遺産とは何か? プラスの遺産とマイナスの遺産、課税・非課税の対象範囲を解説

更新日:2024年7月1日
監修者:三浦美樹 司法書士(日本承継寄付協会 代表理事)| 脇坂誠也 認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク理事長(脇坂税務会計事務所 所長)

遺産とは亡くなった方の残した財産のことであり、現預金はもちろん、不動産や借金といったさまざまな財産が該当します。遺産の種類によって相続時の課税・非課税といった扱いが異なる点や、遺産ではなくても相続税の対象になるものがある点に注意が必要です。

目次

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遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。

パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)

  • 国境なき医師団とは?
  • 遺贈寄付までの流れ
  • 公正証書遺言とその作り方
  • 自筆証書遺言とその書き方
  • 遺贈Q&A

1.そもそも遺産とは何か

遺産とは、被相続人(亡くなった方)の残した財産のことです。「相続財産」と呼ぶこともあります。具体的には、現預金や不動産などさまざまな財産が遺産に該当します。また、価値のあるものだけではなく、借金なども財産に含まれます。

2.プラスの遺産とマイナスの遺産

現金や宝石など、一般的に価値のあるものを「プラスの遺産(積極財産)」と呼びます。反対に、借金といった価値がマイナスになるものに関しては「マイナスの遺産(消極財産)」と呼びます。マイナスの遺産を相続した場合、相続した人が代わりに支払わなくてはなりません。

プラスになるもの

マイナスになるもの

3.遺産分割協議の対象から外れる遺産とは?

相続に当たっては、遺産を分ける方法を協議するための「遺産分割協議」が開かれることがあります。しかし、全ての遺産がその協議の対象となるわけではなく、宗教的・祭祀的な意味合いを持つ以下のものに関しては、祭祀主宰者(喪主)がそれを承継します。

4.実は遺産ではないもの

以下に関しては遺産とはみなされません。

遺族給付

遺族給付は、国民年金や厚生年金といった仕組みによって遺族が受け取れる給付です。あくまで遺族に対して受け取る権利が与えられるものであり、亡くなった方の財産ではないため、遺産にはなりません。

賃貸物件の賃料、株式の配当

被相続人が賃貸物件を運営していたり、株式を保有していたりする場合には、賃料や配当が継続的に発生します。賃貸物件や株式は遺産ですが、それらから発生した収益に関しては遺産になりません(※)。ただし、誰がその収益を受け取るのかを明確にするために、遺産分割協議によって取り決めを行うこともあります。

一身専属的な権利・義務

遺産は、お金やお金を受け取れる権利など、被相続人の持つさまざまな財産が該当すると説明しました。しかし「被相続人の一身に専属したもの」に関しては、その限りではないと民法で定められています。

「一身に専属したもの」とは、本人だけに認められた権利や義務であり、他者に渡すことはできません。具体的には、以下の権利・義務が該当します。

例えば、医師や税理士といった国家資格は個人に与えられるものであり、継承して相続人が業務を行ったり、利益を得たりするものではないため「一身に専属したもの」であると考えられます。

5.どのような遺産が相続税の対象になる?

相続税の対象となる遺産について紹介します。

相続・遺贈によって取得した財産

現預金、不動産など、相続によって取得した財産は相続税の対象です。

ここまで民法における遺産の範囲について説明してきましたが、相続税を考える上では、相続税法における財産の範囲を知る必要があります。相続税法においては、金銭的に見積もることができる経済的価値のある全てのものに対して課税すると考えられています(※1)。なお、後述のように、マイナスの遺産(債務等)は相続税を計算するときに、遺産総額から差し引くことができます(※2)。

また、遺言書に記載して指定することで、相続人以外の人・団体に財産を贈ることも可能です。このような方法は「遺贈」と呼ばれ、通常の相続と同じく相続税の対象となります。

その他の財産

民法では相続財産とは認められないものの、相続税法の規定により相続税の対象となる財産があります。このような財産の主な例としては、以下が挙げられます。

なお、死亡退職金や生命保険金の非課税枠については後述します。

亡くなる前7年以内の贈与

財産の持ち主が亡くなった後に相続される財産だけではなく、生前に贈与した財産に対しても税金がかかります。

被相続人が亡くなった日からさかのぼって7年以内に行われた贈与に関しては、相続財産に加えて税額の計算を行います。以前はこの期間が3年でしたが、2024年1月1日施行の相続税の改正で、7年へ延長されました。

