イベント報告

【イベント報告】国境なき医師団インターナショナル会長 来日記念講演

2023年07月24日

国境なき医師団(MSF)は、MSFインターナショナル会長のクリストス・クリストゥの来日を記念し、会長とMSF日本事務局長の村田慎二郎による講演会を開催しました。講演会は、難民や移民の人びとが置かれた状況や医療ニーズについて紹介する「エンドレスジャーニー展・広島~終わらせたい、強いられた旅路~」会期初日の7月3日(月)に、広島市立大学(共催)およびオンラインで行われ、合わせて170人が参加しました。

トークイベントのアーカイブ動画(再生時間:1時間33分)
広島市立大学で開催 © MSF
広島市立大学で開催 © MSF
クリストゥ会長からは、MSFが世界各地で医療・人道援助活動を行っている国際NGOであり、独立・中立・公平を活動原則としていること、中でも9割以上を民間からの寄付に支えられている資金の独立性により、いかなる勢力からも影響を受けず、ただ医療ニーズに基づいた活動が担保されていることが紹介されました。

続いて外科医でもある同会長は、各地での医療活動体験を共有したほか、紛争地における医療への攻撃について触れました。講演前日に村田と共に広島平和記念資料館を訪れた会長は、78年前、広島に落とされた原子爆弾がまさに医療施設の真上で爆発したこと、おびただしい数の民間人が犠牲になったこと、医療への攻撃の問題が今も世界各地で続いている現実にも触れ、いかなる理由があっても民間人が犠牲になることは許されず、私たちは国境を越え連帯してこの問題に立ち向かっていく必要があると、学生へ向けた力強いメッセージで締めくくりました。
広島を訪問したクリストゥ会長(右)と村田事務局長(左) © MSF
広島を訪問したクリストゥ会長(右)と村田事務局長(左) © MSF
事務局長の村田からはMSF日本の活動紹介に続き、非医療職の現地活動責任者として紛争地でMSFの援助活動にあたった体験が紹介されました。医療活動と並ぶMSFの大きな使命である証言活動の意義に触れ、人道危機の悲惨な現実について声を上げるのはどのような時かということがエピソードを交えて話されました。

そして学生時代からこれまでのキャリアを振り返り、父親が呉市出身で自身も広島にゆかりがあること、広島ゆえに世界に向けて力強く発することができるとの人道援助への思いに触れ、個人としての成功よりもはるかに大事なもののために、自分の命を大きく使ってほしいと学生たちに向けて力強く語りました。
 
続く質疑応答では、報道されない人道危機の中でもっと注目されるべき危機にはどのようなものがあるのか、MSFがどう対応しているのかなど時間ぎりぎりまで多くの質問が続き、参加者の関心の高さをうかがわせました。

登壇者プロフィール

MSFインターナショナル会長 クリストス・クリストゥ

ギリシャ出身。同国テッサロニキのアリストテレス大学医学部を卒業し、国立カポディストリアコス・アテネ大学で外科博士号を取得。またアテネ大学で国際保健・健康危機領域の修士号を取得したほか、教授を務めた。その後、エヴァンジェリズモス病院移植外科に勤務。2013 年には英国ロンドンに拠点を移してキングス・カレッジ病院、ノース・ミドルセックス大学病院に勤務。
クリストゥ医師は2002 年より国境なき医師団(MSF) に参加し、以来、人道危機の現場で多くの職務を経験。最初の派遣地ギリシャでは、移民と難民の診療に当たり、2004 年と2005 年にはザンビアのHIV/エイズプロジェクトで活動した。その後、活動を休止して数年間、外科医として研鑽を積み、2013 年からは南スーダン、イラク、カメルーンなど多くの紛争地などで救急外科医として活動してきた。現職に選出される以前は、2005 年よりMSF ギリシャ事務局の初代事務局長を務め、以降、同副会長、同会長を歴任した。
© MSF
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MSF日本事務局長 村田慎二郎

三重県出身。静岡大学を卒業後、外資系IT 企業での営業職を経て、2005 年にMSFに参加。現地の医療活動を支える物資輸送や水の確保などを行うロジスティシャンや事務職であるアドミニストレーターとして経験を積む。2012 年、派遣国の全プロジェクトを指揮する「活動責任者」に日本人で初めて任命され、援助活動に関する国レベルでの交渉などに従事。以来のべ10 年以上を派遣地で過ごし、特にシリア、南スーダン、イエメンなどの紛争地の活動が長い。2019 年夏より、紛争地で人道援助が必要な人たちの医療へのアクセスを回復するために医療への攻撃を止めさせるアドボカシー戦略を練るためHarvard Kennedy School(ハーバード・ケネディスクール)に留学。授業料の全額奨学金をJohn F. Kennedy Fellow(ジョン・F・ケネディフェロー)として獲得し、行政学修士(Master in Public Administration=MPA)を取得した。2020年より現職。
© Elizabeth Costa/MSF
© Elizabeth Costa/MSF

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