遺言書の書き方 例文と注意事項
更新日:2026年6月25日
監修者:庄田和樹(司法書士・土地家屋調査士・行政書士 司法書士法人 土地家屋調査士法人 行政書士法人 神楽坂法務合同事務所 代表 ウィルサポート株式会社 代表取締役)
遺贈寄付をするには、法的に有効な遺言書を作成していただく必要があります。
遺言とは、自分が生涯をかけて築き、かつ守ってきた大切な財産を、希望に沿った形で引き継ぐために行う、遺言者本人による意思表示です。
遺言書には、自分で書く「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」の2種類がありますが、国境なき医師団では、法的な不備が起きにくいという観点から、公正証書遺言をおすすめしています。
また、もし自筆証書遺言を選択される場合は、不備のないように留意し、作成された上で、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用することをおすすめします。
大切な思いを叶えるためには、実際どのような遺言書を作成すればよいのか、具体的に見ていきましょう。
目次
遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。
パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)
- 国境なき医師団とは?
- 遺贈寄付までの流れ
- 公正証書遺言とその作り方
- 自筆証書遺言とその書き方
- 遺贈Q&A
国境なき医師団の遺贈寄付の詳細
- 国境なき医師団の活動内容
- 遺贈寄付で実現できること
- 遺贈寄付者の声
1.遺言書の作成を推奨するケース
遺言書はご自身の思いを遺す大切な文書です。ご自身が希望する形で財産が受け継がれていくように、元気なうちに遺言書を作成しておくことをおすすめしています。
- 相続人がいない方
配偶者、子(亡くなっている場合には孫)、親(亡くなっている場合には祖父母)、兄弟姉妹(亡くなっている場合には甥姪)が全ていない場合、相続人不存在となります。この場合、相続財産管理人が選任され、債権者への弁済を行った後、家庭裁判所が認めた特別縁故者(内縁関係にあったパートナーなど)(※1)に財産が分与されることがあります。なお、特別縁故者もいない場合には、最終的に財産は国庫に帰属します。「自分の財産の行方は自分で決めたい」という思いから、遺言によって法定相続人以外の人や団体に財産を遺す「遺贈寄付」を選択される方もいます。
- お子様のいないご夫婦
法定相続人の第1順位は被相続人(死亡した方)のお子様ですが、お子様がいない場合には、被相続人の父母・祖父母、その次に兄弟姉妹(亡くなっている場合には甥姪)の順で法定相続人となります(※2)。お子様がいないご夫婦の場合、遺言書を作成して財産の受け継ぎ方を明確にしておくことで、相続をめぐるトラブルが起こるリスクを回避できる可能性があります。また「子どもに受け継ぐ代わりに、未来の社会のためになれば」という思いから、社会的な活動を行う団体などに遺贈寄付をされる方がいます。
- 不動産を保有している方
今後の使い道が決まっていない建物や土地を保有している場合は、社会的な活動を行う団体に遺贈寄付するという選択肢もあります。
国境なき医師団では、原則として不動産を換価いただいた上での寄付をお願いしていますが、一定の条件のもとで不動産の遺贈寄付もお受けしています(※3)。
- 財産を医療や人道援助など社会的な活動に役立てたい方
自分の人生や今後の社会について考えた時に「自分の財産を次の命を守るために使いたい」とお考えになる方も増えています。国境なき医師団の「遺贈寄付ご相談窓口」では、専任のスタッフが遺贈寄付に関する相談をお受けしています。
2.遺言書の種類と作成方法
遺言書には、大きく分けて、遺言者が自分で書く「自筆証書遺言」と、公証役場で公証人が作成する「公正証書遺言」の2種類があります。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、ご自分にあった遺言書の種類を選びましょう。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言の全文、日付、氏名を自分で手書きして、押印をする遺言書です。自筆証書遺言に添付する財産目録については、自書でなくてもかまいませんが、財産目録の全てのページに遺言者の署名押印が必要となります。ペンと紙があれば思い立った時に気軽に作成でき、費用もかかりません。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言者が公証人に伝えた遺言の内容にもとづいて公証人が作成し、内容が確定した後、遺言者が公証人と証人2人以上の面前で遺言の内容を改めて口頭で告げ、完成させる遺言書です。法的な不備が起こりにくく、遺言書の作成と保管を一貫して任せられる一方、手数料がかかります。