この改正は、2024年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されるもので、贈与者(被相続人)の贈与開始日によって加算対象期間が異なります。

また、亡くなる4年前〜7年前に関しては、贈与した財産の額から100万円を差し引いた額が相続税の対象とみなされます。

詳しくは「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」(※)をご確認ください。

贈与税の対象となる財産

生前に贈与された財産は贈与税の対象となるため、前述した7年間の生前贈与以外に関しては、相続税の対象とはなりません。

ただし「相続時精算課税制度」によって、本来なら贈与を受けた際に支払う贈与税を、財産を本来所有する方が亡くなってから相続税とまとめて支払うことも可能です。

相続時精算課税制度では、特別控除2500万円までの贈与に関しては贈与税を支払わず、相続税の対象として後で精算を行うことができます。加えて、2024年1月1日から始まった新しい相続時精算課税制度では、年間110万円の基礎控除額が追加されました。基礎控除額に関しては、贈与税も相続税もかかりません。

6.遺産総額から差し引くことができるもの

相続税の計算をするときに、以下の項目は遺産総額から差し引くことができます。

被相続人の債務

こちらで説明した「マイナスの遺産」(債務:借金、買掛金、未払い金、預り金、保証債務等)のうち、被相続人の死亡時に確定していたものについては、相続税の計算をするときに、遺産総額から差し引くことができます。

葬式費用について

葬式費用は被相続人が亡くなった後に発生するものであるため、被相続人が所有するマイナスの遺産には含まれません。しかし、以下の費用に関しては遺産総額から差し引いて相続税を計算することができます。

7.相続税が非課税になる遺産とは?

相続税が非課税となるものに関しては、主に以下が挙げられます。

8.見落とされやすい遺産

以下の遺産は見落とされやすいですが、遺産として相続税の対象になります。

名義は別の人になっているものの、実際は本人が管理をしている預金・株を「名義預金」「名義株」といいます。例えば、「妻名義の銀行口座に預けているお金であるが、亡くなった夫が口座を実質的に管理していた」といったケースです。具体的には、ハンコや通帳を被相続人が管理していたり、自由に引き出して使えたりといった場合に、名義預金・名義株として課税されます。

また、生活費や葬式費用などに使う目的で被相続人の死亡前後に相続人が預金を引き出していた場合、それらの金額も相続財産として扱われます。

9.遺言書がある場合とない場合の遺産相続について

遺言書の有無によって遺産相続の手続きの方法が異なります。

遺言書がある場合

遺言書がある場合には、基本的にはその内容通りに遺産が相続されます。なお、相続人全員が協議の上合意すれば、遺言内容と異なる方法で相続を行うことも可能です。

遺言書がない場合

以下のケースに関しては、相続人全員で遺産分割協議を行うことによって相続の方法を決めます。

協議の結果は遺産分割協議書に記録し、相続人全員が署名・押印を行います。

10.遺留分について

相続の際は、誰がどの遺産をどれくらい受け取るのか、遺言書や遺産分割協議によって自由に決められます。しかし、自由に決定することで「遺産がないと生活を維持するのが難しいのに、全くもらえなかった」などの不満を持つ相続人が出てくるかもしれません。

兄弟姉妹を除く法定相続人は、自らの生活を守る観点から「遺留分」と呼ばれる最低限の遺産を求める権利が与えられています。遺留分の割合は以下の通りです。

遺留分を侵害する内容が遺言書や遺産分割協議で定められた場合、遺留分を保証されている相続人は、遺留分を取り返す遺留分侵害額請求を行うことができます。遺留分侵害額請求はあくまで権利であり、権利を行使しない(請求しない)ことも可能です。なお、この権利は相続開始及び遺留分侵害の事実を知ってから1年以内に行使しないと消滅してしまいます。

11.特別受益とは

特別受益とは、一部の相続人が被相続人から受け取った利益を指します。例えば、兄弟が複数人いるにもかかわらず、そのうちの1人に対して亡くなった父が「住宅を購入するための資金を特別に贈与していた」「借金を肩代わりしていた」といった事情があるケースです。この事情を考慮しないで遺産分割を行うと、相続人間で不公平感が生じるでしょう。

