遺贈と贈与の違いとは? 共通点や注意点などを徹底解説! 相続の基本知識も紹介

更新日:2023年11月10日
監修者:三浦美樹 司法書士(日本承継寄付協会 代表理事)

遺贈とは、遺言によって誰かに財産を無償で譲ることをいいます。贈与とは、契約によってお互い合意した人に財産を無償で譲ることをいいます。財産を誰かに譲る、という意味では一見2つは似ているのですが、変更は可能か、放棄は可能か、税金はいくらになるのか……といった、贈る人にとっても受け取る人にとっても重要な点で大きな違いがあります。同じ財産を譲るにも、遺贈にすべきか、贈与にすべきか……迷われている方も多いでしょう。重要な違いや共通点、注意点をまとめました。

目次

  1. 1.
  2. 2.
  3. 3.
  4. 4.
  5. 5.
  6. 6.
  7. 7.
  8. 8.

遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。

パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)

  • 国境なき医師団とは?
  • 遺贈寄付までの流れ
  • 公正証書遺言とその作り方
  • 自筆証書遺言とその書き方
  • 遺贈Q&A

1.【基本をおさらい】相続とは?

遺贈と贈与について見ていく前に、まずその背景にある相続の基本やキーワードをおさらいしましょう。
相続とは、ある人が亡くなった場合に、配偶者・お子さん・親御さんやご兄弟など、その人と一定の親族関係にある人がその財産上の権利と義務を受け継ぐことをいいます(民法第882条以下)。相続される人を「被相続人」、その人と一定の親族関係にあって、相続する人を「法定相続人」といいます。
相続では、法律によって、それぞれの法定相続人が財産を受け継ぐ割合の目安(法定相続分)も決められていますが、最終的には法定相続人の遺産分割協議によって、誰がどの財産をどれだけ相続するかを決めます。一方、被相続人が遺言書を作成することによって、相続人それぞれに相続させる割合をご自分で定めることもできます(法定相続人以外の人に財産を譲る、遺贈という選択肢もあります。後ほどご説明します)。

相続人に当たる人

被相続人の血族(血縁関係にある人。養子縁組による法律上の血族も含まれます)は、次の順番で相続人になります(民法第887、889条)。

  1. 1.
    被相続人の子
  2. 2.
    被相続人の直系尊属(親)
  3. 3.
    被相続人の兄弟姉妹

なお、被相続人の配偶者は常に相続人となり、上記の順位で相続人になった人と同順位で相続人になります。

相続分について

被相続人が遺言を遺している場合は、その内容に従って遺産が受け継がれます。しかし、遺言がなく、子と配偶者、あるいは兄弟姉妹のように同順位の相続人が複数いる場合、誰がどれだけ相続するかは相続人による遺産分割協議によって決めることになります。その際の“目安”になるものが「法定相続分」で、民法で定められています。

相続で覚えておくべき「遺言執行者」とは?

被相続人が遺言を遺している場合、被相続人(遺言者)が亡くなった後、遺言書に従ってその内容を実現するための手続きをする人を「遺言執行者(または遺言執行人)」といいます。

2.遺贈とは?

では、遺贈と贈与について見ていきましょう。遺贈とは、「遺言」によって死後に遺産の一部または全てを相続人以外の人や団体に無償で譲ることをいいます。死後に財産を誰かに譲る、というと「相続」という言葉が思い浮かびますが、上で見たように、相続は、配偶者・お子さん・親御さんやご兄弟など、法律によって定められた人(法定相続人)が、被相続人の財産を受け継ぐことをいいます。法律で定められた人が被相続人の死後に財産を受け継ぐ場合が「相続」で、相続人以外の被相続人が指定した人や団体が財産を受け継ぐ場合は「遺贈」となります。

3.贈与とは?

贈与とは、「契約」によって当事者の一方が相手方に、ある財産を無償で譲ることをいいます。譲る人(贈与者)が相手方(受贈者)に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって成立します(民法第549条)。贈与者と受贈者の組み合わせでいうと、「個人から個人」、「個人から法人」、「法人から個人」、「法人から法人」の4つのパターンが考えられますが、ここでは「個人から個人」と「個人から法人」の2つのパターンについてのみ見ていくことにします。
贈与者が個人の場合、贈与が行われるタイミングによって生前贈与と死因贈与に分けられます。さらに、特殊な贈与の形態として負担付き贈与があります。

贈与の種類① 生前贈与

一般的に贈与というと、この生前贈与を指します。上で説明したように、生前贈与とは、当事者の一方が生前に相手方に対してある財産を無償で譲ることをいい、双方の合意の上で成立する契約行為です。贈与者は何度でも生前贈与を行うことができますが、受贈者には毎回、納税と申告の義務が発生します。