公証人は裁判官、検察官、弁護士などの法律実務の経験豊かな人のなかから選ばれ、法務大臣が任命する公務員です。公証人が執務する事務所を公証役場といいます。
- ※1病気などで遺言者が公証役場へ赴くことが難しい場合は、公証人に自宅や病院へ出張してもらうこともできます。
-
※209 手数料 | 自筆証書遺言書保管制度
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※312 手数料 | 日本公証人連合会
自筆証書遺言の記載例
3.自筆証書遺言のパターン別作成例
ここでは架空の事例にもとづいて、遺言書の作成例をご紹介します。
相続人がいない方
前述のように、相続人がいない場合、相続財産はまず債権者に弁済され、その後、家庭裁判所が認めた特別縁故者に分与され、残った財産があれば国庫に帰属します。自分の意思で財産の使い道を決めたいと考え、遺贈寄付を選択される方もいます。
70代女性・H様のケース
- <現在の状況>
- 夫はすでに亡くなっている
- 子どもや兄弟がいないため、財産を受け継ぐ人はいない
- 亡くなった夫から相続した預貯金と自宅を保有している
- <思い>
- 相続人が誰もいないと財産が国庫に帰属すると聞いた
- これまで築いた財産が国庫に帰属するのはなんだか釈然としない。より社会への貢献度が高い団体等に寄付することを考えている
- <今後の方針>
- 財産を非営利団体に遺贈するため、遺言書を作成する
- 相続人がいないため、全財産を換価し、そこから諸費用を除いた残金の全額を寄付する「包括遺贈」を行うための遺言内容とする
お子様のいないご夫婦
子どもがいない場合は配偶者や兄弟姉妹が相続人になります。遺言書で財産の分け方を指定しておくことで、できるだけスムーズに財産が引き継がれるようにする方もいらっしゃいます。また「子どもがいない代わりに、未来の子どもたちのための活動に使ってほしい」と考えるケースも増えています。
70代男性・T様のケース
- <現在の状況>
- 妻と2人暮らし、子どもはいない
- 兄がいたが既に亡くなっており、その子ども(姪)がいる
- 預貯金と自宅を保有している
- <思い>
- 妻と姪に遺産分割協議の負担をかけたくない
- 妻に財産を遺したいが、妻も高齢なので万が一のことを考える必要がある。しかし姪に全財産を遺すほどの関係性ではない
- 子どもがいないので、未来の子どものために財産を使ってほしい
- <今後の方針>
- 妻に全財産を相続するための遺言書を作成する
- 妻が先に亡くなった場合には、全財産を換価し、そこから諸費用を除いた残金を非営利団体に遺贈する
不動産を保有している方
国境なき医師団では、不動産の遺贈寄付もお受けしています。基本的に不動産を売却し、現金に換えてから遺贈いただくようにお願いしていますが、一定の条件のもとで現物のまま遺贈いただくことも可能です。詳しくは国境なき医師団の「遺贈寄付ご相談窓口」にご相談ください。
80代女性・K様のケース
- <現在の状況>
- 夫と2人暮らし、子どもはいない
- 離れて暮らす弟がいる
- 預貯金と自宅を保有している
- <思い>
- 夫が先に亡くなると自宅を相続することになるので不安だ
- 自分の死後、自宅を弟に遺すことは難しい
- <今後の方針>
- 国境なき医師団に自宅の不動産を寄付する遺言書を作成する
- 預貯金は弟に相続させる内容とする
- 葬儀などについては弟に頼みたい
財産を医療や人道援助など社会的な活動に役立てたい方
近年の世界情勢などを踏まえ、「自分の財産を医療活動などに使ってほしい」と考える方もいらっしゃいます。
60代女性・N様のケース
- <現在の状況>
- 独身で一人暮らし
- 離れて暮らす両親がいる
- 保有財産は預貯金
- <思い>
- 遺言書を書くのは早いかもしれないが、万が一の時のために準備しておきたい
- 自分の財産は社会のためになる活動に使ってほしい
- <今後の方針>
- 預貯金を両親に4分の1ずつ相続させ、残りは国境なき医師団に遺贈する遺言書を作成する
4.遺言書作成時の注意点・必要書類
自筆証書遺言を書く際の注意点
所有する財産に関する必要書類を集める
財産の種類を明らかにするため、関連する書類を集めます。財産を特定するための重要な情報ですので、記憶に頼らず、書類を手元に揃えて確認しましょう。
必要な書類は所有する財産の種類によっても異なりますが、主な例として以下のようなものが挙げられます。
- 預貯金通帳、取引明細書
- 生命保険証書
- 不動産の登記簿(全部事項証明書)
- 証券会社やFX会社、仮想通貨交換所の取引資料
- ゴルフ会員権の証書
- 動産の明細書(骨董品や絵画など)
相続させたい人、遺贈したい人や団体に関する情報を集める
死後に財産を譲りたい人や団体をリストアップします。
