次いでいる。一方で暴力をきっかけに、保護を求めて大勢の人びとが病院の敷地内に押し寄せ、診療に支障を来たすこともあった。カボでは7月、武力攻撃のうわさが流れ、パニックに陥った人びとが急に病院に詰めかけた。

ガスティノーは「残念ながら、中央アフリカの医療が暴力による影響を受けるのは、いまに始まったことではありません。紛争時に特有の構造的な問題です。武装勢力の数も戦闘も多いため、非常に不安定な状況が続き、これまで比較的安定していた地域にも波及しています。生活必需品を得るのにも苦労している人びとが、医療へのアクセスまで限られてしまうのです。いまこそ全ての紛争当事者が、民間人や医療の施設・輸送・スタッフを保護する国際人道法を厳格に順守すべきです」と訴える。

バンガスーで起きた襲撃により病院の敷地内で避難する人びと=2021年1月 © Alexis Huguet
バンガスーで起きた襲撃により病院の敷地内で避難する人びと=2021年1月 © Alexis Huguet

MSFは1997年に中央アフリカで活動を開始。現在はバンギ、ブリア、バンガスー、バンバリ、カボ、バタンガフォ、パウア、ボサンゴア、カルノーで13の通常プロジェクトと、1つの移動緊急対応チームを運営している。2020年後半の紛争激化以来、MSFは全プロジェクトで治療の継続に努める一方、紛争の前線であるボギラ、ボセンベレ、ブワル、グリマリ、ムバイキ、ダマラ、ボアリ、デコア、リトン、クワンゴ、イッピーで緊急プロジェクトを立ち上げた。

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