贈与の種類② 死因贈与

死因贈与とは、贈与者が亡くなることによって効力が発生する贈与の種類です(民法第554条)。贈与者が生前に受贈者を決め、その人と契約を結ぶことによって成立します。死因贈与は遺贈と似ていますが、その違いは贈与者(贈る人)と受贈者(受け取る人)の間に合意があるという点です。そして、単に財産を贈るだけであれば遺贈で済むところを、生前に受贈者と契約して死因贈与にするケースがあるのは、「負担付き贈与」にするためであることが多いです。

贈与の種類③ 負担付き贈与

負担付き贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます(民法第553条、第551条第2項)(国税庁)。例えば、借金をして不動産を購入した人が、その不動産を借金の支払い義務と合わせて他者に贈与するといったケースが代表的です。負担付き贈与を行った場合、贈与者に所得税と住民税、受贈者に贈与税がかかります。

4.遺贈と贈与の共通点は?

上でも見たように、遺贈と贈与にはいくつかの共通点があります。

自分の財産の行先を自分で自由に決めることができる

第一に、どちらも財産を譲りたい人が、譲りたい財産を、譲りたい人に譲る行為であるという点です。当たり前のように思えますが、法律でその権利が保障されているからこそ可能になることです。自分の大切な財産の行先を、自分の意思で自由に決めることができるという、個人としての大切な権利と言えるでしょう。

「負担付き(債務なども含めて財産を譲るもの)」にすることが可能

第二に、どちらも財産を譲る代わりに一定の負担を請け負ってもらう「負担付き」にすることができる点です。例えば、住宅ローンが残っている不動産を譲り、その支払いは受贈者に請け負ってもらう「負担付き遺贈」や、自宅を贈与する代わりに、人生を共にしてきた大事なペットの世話をその生涯にわたってやってもらう「負担付き贈与」などが考えられます。

5.遺贈と贈与の違いは?

一見似ている遺贈と贈与ですが、いくつかの重要な相違点があり、税負担ともかかわってきます。項目ごとにご説明します。

遺贈は「単独行為」だが、贈与は「契約行為」

遺贈は被相続人(財産を譲りたい人)が遺言書に遺贈の内容(何を、誰に、どのように譲りたいか)を法的に正しい形式で記すことで完結する単独行為であり、受遺者(財産を譲り受ける人)は、自分が受遺者であることを相続が始まるまで知らないということも珍しくありません。一方、上で説明したように贈与は契約行為であり、贈与者(財産を譲りたい人)と受贈者(財産を譲り受ける人)の合意のもとに成立するものです。つまり、財産を譲りたい人と財産を譲り受ける人が、事前に話し合いをして合意しているかどうかが第一の違いです。

遺贈は撤回・放棄できるが、死因贈与は贈与者が亡くなった後には放棄できない

遺言書は何度でも書き換えができ、最後に書かれたものが効力を持ちます。ですから、被相続人が遺言書を書き直すことで、遺贈は何度でも撤回が可能です。また、上で説明したように、遺贈は被相続人の単独行為ですから、受遺者が遺贈の内容を知ってから「譲り受けたくない」と考えることもありえます。そのため、遺贈は一定の手続きを踏んで、放棄することができます(具体的な手続き方法や期限についてはこちら)。 贈与は贈与者と受贈者の間の合意のもとに成立する契約行為であるものの、両者が存命中に合意ができれば撤回も可能です。ただし、負担付き贈与の場合、受贈者が既に負担の内容を一部または全部を履行していた場合、撤回は原則としてできません。
また受贈者による放棄については、贈与者が亡くなった後に効力が発生する死因贈与において、受贈者が一方的に「受け取りたくない」と契約を破棄することは原則としてできません。

遺贈にかかるのは相続税、贈与にかかるのは贈与税、法人への遺贈や贈与の場合は法人税

遺贈によって受遺者が受け取った財産は、受遺者が人であれば相続税の課税対象になります(法人への遺贈の場合は相続税がかかりません)。一方、贈与によって受贈者が受け取った財産には、受贈者が人であれば贈与税がかかります(法人への贈与の場合は法人税がかかります。ただし、「政令で定める34事業」(収益事業)に該当しない事業を行っている法人には法人税もかかりません)。相続税と贈与税は、適用されるルールが違いますから、控除額も計算方法も異なります。そのため、同じ財産を同じ人に譲る場合であっても、遺贈として譲るのか、生前贈与、あるいは死因贈与として譲るのかによって、支払う税額は変わってきます。