譲りたい人が法定相続人(民法で定められている相続人となる人)の場合は「相続させる」といい、それ以外の人や団体の場合は「遺贈する」といいます。
誰に相続、あるいは遺贈したいかによって、遺言書に記載する内容が以下のように少しずつ異なりますので、該当する情報を調べて、メモを作っておきましょう。
-
(1)
譲りたい(相続させたい)人が法定相続人の場合:「遺言者との間柄」、「氏名」、「生年月日」。(例えば「妻 〇〇〇〇(昭和X年X月X日生)」)。
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(2)
譲りたい(相続させたい、または遺贈したい)人が孫の場合:「遺言者との間柄」、「氏名」、「生年月日」。(例えば「孫(長女△△△△の子)〇〇〇〇(令和X年X月X日生)」)。
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(3)
譲りたい(遺贈したい)人が法人または団体の場合:「正式名称」、「所在地」、「法人番号」(例えば「特定非営利活動法人 XXXXXXX」、「東京都XX区XXX町Y番地Y号」、「会社法人等番号〇〇〇〇〇」)
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(4)
譲りたい(遺贈したい)人が個人(自然人)の場合:「氏名」、「住所」、「生年月日」。(例えば「〇〇〇〇」、「東京都千代田区X町Y番地」、「昭和X年X月X日生」)。
相続内容、遺贈内容を明確にする
財産を誰にどのくらい相続させたい(または遺贈したい)のか、明確に記載しましょう。
例えば、銀行口座に預けてある預貯金を相続させたい(または遺贈したい)場合には、相続させたい(または遺贈したい)人の名前とともに「○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○」などと具体的に記載します。
相続させたい(または遺贈したい)ものが不動産であれば、所在や構造、床面積などの情報を記載します。
また、その他の財産が出てきた時にトラブルになることを防ぐため、「上記に記載のない財産は、全て○○○○に取得させる」といった文言を入れてもよいでしょう。
なお、諸経費や遺言執行者に対する報酬及び遺言者の債務・負担のための資金が必要になります。遺産でまかなうのか、別途用意してもらうのかについても明記しましょう。
財産目録はパソコンでの作成も可能
遺言書には、どのような財産があるのかを示す書類である「財産目録」を添付します。自筆証書遺言は財産目録のみパソコンで作成したり、他人に代筆してもらったりすることが可能です。資産・負債の内容や、その合計額を一覧にして記載しましょう。
また、財産目録は預貯金の通帳の写しや、不動産の登記簿(全部事項証明書)といった資料で代用できます。なお、パソコンで作成した財産目録や、代用する資料には、全てのページに署名と押印が必要です。
遺言執行者を指定する
遺言は遺言者が亡くなってから効力を発揮するものであるため、遺言書に記載した内容を自ら実行することはできません。そのため「遺言執行者」を決めて、自分の代わりに遺言を執行してもらいます。
遺言執行者は必ず指定しなくてはならないわけではありませんが、遺言の内容をスムーズに執行するために、遺言書に記載しておくとよいでしょう。遺言書には「遺言の実現のために、遺言執行者として次の者を指定する」などと記載し、指定したい人の氏名や住所などを併記することが一般的です。
遺言を訂正する方法
訂正のやり方は民法で定められており、①遺言者自身によりなされること②変更の場所を指示して変更した旨を付記すること③付記部分に署名すること④変更の場所に押印すること、となっています(民法第968条2項)。
具体的には、削除したい箇所に二重線を引き、正しい文言を横書きの場合は訂正箇所の上部に、縦書きの場合はその横に書き、訂正印を二重線の近くに押します。そして、遺言書の末尾、あるいは削除箇所の近くに削除した内容を書き、署名します。
修正テープを使ってはいけません。また、署名と押印を忘れないよう注意しましょう。
公正証書遺言の作成に必要な書類
基本的には以下の書類となりますが、最初の相談時に全てが必要というわけではありません。詳しくは、ご相談先の公証役場にお問い合わせください。
1. 遺言者本人の確認資料
原則として、印鑑証明書と実印は必ずお持ちください。
2. 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本
相続人が甥、姪など、その本人の戸籍謄本だけでは遺言者との続柄が不明の場合は、その続柄がわかる戸籍謄本もお持ちください。
3. 受遺者の住民票
