戦闘が続くスーダン、「通路も患者であふれている」──国内各地のスタッフからの声

2023年05月01日
医療物資を車両に積み込む(ハルツーム) © MSF
医療物資を車両に積み込む(ハルツーム) © MSF

スーダンでは4月15日以降、国内各地でスーダン軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘が続いている。

国境なき医師団(MSF)は、国内での医療援助活動を継続。北ダルフール州では病院で多数の負傷者を受け入れ、首都ハルツームでは医療施設に物資を提供している。しかし、西ダルフールでは略奪の被害も──。現地から医師やスタッフが伝える。

【北ダルフール州】病院のベッドを3倍に増やしても足りず

北ダルフール州の州都エル・ファシールの支援先病院では、4月15日以降、400人以上の負傷者を受け入れた。この地域で稼働する唯一の病院として多くの患者が訪れ、24時間体制でケアに当たっている。「ベッドを36床から108床に増やしても足りない。通路も患者であふれている」とプロジェクト・コーディネーターのモハメド・ギブリル・アダムが語った。

【首都ハルツーム】空爆、避難……医療施設に物資を提供

ハルツームではこれまでに、負傷者の対応に当たっている3つの医療施設に物資を提供した。スーダンの活動責任者であるガザリー・バビカー医師が、その際の様子を次のように語った。

「私のチームは今日、道路などの状況を調べ、複数の病院への経路を確保したいと考えていました。私たちの倉庫に物資を引き取りに来た保健省チームに相乗りして、同行するつもりだったんです。物資は渡せたものの、図らずも近隣で戦闘が激しくなり、空爆まで起こりました。そのためまずは避難して、同行は状況が完全に明らかになるまで延期せざるを得ませんでした。
 
その後は、ハルツーム周辺の病院1カ所へ物資を寄贈しました。『トルコ病院』と呼ばれる病院です。トルコ病院は、戦線付近の病院の多くが閉鎖されたり業務を停止したりして保健医療が崩壊の瀬戸際にある中で、民間人や負傷者を受け入れてきた病院の1つです。ハルツームの都心の南に残る病院として、最低限の受入態勢を維持し、負傷者の治療に当たっています。そこで、支援先に決めたわけです。

トルコ病院の前には、マムーラ地区の出張施設に物資を提供し、『バシャイル病院』という病院も支援しています。私たちはこれからも、この困難な状況の中で、保健省やスーダン市民との協力体制を維持していきます。危険は承知しています。危険を冒すことにはなりますが、それによって、この混乱の中で人命を救うことができるのです」

患者のケアに必要な物資を提供(ハルツーム) © MSF
患者のケアに必要な物資を提供(ハルツーム) © MSF

【西ダルフール州】支援先病院が略奪の被害に

西ダルフールの州都ジェネイナでは、MSFが支援するジェネイナ医学校附属病院が略奪の被害に遭った。病院のみならず、市場や人びとが避難しているキャンプも、略奪や破壊の対象になったと報告されている。
 
スーダン担当の副オペレーション・マネジャーを務めるシルバン・ペロンは、次のように語った。

「MSFは長年にわたって、西ダルフールで暴力の影響により医療を受けることができない人たちに援助を提供してきました。今回の戦闘で、私たちは西ダルフールでの活動のほとんどを停止せざるを得なくなりました。スタッフが病院にたどり着くことができないのです。いまも一部の病院での診療は続けていますが、危険が広がり、病院へ来られる患者さんの数は減っています。

西ダルフールにいる私たちのチームは、活動を安全に継続できるよう状況を注意深く見守っています。そして、増え続けるニーズに応えるため、援助活動の規模を拡大する準備ができています。 

MSFは全ての紛争当事者に、病院や診療所、倉庫、救急車を含むあらゆる医療施設とそのスタッフの安全が保証され、民間人や民間の施設が攻撃されることがないよう訴えています」

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