税制面での優遇措置の違い

個人から個人への遺贈の場合にかかるのは主に相続税です。相続税には基礎控除額があり、遺贈あるいは相続される財産の総額から基礎控除額を差し引いた分に相続税が課税されます。この基礎控除額は「3000万円+法定相続人の人数×600万円」です。相続税の基礎控除額の計算では、法定相続人以外の受遺者の人数を含まない点に注意してください。一方、相続税の総額を、受け取った財産に応じて負担する時には、法定相続人以外の受遺者の人数も入れて分割することになります。 個人から法人への遺贈の場合にかかるのは主に受贈者である法人が支払う法人税ですが、贈与する財産が不動産や有価証券などの場合、贈与者に「みなし譲渡所得税」が課せられる場合があります。


一方、個人から個人への贈与の場合にかかってくるのは贈与税です。贈与税制度には、暦年課税と相続時精算課税の2種類があり、受贈者が選ぶことができます。暦年課税は通常の贈与税の課税方式で、受贈者がその年に受け取った財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残りの額に課税されます。相続時精算課税制度は、財産の早期移転をしやすくするために2003年に設けられたもので、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です(国税庁)。この制度を使うと、相続が始まるまで(贈与する方が亡くなるまで)、財産贈与について、合計2500万円まで特別控除が受けられます。2500万円を超えた分については贈与額の20%が課税されます。ただし、相続時精算課税制度では、相続が始まる時点でそれまでに贈与された財産についても(贈与時の価額で)相続財産に組み込んで相続税が計算されます。つまり、贈与者は存命中に財産の一部を法定相続人に引き継がせ、相続人は残りの財産を相続する時に既に贈与を受けた分もまとめて相続税を支払う(精算する)かたちになります。
個人から法人への贈与の場合に発生する税金は、遺贈の場合と同様、法人税です。ただし公益法人(「政令で定める34事業」(収益事業)に該当しない事業を行っている法人)の場合は法人税もかかりません。

不動産登記にかかわる違い

不動産の名義変更手続きを登記といいます。相続で(遺言による場合を含む)受け取った場合は「相続登記」、遺贈で受け取った場合は「遺贈による所有権移転登記(以下、遺贈登記)」、贈与で受け取った場合は「贈与登記」といいます。これまで、相続や遺贈、贈与による所有権移転の登記は義務ではありませんでしたが、2024年4月1日より、相続登記は義務となります。詳しくはこちら(法務省)新規ウィンドウで開く
上に述べたように、遺贈登記や贈与登記は法的義務ではなく、登記をしなくても遺贈や贈与が無効になることはありません。が、登記簿上の名義が変わっていないと元の所有者が第三者に売却してしまったり、不動産を担保に借り入れをしたりという事態もありえます。そのようなトラブルを避けるためには、遺贈や贈与を受けた場合は早めに贈与登記をしておいたほうがよいでしょう。
また、通常、登記は相続や遺贈、贈与によって所有権が変更になってから手続きを行います。しかし、死因贈与の場合だけできることがあります。それは将来的に所有権が移転することを示す仮登記です(始期付き所有権移転の仮登記)。仮登記をしても所有者はもとのままですが、仮登記をすることによって受け取る側は一定の安心感が得られるでしょう。

遺贈 生前贈与・死因贈与
概要 遺言によって財産を譲ること 当事者間の約束(契約)に基づいて財産を無償で譲ること
法的な位置づけ 単独行為 契約行為
財産を受け取る人 人でも法人(団体を含む)でも可能 人でも法人(団体を含む)でも可能
財産を譲る人と受け取る人の合意 不要 必要
撤回・解除 遺贈者単独の意思で何度でも撤回・解除可能 契約のため、解除・解消には両者の合意が必要
放棄 受遺者の都合で放棄(遺贈を受け取らないという決断)は可能 生前贈与の場合は双方の話し合いによって契約解消を行うが、死因贈与の場合は契約者の片方が亡くなっているため、放棄はできない
税金(基礎控除額) 相続税
基礎控除額=「3000万円+法定相続人の人数×600万円」
生前贈与の場合:贈与税
基礎控除額=受贈者1人当たり年間110万円 または受贈者1人当たり合計2500万円 死因贈与の場合:相続税
不動産登記 遺贈登記(遺贈による所有権移転登記)
義務ではないがやっておいた方がトラブルを回避できる
ただし、相続人が遺贈により受け取った場合は2024年4月1日より義務化
贈与登記
義務ではないがやっておいた方がトラブルを回避できる
死因贈与で「始期付き所有権移転の仮登記」が可能