遺言者の財産を相続人以外の者に遺贈する場合は、その受遺者の戸籍謄本ではなく住民票をお持ちください。なお、受遺者が法人の場合は、その法人の登記簿謄本をお持ちください。公に認知されている公益団体の場合は、不要です。
4. 固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書
遺言者の財産に不動産が含まれている場合にお持ちください。
5. 不動産の登記簿謄本
公正証書遺言に、不動産の所在・地番等不動産を特定する事項を記載するために必要です。遺言者の財産に不動産が含まれていない場合や、遺言書で不動産の特定をしない場合は、不要です。
6. 証人の確認資料
公正証書遺言を作成する場合、その場に立ち会う証人2人以上が必要ですので、その方の、住所、職業、氏名、生年月日がわかる資料を公証役場へお持ちください。
この証人は、誰でもなれるわけではなく、推定相続人、受遺者とそれぞれの配偶者、直系血族などの利害関係のある人や未成年者は証人になれません。適当な証人がいない場合は、公証役場で証人を手配することもできますので、公証役場にご相談ください。
7. 遺言執行者の特定資料
遺言執行者を指定する場合には、遺言書に記載する必要があります。相続人または受遺者が遺言執行者になる場合は追加の特定資料は不要ですが、それ以外の方を遺言執行者とする場合は、その方の住所、職業、氏名、生年月日がわかる資料をお持ちください。
公証人手数料(全国共通)
| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3000円 |
| 50万円を超え100万円以下 | 5000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 1万3000円 |
| 500万円を超え1000万円以下 | 2万円 |
| 1000万円を超え3000万円以下 | 2万6000円 |
| 3000万円を超え5000万円以下 | 3万3000円 |
| 5000万円を超え1億円以下 | 4万9000円 |
| 1億円を超え3億円以下 | 4万9000円に超過額5000万円までごとに1万5000円を加算した額 |
| 3億円を超え10億円以下 | 10万9000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
| 10億円を超える場合 | 29万1000円に超過額5000万円までごとに9000円を加算した額 |
- ※2025年10月1日改正。最新の金額は日本公証人連合会HPでご確認ください。 上記の財産額の基準を遺贈を受ける人ごとに算出し、その他遺産の額による加算、正本・謄本代などを加えて手数料が算出されます。
5.まとめ
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。また、自筆証書遺言は法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合と利用しない場合、どちらを選択するかによって手続きの方法などが異なります。
遺言書は法律によって細かく要件が定められているため、本コラムで指摘したポイントに注意する他、要件を満たしていないとせっかく作成した遺言書が無効になってしまう可能性もあります。できるだけ専門家に相談したり、自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言もしくは公正証書遺言を選択したりして、慎重に作成されることをおすすめします。
遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。
パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)
- 国境なき医師団とは?
- 遺贈寄付までの流れ
- 公正証書遺言とその作り方
- 自筆証書遺言とその書き方
- 遺贈Q&A
6.遺贈寄付に関するご相談
遺贈寄付の手続きは、誰にとっても初めての体験。でも、相談できる人が身近にいない、という声も聴かれます。「国境なき医師団 遺贈寄付ご相談窓口」には、幅広い知識と相談経験豊富な専任のスタッフがいます。遺言書の書き方から、手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。
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庄田和樹 司法書士・土地家屋調査士・行政書士 司法書士法人 土地家屋調査士法人 行政書士法人 神楽坂法務合同事務所 代表 ウィルサポート株式会社 代表取締役
信託銀行、司法書士法人勤務を経て独立。司法書士、土地家屋調査士、行政書士として相続等の問題の解決に注力するとともに、株式会社 遺言執行社を設立し、遺言書作成サポート、死後事務委任契約をはじめとする専門的なサービスを提供している。