遺留分とは? 相続人の範囲や遺贈の順序、割合などを徹底解説! 具体例も紹介

更新日:2023年11月10日
監修者:三浦美樹 司法書士(日本承継寄付協会 代表理事)

ここでは遺留分についてご紹介します。
「遺留分」とは、亡くなった方の遺言書があった際に、法律によって定められた最低限の相続分を指します。遺留分は、遺言書に関係なく相続人の権利として認められていますので、遺言者や相続関係者が遺留分の存在を知らなかった場合、相続でトラブルになる可能性があります。そのため、相続時や遺言書作成時には遺留分の存在や計算方法を適切に理解し、遺言書作成時には遺留分に配慮し、遺言書執行時に遺留分権利者が権利を主張する可能性も考慮して遺言書作成をすることが重要です。

目次

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パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)

  • 国境なき医師団とは?
  • 遺贈寄付までの流れ
  • 公正証書遺言とその作り方
  • 自筆証書遺言とその書き方
  • 遺贈Q&A

1.遺留分とは

遺留分とは、一定の相続人に対して認められている、被相続人の遺産を最低限もらえる権利のことを指します。被相続人の遺族の生活を保障するために定められた制度で(民法第1042条)、被相続人の意思とは関係なく、被相続人の財産の一定の割合の金額を相続人が取得することができます。この権利を有している相続人を遺留分権利者と呼びます。
この遺留分権利者の範囲は、基本的には被相続人の配偶者、子ども、両親となります。この遺留分の侵害を伴う相続や遺贈を遺言書で行う場合、トラブルになることも考えられるので、これからご自身の相続をお考えになる際に注意すべきポイントです。

混同しやすい「法定相続分」との違い

遺留分と非常に混同しやすい言葉として、「法定相続分」があります。こちらの言葉の方がより一般的かもしれません。法定相続分とは、「法定相続人」に認められている被相続人の財産(遺産)を相続する割合の目安です。こちらも民法(第900条)で定められており、遺言書がなかった場合、相続人全員が話し合って遺産の配分を協議する「遺産分割協議」で遺産の分配の参考にするのが、法定相続分です。遺留分との一番の違いは「強制力」で、遺留分は遺留分権利者にとって強い権利ですが、法定相続分の法的な強制力はありません。

2.遺留分が認められる相続人の範囲は?

次に、遺留分が認められている相続人(遺留分権利者)の範囲をご説明します。
上でご説明したように、遺留分権利者の範囲は、基本的には被相続人の配偶者、子ども、両親となります。ただし、例外もあります。例えば孫です。基本的に孫は遺留分権利者ではありませんが、被相続人の子(孫の親)が既に亡くなっていた場合は、その子(孫)が代襲相続人として遺留分権利者になります。また、孫が被相続人の養子になっていた場合は遺留分権利者になります。ケースとしては少ないと思いますが被相続人の両親のどちらかが他界していて、その他界した側の祖父母のどちらかが存命であれば、存命の祖父母も直系尊属として遺留分権利者となります。

遺留分が認められない相続人の範囲は?

一方、同じ孫でも被相続人の子(孫の親)が存命であれば、その子である孫は遺留分権利者ではありません。また、被相続人の兄弟姉妹、叔父(伯父)叔母(伯母)、甥姪にも遺留分は認められていません。

3.遺留分の放棄は可能?

遺留分権利者の視点に立った話になりますが、遺留分の権利を行使しないことは可能です。この理由は、遺留分は義務ではなく、権利だからです。実際に遺留分を有する相続人(遺留分権利者)が自身の遺留分の権利を行使するかどうかは、権利者本人の意思となります。また遺留分を有する相続人は、相続の開始前(被相続人の存命中)に、家庭裁判所に対して遺留分放棄の申立て(家事審判申立書)を行い、許可を得ることによってあらかじめ遺留分を放棄することも可能です。一方遺留分放棄の意思がある場合でも、口頭や覚書、念書といったものは法的に有効ではありません。そして一度遺留分を放棄してしまうと、原則撤回はできません。ただし、遺留分を放棄したとしても相続人としての立場には変わりはなく、法定相続分には影響しません。

また、遺留分権利者が遺留分を失うこともあります。例えば、遺留分権利者が被相続人に対して虐待したり、侮辱したり、著しい非行行為があった場合に、被相続人が家庭裁判所に推定相続人の「廃除」を請求する(民法第892条)ことによって、遺留分権利者の相続権を奪うことができます。これにより相続人としての権利がなくなり、遺留分を受け取る権利もなくなります。被相続人は、「推定相続人の廃除の請求」のために「推定相続人廃除審判申立」の手続きを家庭裁判所で行う必要がありますが、被相続人が生前に行うこともできますし(生前廃除)、あらかじめ廃除の旨を遺言書に記載しておき、遺言執行者に相続開始後に排除の請求を行ってもらうこともできます(遺言廃除)。
ただし、廃除された方に子がいた場合は代襲相続人として遺留分権利者となります。

4.遺留分侵害と遺贈の順序は?

