海外派遣スタッフ体験談

仕事を通して成長したい? ならば企業経験も生かし海外の援助現場で

2022年05月01日

越部 真

職種
ロジスティシャン(サプライ・マネジャー)
活動地
リベリア
活動期間
2021年7月~2022年2月

小学生の頃の国際交流プログラムや高校留学を通じて海外文化に親しむ。大学在学中はボランティアで子どもたちを2カ国へ引率した。物流企業に就職し4年ほど勤務した後、2021年国境なき医師団に参加。(写真:本人左から2番目。共に働いたチームメンバーと)

初の現場 意外だったのは…

国境なき医師団(MSF)の仕事というと、「道なき道を越え、難民キャンプに物資を届ける」みたいなイメージがあったんです。もちろん現場へ向かうときはそういう場面もありましたが、僕の役割は物資調達を行うチームのリーダー。1週間オフィスにこもりっきり、ということもよくありました。
 
派遣されたのは西アフリカの小国リベリア。MSFは首都モンロビアで、小児病院と5つの精神科クリニックを運営しています。そこへ物資を供給するため、調達や配布、在庫管理を3人の現地スタッフと共に行っていました。

新たにオープンした精神科クリニックを見学 © MSF
新たにオープンした精神科クリニックを見学 © MSF
驚いたのは書類仕事の多さ。ボールペン1本を支給するにも数枚の書類を作成し、関連部署でチェックするのです。紙に残して何重にも確認するのは、お金の流れの監査と透明性の確保ですよね。MSFが寄付金で成り立っているからこそ、こういう仕組みなのだろうと理解しました。

月末から月初にかけては、1カ月分の消耗品を一斉に発送するので忙しくなります。病院やクリニックは距離的にオフィスから近かったので、いざというときは直接会いに行ったり、緊急で物資を送ったりして、1時間~数時間以内に対応。いつも必要なものについては適正な在庫を保ち、プロジェクトが円滑に進むようバックアップするのも仕事のうちでした。

企業経験を生かして

多種多様な物資が置かれた倉庫を管理 © MSF
多種多様な物資が置かれた倉庫を管理 © MSF
活動現場の物流は、洗練されていない部分も見られました。例えば、着任早々行った棚卸しで、在庫と記録が合わない事態が発覚。そのため、在庫管理の仕方から改善していくことにしました。建築資材はここ、精神科のものはここ、という風に、置く位置を決めて定められた場所でものを保管する「定位置管理」をやり直したのです。
 
物流は国の動脈ともいわれ、モノがちゃんと運ばれなければ、経済が立ち行かなくなる。そんな社会インフラを支えているんだ、というのが前職でのやりがいでした。それに、物の管理方法を最大限効率化させるのは、個人的に面白さを感じるところ。そういう日本での企業経験が、MSFの現場で活かせたのかなと思います。
よく話をしていた運転手のスタッフから結婚式に招待された<br> © MSF
よく話をしていた運転手のスタッフから結婚式に招待された
© MSF
逆にMSFで海外の人と働いて学んだのは、壁にぶつかったとき、チームとしてどう乗り越えていくか、どんなメンタリティで仕事に臨むべきか……。外国人なので、現地スタッフの輪にすぐに溶け込めるわけではありません。しかも彼らは、初めて派遣された自分よりも長くこの組織で働いてきた先輩です。立場上は僕が上司であっても、当然ながら彼らの協力を得なければ何も進まないのです。
 
心がけたのは、何か決定をするときに彼らの意見を尊重すること。それと常に感謝を伝えながら仕事しました。どんな小さなことでも「ありがとう」と言ったり、雑談しながら彼らの文化について聞いたり。そういう些細な積み重ねで関係を構築していきました。

出会いから学んだこと

リベリア最後の夜、スタッフたちと © MSF
リベリア最後の夜、スタッフたちと © MSF
リベリアは、1989年末から2000年代にかけて内戦が2度あった国です。チームメンバーに、内戦で隣国ギニアへ避難したという人がいました。難民キャンプの学校に通って、現地の公用語であるフランス語を習得し、その甲斐あってギニアで仕事も得られたそうです。終戦後は帰国し、紆余曲折を経てMSFで働き始めたのですが、素晴らしい人材でした。スタッフの中で彼以上に仕事に対して真摯で、向上心もある人はいないと思えるほど。彼から、難しい環境でも努力を忘れない大切さを教わりました。
 
実は僕がMSFに参加した一番の動機は、自分の知りたい欲求を満たしたり、自分が成長したりするためであったりします。でもその過程で、さまざまな人の命を救えたり、生活を良くしたりすることができる。自分が成長できて、他の人も助けられる──そんなやりがいがある仕事だと思っています。

着任直後、モンロビアの大通りが日本の支援により整備されて開通。オフィスから小児病院まで、かつては1時間以上かかることもあったところを30分程度で行き来できるように。日本から来たというだけで現地スタッフからよくお礼を言われました!

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