先の見えない避難生活「仮設にこもりきり」 心の支えは?

2018年09月14日掲載

丘が連なる巨大キャンプでは豪雨による地滑りも懸念される丘が連なる巨大キャンプでは豪雨による地滑りも懸念される

バングラデシュ南部コックスバザール県の丘陵地には、広大な難民キャンプが広がる。1年前の2017年8月25日、ミャンマー軍がイスラム系少数派ロヒンギャへの「掃討作戦」を展開し、70万人を超えるロヒンギャの人びとがやむなく隣国バングラデシュへ避難した。

国境なき医師団(MSF)の調査チームはキャンプ内を回り、感染症の流行などに関する疫学研究を進めている。チームリーダーのアナイス・ブロバンが、活動を通して出会った難民の窮状をつづった。 

コックスバザール県の丘陵地に設置されたクトゥパロン=バルカリ難民キャンプ。この地に身を寄せるロヒンギャ難民は多忙です。

地面が陥没しないように直す人、丘の勾配を削って階段を造る人、砂袋や土のうを積んで足場を作る人……。雨期ですから、あまり長持ちはしないでしょう。崩れたら、もっと土のうやレンガを探して足元を固めなければなりません。 

豪雨に備え、丘の斜面を補強する人びと豪雨に備え、丘の斜面を補強する人びと

外出も入浴も困難な生活

ロヒンギャ難民は少しでも生活環境を良くしようと頑張っています——まあ、できる限りではありますが……。バングラデシュ当局は難民が長くとどまることを想定しておらず、定住できるような家の建設は認められていません。

竹とビニールシートで建てられた仮設住居は、モンスーンの豪雨を防ぐには不十分です。コンクリート床の建物も中にはありますが、大半は土間です。急場しのぎの簡素な造りですが、当面はこの状態で居続けるほかありません。 

モンスーンの大雨で浸水した仮設住居モンスーンの大雨で浸水した仮設住居

住居の内部は手狭です。もう少しプライバシーがあれば良いのですが、どうしようもありません。仮設住居は密集して建てられており、竹で編まれた壁越しに生活音が筒抜けです。女性が人目を避けて体を洗える場所もほとんどありません。

丘の頂上や中腹に住む人びとは、きれいな水が出る井戸をなかなか利用できません。井戸は丘のふもとにあるからです。雨が降ると足元は滑りやすくなります。妊婦さんや、幼い子どもを抱えたお母さんがその道を上り下りする大変さが分かるでしょうか。雨のせいで外出もままならず、みんな仮設住居にこもりきりです。

バケツに汲んだ水を持ち帰る少女バケツに汲んだ水を持ち帰る少女

生まれた国の身分証がもらえない

難民が到着した当初は差し迫った状況で、懸命に仮設住居を建て、住まいを整えていました。それが今は、手持ち無沙汰の状態でやり過ごさなければなりません。

当分は帰国できる見込みがないと分かっている人もいます。ですが、大半の人から聞こえてくるのは「ミャンマーに戻りたい」という声です。実際、キャンプ内のボランティアに応募する際も、住所として申告するのはミャンマーの出身地。彼ら彼女らの心情を物語っています。 

性暴力について啓発するロヒンギャの現地ボランティア性暴力について啓発するロヒンギャの現地ボランティア

唯一の希望は故郷への帰還ですが、何が何でもというわけではありません。私たちと一緒に活動している現地ボランティアは「ミャンマーに戻ったら、一人前の国民として受け入れられたい。人権や安全を保証してもらいたい」と言っていました。

ロヒンギャの若い世代は身分証を一切持っていません。祖父母の身分証のコピーを誇らしげに見せてくれた人もいました。過去には証明書が存在し、ロヒンギャもミャンマー社会で居場所があったのだという証に——。 

クトゥパロン難民キャンプ内のMSF診療所で受診する男性患者クトゥパロン難民キャンプ内のMSF診療所で受診する男性患者

長引く避難生活。心のよりどころは……

ホームシックもあります。故郷を懐かしみ、ミャンマーとここの食べ物や物価などを比べています。以前の暮らしについて話す時には、胸が詰まって言葉が続かず、遠くを見つめることがよくありました。

イスラム教の断食月「ラマダン」の終わりを祝う連休「イード」の期間も、みんな悲しそうでした。自宅でイードを迎えられず、本来の祝い方もできないことが情けないのです。 

田んぼで魚やカニを捕るロヒンギャの父子。キャンプの食料配給は少なく、難民は自ら不足分を補おうとしている田んぼで魚やカニを捕るロヒンギャの父子。キャンプの食料配給は少なく、難民は自ら不足分を補おうとしている

気落ちして打ちひしがれているというより、平等な権利のために闘わざるを得ないという事実が重くのしかかっているのでしょう。

それでも、前に進むしかありません。彼らの人生はこの上なく過酷で、差別と暴力に苦しんできました。そのうえ、今は異国暮らし。ひたすら待ち続けています。 

難民キャンプ内の空き地でサッカーをして遊ぶ子どもたち難民キャンプ内の空き地でサッカーをして遊ぶ子どもたち

ただ、良い事もあります。まず思いつくのはサッカー。みんな大好きなんです。ワールドカップが開催された7月には、20タカ(約26円)を払える人はテレビのある喫茶店で試合を観戦していました。私のチームの現地ボランティアたちも、フランスが得点すると真夜中でも速報をくれました。私がフランス人なので……。フランス代表のユニフォームを注文した人までいます。私なんかより、よほど熱心なサポーターです! 

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