遺留分侵害の対象となる法律行為には、遺留分を考慮せず特定の相続人に相続させた遺言(特定財産承継遺言)、遺贈、死因贈与、生前贈与などがあります。 遺留分の侵害があった場合は、特定財産承継遺言や遺贈、死因贈与、生前贈与の順番で受遺者や受贈者が侵害された遺留分の支払い義務を負うことになります。特定財産承継遺言や遺贈を減殺しても遺留分が回復できていない場合には、下位の死因贈与で減殺し、それでも回復できなければ生前贈与で減殺します。したがって、例えば遺留分を侵害した遺贈がある場合は、遺贈された財産が遺留分侵害額請求の最初の対象となり、受遺者がその侵害額を負担することになります。

同順位の法律行為が複数ある場合は?

上で遺留分侵害額請求の対象には順番があると述べましたが、では、同順位の法律行為が複数あるとき、例えば複数の遺贈先(受遺者)がいた場合や相続人に対して特定財産承継遺言があった場合はどうなるのでしょうか? 民法第1047条第1項には、遺言者の別段の意思表示がないときは、(遺贈または贈与の)目的の価額の割合に応じて負担するとされています(民法第1047条第1項)。そのため、遺言者が遺言書上で特に指定をしていなければ、遺贈も特定財産承継遺言による相続も同順位なので、引き継がれる財産の価値の割合に応じて負担することになります。

受贈者が無資力の場合はどうなる?

受遺者または受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する(民法1047条4項)となっています。つまり、遺留分を請求する対象者が無資力であった場合は、他の受遺者や相続人に請求することはできず、結果的に遺留分権利者の不利益となります。

遺留分を侵害された場合はどうなる?

では、実際に遺留分が侵害された場合の具体的な流れを見ていきましょう。
ここでは遺留分権利者の視点でご説明します。
遺留分権利者が自身の遺留分が侵害されたことを認識し遺留分を請求する際の手順は以下のようになります。
まずは、①他の相続人や受遺者・受贈者との話し合いです。この段階で所定の遺留分の支払いに対する合意が取れれば合意書などを作成し、自身の遺留分に対する支払いを受けて終わりです。次に①で合意に達しなかった場合は、②内容証明郵便を使用して「遺留分侵害額請求書」を送るのが一般的です。遺留分侵害額請求には時効がありますので、期間内に請求することが必要です。この時効を止めるためにも内容証明郵便の日付と遺留分侵害額請求書を相続人や受遺者に送付します。仮に請求書を送付した時点が遺言執行中であれば、遺言執行者を通じて遺留分が確保され、遺留分権利者に支払われることがほとんどだと思われます。
ちなみに遺留分侵害に対しての請求は、2018年の相続法の改正以前は「遺留分減殺請求」と呼ばれ、「相続財産そのもの」に対する侵害額相当の物的権利を請求できました。これが法改正を経て「共有物の分割や財産処分」などの手順を経ずに、遺留分侵害額に相当する「金銭」の請求が可能となりました。
遺留分侵害額の請求について当事者間で話し合いがつかない場合や話し合いができない場合には、家庭裁判所の調停手続を利用(③遺留分侵害額請求調停)し、調停により当事者間での合意に達すれば遺留分が支払われることになります。
③の調停によっても合意に達しなかった場合は最終的に地方裁判所で④遺留分侵害額請求訴訟を起こすことになります。この訴訟で遺留分権利者の訴えが認められれば裁判所が相手方に対して遺留分侵害額の支払い命令を出すことになります。

ただ、上述のように遺留分を請求する遺留分侵害額請求には時効がありますので、注意が必要です。
まず、相続の開始と遺留分侵害額の事実を知ってから「1年以内」に遺留分を請求する必要があります。自身の両親や配偶者と疎遠であったり、遠方にいて相続開始の事実を直接知らされなかったりした場合も、遺言書が残されその遺言執行者が選任されていれば遺言執行者から相続開始の事実が知らされます。また、遺留分権利者の行方が不明で、遺留分権利者が相続開始の事実を知ることなく相続開始から10年間がたつと「除籍期間」を迎え、遺留分の請求はできなくなります。

5.遺留分の割合と計算方法とは?