したがって特別受益がある場合には、その金額も考慮した上で遺産の分割を行います。また、特別受益は生前の贈与だけではなく、遺贈や死因贈与(「私が死んだら◯◯をあなたに贈与します」といった契約)も含まれます。

12.寄与分とは

被相続人の療養・看護などによって、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人は「寄与分」として他の相続人よりも財産を多くもらえる可能性があります。寄与分が認められやすい具体的なケースとして、「無償で家業を手伝っていた」「献身的に介護をしていた」などがあります。

13.遺産を受け取りたくない場合の対処方法

遺産を受け取りたくない場合は、相続放棄によって全ての財産の相続を放棄することが可能です(※1)。

また、マイナスの遺産が多いときには、プラスの遺産の範囲内でマイナスの遺産を引き継ぐ「限定承認」と呼ばれる方法をとることも可能です。例えば、被相続人に借金があったものの、不動産といった手放したくないプラスの遺産があった場合には、相続するプラスの遺産と同じ範囲の分だけ借金を引き継ぐことができます(※2)。

ただし、相続放棄や限定承認を行う際は、相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申述しなくてはなりません。

14.遺産を探し出す方法

相続人は遺産分割協議や相続税の申告を行うために財産の全体像を把握する必要があります。遺言書がなく、かつ亡くなった方の財産を相続人が把握していない場合は、どんな財産がどの程度あるのかを相続人が調べなくてはなりません。

現預金・有価証券の把握

現預金や有価証券を把握するためには、自宅で以下をはじめとする書類などを探します。

近年は店舗がなくオンライン上で手続きを行う銀行や証券会社も増えています。メールやスマートフォンのアプリ、関連する郵便物などもチェックして、相続を漏らさないように注意する必要があります。

不動産の把握

被相続人の土地や建物を調べるためには、以下をはじめとする書類を探します。

固定資産税の納税通知書によって確認を行う場合は、通知書で所在地などを把握した上で不動産がある市区町村の役所へ行き、固定資産課税台帳を閲覧します。また、不動産の権利関係を確認するために法務局で登記事項証明書を取得します。

借金の有無の把握

借金の有無は、以下をはじめとする方法で確認します。

借金の存在を早めに把握できれば、前述した相続放棄や限定承認の手続きを期限内に済ませることができます。

また、亡くなった方が自ら借りたお金だけではなく、連帯保証人となっている借金も遺産に含まれます。その場合は連帯責任を負うことを記載した契約書を締結しているはずなので、自宅などをくまなく探すことになります。

15.まとめ

遺産にはプラスの遺産とマイナスの遺産があり、借金などのマイナスの遺産も相続の対象に含まれます。相続税の金額を計算するためには遺産の総額を把握する必要がありますが、民法上は遺産ではなくても、相続税法において課税対象とみなされる財産もありますので、忘れずに把握しましょう。

自分の意思を示し、亡くなった後の手続きを円滑にするためにも、遺言書を作成しておくことをおすすめします。相続や遺言書の書き方についてお悩みの方は、専門家に相談することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

16.遺贈寄付に関するご相談

遺贈寄付の手続きは、誰にとってもはじめての体験。でも、相談できる人が身近にいない、という声も聞かれます。「国境なき医師団遺贈寄付ご相談窓口」には、幅広い知識と経験豊富な専任のスタッフがいます。遺言書の書き方から手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。

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監修者情報

三浦 美樹 司法書士 (一社)日本承継寄付協会新規ウィンドウで開く 代表理事 司法書士法人東京さくら新規ウィンドウで開く 代表

司法書士開業当初から、相続の専門家として多くの相続の支援を行う。誰もが最後の想いを残せる少額からの遺贈寄付にも力をいれている。

平成19年 司法書士試験合格
平成23年 チェスター司法書士事務所を開業
平成29年 さくら本郷司法書士事務所に名称変更
令和元年 一般社団法人承継寄付協会設立 代表理事就任
令和2年 司法書士法人東京さくらとして法人化

脇坂誠也 認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク 新規ウィンドウで開く 理事長 脇坂税務会計事務所 所長

会計税務を通してNPOの健全な発展に寄与することを目指し、NPOの会計税務及びその周辺の情報、知識、ノウハウの発信にも力を入れている。