海外派遣スタッフ体験談

さまざまな出会いが一番の魅力 人と深く関わるMSFのアドミニストレーター

2022年07月14日

畑井 珠恵

職種
アドミニストレーター
活動地
パキスタン
活動期間
2021年5月~2022年5月

国際交流事業を行う一般財団法人のコーディネーター職を経て国境なき医師団(MSF)に参加。パキスタンのペシャワールで、財務・人事マネジャーとして、産科病院の運営と皮膚リーシュマニア症を扱うプロジェクトに従事。今回の派遣は看護師の夫と共に参加した。(写真・本人右)

驚きと学び ペシャワールでの活動

派遣されたのはパキスタン北西部に位置するペシャワール。MSFが長年取り組んでいる、出産と新生児ケアを行う産科病院と、皮膚リーシュマニア病の治療センターがあります。
 
MSFが運営する産科病院では、月に約600人の出産を扱っていました。出産数はデータでは理解していたものの、実際に現場で目にするとものすごい数です。通常出産は6時間、帝王切開でも2~3日で退院。それでもベッド数が足りないという現実に驚きました。

病院では1000グラムほどで生まれてくる赤ちゃんも。<br> 未熟児はしばらく入院し、手当を受ける Ⓒ MSF
病院では1000グラムほどで生まれてくる赤ちゃんも。
未熟児はしばらく入院し、手当を受ける Ⓒ MSF
皮膚リーシュマニア症の方は、MSFと連携して活動している医療機関が4カ所で活動を行っていました。皮膚リーシュマニア症とは、サシチョウバエが媒介し皮膚に大きな病変を起こす感染症で、世界で最も広範囲に見られるにも関わらず、最も無視されてきた「顧みられない熱帯病」(Neglected Tropical Diseases :NTDs)の一つです。

病院を訪れた際に一度、皮膚リーシュマニア症の少女が、注射による治療を受けている様子を見ることがありました。とても痛い治療だと聞いていたのですが、泣かずに注射を受けている彼女の姿から、早く治したいという強い意思が伝わり印象的でした。今回のプロジェクトがNTDsについて学ぶきっかけにもなりました。アドミニストレーターが病院を訪れることはあまりないのですが、現場を実際に見ることで、自分たちが何のために活動しているのかを改めて感じることができました。

かつての患者さんが、MSFの仕事に応募を

現場では財務・人事マネジャーとして、約300人の現地スタッフの人事と経理に関する業務を担当。給与の支払いから採用、人事・トラブル処理、予算管理、雇用契約の管理や研修計画の作成、さらにスタッフの給与支払いや患者さんの医療費支払いなど、多岐にわたります。

ペシャワールは、真夏の気温が45度になることも。<br> 外で勤務するスタッフのため、シンプルでエコな造りの<br> ウォータークーラーを設置 Ⓒ MSF
ペシャワールは、真夏の気温が45度になることも。
外で勤務するスタッフのため、シンプルでエコな造りの
ウォータークーラーを設置 Ⓒ MSF
月によって仕事の内容は大きく異なりますが、採用に関しては、毎月5、6件の異なる職種の採用活動があり、募集広告を出すと職種によっては200件以上の応募が来ることもありました。

採用面接の際には、本当にたくさんの現地の人びとと話す機会がありました。中でも印象深かったのは、応募してきた女性から「娘をこの病院で出産し、そのときの対応がとても良かったのでMSFで働きたいと思った」と言われたこと。いま娘さんは6歳になり、元気に成長していると教えてもらいました。MSFの活動の成果を見たように感じ、胸がいっぱいになりました。

長期の活動から見えてくるもの

今回の滞在はちょうど丸1年。長く現場にいると、問題があった時にもどこに原因があるのかが分かり、改善に取り組む場合も成果を見ることができます。長期的に関われるからこそ、「もっとこうするべきだよね」といった意見も自信を持って言えるようになります。

人間関係をしっかり構築した上で、仕事ができることも良かったです。特に、直属の部下だった現地採用スタッフの経理アシスタントは、きちんと真面目に仕事をする人で、「彼がいるからペシャワールの経理は心配ない」と言われていたほど。彼とは1年を通して信頼関係を築くことができ、私も彼がチェックした書類や経理の入力情報は安心して確認することができました。

信頼できるアドミンチームの仲間と。<br> 一緒に仕事ができ心強かった Ⓒ MSF
信頼できるアドミンチームの仲間と。
一緒に仕事ができ心強かった Ⓒ MSF
一方で彼は、「珠恵が厳しく見てくれると信頼していたから、僕はリラックスして仕事ができた」「10年間、MSFで仕事をしてきて、一番学ぶことが多い外国人派遣スタッフだった」と話してくれて、とてもうれしかったです。彼は8月から他の国のプロジェクトに派遣されることが決まっています。現地で採用されたスタッフが経験を積み、海外で活躍するチャンスがあるのもMSFの特徴です。いつかどこかの活動地で、彼とまた会えるのが楽しみです。

夫婦で活動に参加 これからの20年に向けて

今回は看護師の夫と同じ活動地・プロジェクトだったので、精神的な面でもよく助けてもらいました。ストレスを抱えそうになると、余計な心配事から意識を逸らすようにしてくれたり。夫婦で活動できることも、私がMSFに参加する理由の一つ。さまざまな活動地で、お互いにそれぞれの能力を生かした仕事に携われる環境が魅力です。

週末は指定されたレストランで食事を楽しむことも Ⓒ MSF
週末は指定されたレストランで食事を楽しむことも Ⓒ MSF
天職のように感じていた前職の国際交流事業のコーディネーターから、MSFの世界に飛び込みました。それは、自分自身も現場に入り、何か人の役に立つことをしたいと思ったから。これまでの20年間は、自分の居心地の良い、いわゆる“コンフォート・ゾーン”にいたように感じます。これからの20年はたくさん挑戦して、MSFで新しいキャリアを築いていきたい──。日本で生活していたらできない経験や会えない人たちとの出会いを大切に、活動を続けていきたいです。今回訪れるまでは、「パキスタン人」がどんな人たちなのか全然知りませんでした。でも、実際に会って話しをすることで、深く、彼らのことを知ることができました。MSFの活動を通して、世界中のさまざまな場所で、そのような経験ができたら面白いなと思っています。

現地では、料理や発酵食品作りを楽しんでいました。パキスタンは、野菜や果物など日本と同じような食材が手に入ったので、味噌や柿酢、キムチ、たくあんなどを自作。また、ベジタリアン餃子や巻き寿司を作って、スタッフにもふるまいました。

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