性暴力の危険にさらされる子どもたち SNSアプリで治療へ橋渡しを

2018年10月11日

自宅で2度も襲われ、腕と顔をけがしたアナさん (c) Christopher Rogel Blanquet/MSF自宅で2度も襲われ、腕と顔をけがしたアナさん (c) Christopher Rogel Blanquet/MSF

まだ15歳にもならない子どもたちが、性的虐待に遭っている場所がある。メキシコ南部ゲレロ州の観光地アカプルコ。国境なき医師団(MSF)が2016年から現在までにこの地で対応した性暴力392件のうち、40%以上が15歳未満の子どもに対するものだった。子どもたちが大きな危険に直面していることを受け、MSFはアカプルコで、性暴力被害に対する総合的な医療キャンペーン「SIVIS—きっと治る」を始めた。 

身体も心も、すぐにケアが必要

MSFはアカプルコで、性暴力の被害者に無償のケアを行っている (c) Christopher Rogel Blanquet/MSFMSFはアカプルコで、性暴力の被害者に無償のケアを行っている (c) Christopher Rogel Blanquet/MSF

MSFは2014年からアカプルコで医療援助を提供している。ここでは、15歳未満の子どもたちが10年以上にわたって性暴力にさらされていることが分かった。性的虐待や性暴力に苦しむ未成年に、医療と心理ケアが必要だ。そこでMSFは、ゲレロ州保健省との合意に基づき、15歳未満の子どもと全年齢層の男性を含めたすべての性暴力被害者に治療と心理ケアを提供する。被害を受けてから長い時間が経ってしまった人でも、ケアを受けられる。 

14歳のときにレイプされ妊娠したパスさんはMSFの治療を受け、出産後に学校へ戻った
(c) Christopher Rogel Blanquet/MSF
14歳のときにレイプされ妊娠したパスさんはMSFの治療を受け、出産後に学校へ戻った
(c) Christopher Rogel Blanquet/MSF

アカプルコでMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるヘスース・トロは、「これまで2年間、性暴力の被害者を援助してきたなかでわかってきたことがあります」と語る。「性暴力の被害は、早急に、また総合的に医療ケアを受けないと、心身ともに悪い影響が出ます。被害者はそれを知らず、すぐに治療を受けにこないのです。情報不足や、不信・偏見などの理由で被害者の受診が遅れ、健康を損なうこともあるのです」 

若者に人気のアプリが被害者と治療を橋渡し

地域のコミュニティー・センターで子どもたちに健康教育のセッションも行う
(c) Christopher Rogel Blanquet/MSF
地域のコミュニティー・センターで子どもたちに健康教育のセッションも行う
(c) Christopher Rogel Blanquet/MSF

新しいキャンペーンでは、SNSを使って被害者と医療を結びつける。フェイスブックのほか、LINEとよく似た人気のメッセージアプリ「WhatsApp」でコミュニケーションをとる。

トロは「治療が無償で、プライバシーも守られることを宣伝しながら、被害者と直接的なコミュニケーションをとることができます。患者が未成年の場合は、親や教職員、家族と親密なコミュニケーションをとり、詳細な情報を提供します。それによって、被害者との間に信頼感が生まれ、一歩踏み出して必要なケアを受けようと思うようになります」と語る。
 

子どもから大人まで、年齢に応じて社会心理学の専門家が性暴力被害者に対応する
(c) Christopher Rogel Blanquet/MSF子どもから大人まで、年齢に応じて社会心理学の専門家が性暴力被害者に対応する
(c) Christopher Rogel Blanquet/MSF

「また、このキャンペーンは性別や年齢に関わらず、全ての被害者を対象としています。性暴力の被害者は皆、安心を求めています。それは心と体の回復を進めるためなのです」


 

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