6.遺贈と贈与に関する注意点

遺贈と贈与、特に死因贈与は、被相続人が亡くなったことをきっかけにその財産が他の人に引き継がれるという点で非常に似ているように見えるのですが、撤回や放棄の可否、発生する税の種類など、注意すべき違いが多々あります。これまでに見てきたことを含めて、注意点をまとめてみました。

同じ財産を譲るにも、遺贈と贈与では発生する税金や金額が異なる

上で見てきたように、個人間のやり取りの場合、遺贈には相続税、贈与には贈与税が発生し、それぞれの基礎控除額は異なります。同じ財産を移転する場合、一般的に贈与税の方が高額になります。しかし、相続税は遺贈あるいは相続のタイミングの価額に基づいて計算するのに対して、贈与税は贈与が起こったタイミングの価額で計算するため、価格の変動が比較的大きい不動産などは、結果的に贈与の方が税金の額が小さくなることもあります。

遺贈は撤回・放棄可能だが、死因贈与は贈与者が亡くなった後には放棄できない

上で説明したように、遺言書は何度でも書き直し可能で、遺言執行は最後に書かれた遺言書に基づいて行われます。遺言書を作成してから遺言が執行されるまでには時間がありますから、まずは一回書いてみて、毎年見直すということもできます。また、受遺者は遺言の存在を知ってから自分が遺贈を受け取るかどうか、自由に選択することができます。このように、譲る人にとっても譲られる人にとっても自由度が高いのが遺贈です。一方、生前贈与や死因贈与は契約なので、契約内容を変更するためには、両者の合意が必要です。つまり、死因贈与の効力が発生する=贈与者が亡くなってしまうと、契約内容の変更が不可能になります。

死因贈与は確実に遂行されるが、遺贈は実現しないこともある

遺贈の場合、受遺者は遺贈を放棄することもできるため、遺言者から見ると遺言が思い通りに実現しない可能性もあります。そこで、決めた相手に財産を確実に受け取ってもらいたい、あるいは、財産に加えて負担も確実に請け負ってもらいたい(負担付き贈与)という場合には、死因贈与は贈与者が一方的に放棄できないという特徴を利用して、贈与を選ぶことに意味があるでしょう。

遺贈は遺言書が必要、贈与は法的に有効な書面を作成することが推奨される

遺贈には口伝えやメモではなく、法的に有効な遺言書が必要です。遺言書は遺言者一人でも作成可能なものですが、法的な不備があった場合、せっかくの遺言が生かされないこともありえます。そのようなリスクを避けるためには、公証役場で公正証書遺言を作成する、あるいは弁護士や司法書士、行政書士、税理士など専門家に相談しながら遺言書を作成することをおすすめします。
一方、贈与の場合は贈与者と受贈者の合意があれば成立し、極端な話、口約束でも有効です。しかし、契約内容を記した書面がないと、契約内容の詳細を第三者が確認することができないため、他の相続人との間でトラブルになったり、税務署調査で問題になったりしやすいのです。そのようなリスクを避けるためには、こちらも専門家に相談のうえ、書面での契約を交わすことをおすすめします。

7.まとめ

遺贈と贈与、どちらも財産を「贈る」という点では共通していますが、法的な扱われ方、特に税制面での扱われ方が大きく異なることをご理解いただけたのではないでしょうか。ここでは一般的なお話をしましたが、それぞれのご事情によって、遺贈と贈与の選び方は違うでしょう。後悔のない選択をするためにも、専門家に相談されることをおすすめします。誰に相談すればよいか……とお困りの場合は、国境なき医師団の遺贈寄付ご相談窓口の専任スタッフに、お気軽にご相談ください。

8.遺贈寄付に関するご相談

遺贈寄付の手続きは、誰にとっても初めての体験。でも、相談できる人が身近にいない、という声も聴かれます。「国境なき医師団 遺贈寄付ご相談窓口」には、幅広い知識と相談経験豊富な専任のスタッフがいます。遺言書の書き方から、手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

国境なき医師団 遺贈寄付ご相談窓口

遺贈寄付専任スタッフがお手伝いします。

国境なき医師団には、幅広い知識と相談経験豊富な専任のスタッフがいます。
遺言書の書き方から、手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。

監修者情報

三浦 美樹 司法書士 (一社)日本承継寄付協会新規ウィンドウで開く 代表理事 司法書士法人東京さくら新規ウィンドウで開く 代表

司法書士開業当初から、相続の専門家として多くの相続の支援を行う。誰もが最後の想いを残せる少額からの遺贈寄付にも力をいれている。

平成19年 司法書士試験合格
平成23年 チェスター司法書士事務所を開業
平成29年 さくら本郷司法書士事務所に名称変更
令和元年 一般社団法人承継寄付協会設立 代表理事就任
令和2年 司法書士法人東京さくらとして法人化