では、実際に遺留分の計算はどのように行われるのでしょうか?
遺留分の計算方法は2段階あります
まず、遺留分権利者である相続人の全員が有している遺留分の合計額を計算します。これを「総体的遺留分」といいます。その上で各遺留分権利者が個別に有する遺留分の割合である「個別的遺留分」を算出します。

総体的遺留分

遺留分権利者である相続人に認められる遺留分の全体額(総体的遺留分)は、①遺留分権利者が直系尊属のみの法定相続人である場合と、②直系尊属以外にも配偶者や子どもがいる場合とで異なります(民法第1042条)。

①の場合は相続財産の3分の1が、②の場合は2分の1が総体的遺留分となります。
例えば被相続人の財産が6000万円だった場合、遺留分権利者が被相続人の直系尊属のみであった場合は3分の1である2000万円が総体的遺留分となります。また被相続人に配偶者や子がいた場合は2分の1である3000万円が総体的遺留分となります。

個別的遺留分

個別的遺留分は、 総体的遺留分によって算出された金額に、各遺留分権利者がもつ法定相続分を乗じて計算します。下の図は被相続人の遺留分権利者の組み合わせと、その各遺留分権利者がもつ個別的遺留分となります(参考として7番で兄弟姉妹のみのケースを示していますが、説明にある通り兄弟姉妹には遺留分がありません)。

 国境なき医師団日本『遺贈寄付パンフレット』

6.遺留分の具体例を紹介

では、遺留分侵害の具体的なケースを見ていきましょう。
ここでは①遺留分権利者が配偶者と子ども1名だった場合と②遺留分権利者が被相続人の子ども2名だった場合を例に挙げます。

具体例① 遺留分権利者が配偶者と子ども1名だった場合

被相続人(亡くなられた方)に配偶者と長男がいた場合で、被相続人のご遺産が3000万円だった場合のケースを見てみましょう。被相続人の両親は既に他界している前提です。
このケースですと、上の図の2番に該当し、総体的遺留分が3000万円の2分の1である1500万円となります。また、配偶者と長男の法定相続分(配偶者:2分の1、子ども:2分の1)を乗じた各750万円が配偶者と長男の個別的遺留分となります。
そして3000万円のうち遺留分のかからない1500万円が第三者への遺贈や寄付などに使える金額となります。

具体例② 遺留分権利者が被相続人の子ども2名だった場合

既にお父様が他界されていて、お母様が亡くなった際に資産2000万円が残されたケースを見てみましょう。この場合は上の図の5番に該当し、総体的遺留分は資産の2分の1である1000万円となります。この1000万円を子ども2名で分けますので、500万円ずつが個別的遺留分となります。

7.まとめ

ここまで説明してきた通り、遺留分は遺留分権利者にとって非常に強い権利です。遺留分の請求をされた場合は基本的には請求に応じることになりますので、ご自身の相続や遺贈を考える際には、遺留分に留意しながら相続の準備をされることをおすすめします。また必要に応じて相続に詳しい法律の専門家にも相談するとよいでしょう。
ただ、ご自身の想いで遺留分の侵害を伴う相続や遺贈を遺言書で指定することは、もちろん可能です。その際は、遺言書上になぜ遺留分を侵害した財産の配分を決めたのかの理由を記載しておくこともおすすめします。
また遺留分を侵害する可能性がある状態で遺贈や寄付を検討している場合であれば、事前に受遺者や寄付団体にその旨を伝え、確認をとっておいた方がよいでしょう。

8.遺贈寄付に関するご相談

遺贈寄付の手続きは、誰にとってもはじめての体験。でも、相談できる人が身近にいない、という声も聞かれます。「国境なき医師団遺贈寄付ご相談窓口」には、幅広い知識と経験豊富な専任のスタッフがいます。遺言書の書き方から手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。

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監修者情報

三浦 美樹 司法書士 (一社)日本承継寄付協会新規ウィンドウで開く 代表理事 司法書士法人東京さくら新規ウィンドウで開く 代表

司法書士開業当初から、相続の専門家として多くの相続の支援を行う。誰もが最後の想いを残せる少額からの遺贈寄付にも力をいれている。

平成19年 司法書士試験合格
平成23年 チェスター司法書士事務所を開業
平成29年 さくら本郷司法書士事務所に名称変更
令和元年 一般社団法人承継寄付協会設立 代表理事就任
令和2年 司法書士法人東京さくらとして法人化