海外派遣スタッフ体験談

想像と違ったケニアの活動で新たな学び:アサニ美里

2018年10月23日

アサニ美里

職種
医療コーディネーター
活動地
ケニア
活動期間
派遣期間:2018年2~2018年8月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

前回、イラクの派遣を経て、次は違った状況の活動地に行きたいと思っていました。正直に言うと、(イラク以前はほとんどアフリカの活動だったので)アフリカに戻りたくて、イラクの活動が終了すると同時に、次をアフリカで探してもらいました。 

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?

前回の活動との間が1ヵ月だけだったので、自分の体のメンテナンス(歯の治療など)をしている間に時が過ぎたように思います。 

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?

何が起こっても驚かず、「そうきたか!」と思えるようになってきました(心の中では怒っていたり、納得いかなくても)。どこの国、どこのプロジェクトに行っても想定外のことが起こるもの……これが今までの経験で学んだことです。 

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

リコニの病院で生まれた赤ちゃん
リコニの病院で生まれた赤ちゃん
ケニアのリコニで、現地保健省と協働し、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の状況改善を目的にしたプロジェクトを運営していました。内容としては、産科および新生児科の救急医療、妊婦検診や産後検診、家族計画、性暴力に関する相談、正常分娩とハイリスク分娩を扱う産科医療と、帝王切開を行う外科手術、検査や輸血、病院・地域社会での健康教育などです。

リコニの病院では、月平均600~700件の分娩(そのうち60~70件が帝王切開)を行っています。

2017年に、医師による100日間のストライキと看護職の6ヵ月間のストライキがあり、現地保健省の医療機関がほぼ全て、運営をストップした時期がありました。その間、MSFは月に最大1000件の分娩(そのうち240件が帝王切開)を行っており、スタッフは忙しさにひっくり返っていたそうです。私がいた期間はストライキもなく安定した状態でした。

医療チームリーダーとしての私の業務は、医療活動に関する全ての責任(医療スタッフの人事、予算管理も含みます)を担い、マネジメントすることでした。そのため、直接患者に接することがありませんでした。プロジェクトをまとめるプロジェクト・コーディネーターと一緒に活動の戦略を構築し、動かしていく役割です。

このプロジェクトでは、海外から派遣されてきた医療スタッフが患者に直接医療行為をすることが許可されていませんでした。現地保健省が唯一、許可を出していたのが、ケニアで特に専門医の少ない産婦人科医だけでした。
新しい建物への引越しのようす
新しい建物への引越しのようす
チームの外国人スタッフはプロジェクト・コーディネーターと私、アドミニストレーター、ロジスティシャン、産婦人科医、ヘルスプロモーターの6人が常勤です。最初の3ヵ月間は病院が新しい建物へ引っ越したため、この6人に加えて、ロジスティシャンと建築士が加わりました。現地保健省から医療職の設置が制限されていたので、医療スタッフは最低限に抑えられていました。

現地スタッフは、2017年のストライキ時から一気に膨れあがり、約190人にまでなっていました。特に医療チームはすごい大所帯になり、また現地保健省の方針で通常なら海外派遣スタッフが担うポジションも全て現地スタッフで担当していました。 
 
Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

医療チームのオフィスは11人で6つのデスクをシェアしていた
医療チームのオフィスは11人で6つのデスクをシェアしていた
病院はもちろん24時間動いていますが、オフィスは週休2日で、平日は午前7時30分~午後5時30分まででした。住居と病院とオフィスが離れているため、車で移動する時間帯が限られていました。そのため、オフィスに残って遅くまで働くことはなく、時間までに終わらないときは住居に仕事を持ち帰っていました。

週末は人によって行動パターンが分かれていました。主に欧米からの海外派遣スタッフは、海辺の観光地であるリコニをしっかり堪能して、ビーチでマリンスポーツを楽しんだり、レストランで食事を楽しんだりしていました。一方、観光地にいる自覚がなく、むしろローカルに馴染んで行動しているタイプがいました(主にアフリカの出身者)。私は後者のタイプでローカルマーケットでのショッピングやクッキングなどでしょうか。特に仲の良かったウガンダ人の女子とルワンダ人の医師(男子)と一緒に週末はケーキやパンなどを焼いていました。(月曜日にオフィスに持っていくとすぐに消費されます)
 
Q現地での住居環境について教えてください。

MSFらしくない(笑)整った居住環境
MSFらしくない(笑)整った居住環境
今回は、MSFらしくない、今までにないぐらい豪華な環境でした。全室バス・トイレつきの広い部屋で、もちろん個室。そしてまさかのプールつきで、あまりに整いすぎてちょっと罪悪感を抱くほどでした。

オフィスは住宅街にあるのですが、時々猿たちがやってきました。飼われている猿ではなさそうですが、一体どこに住んでいるのか謎でした。 
Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

現地保健省の血液センターと協力して行った献血キャンペーン
現地保健省の血液センターと協力して行った献血キャンペーン
ケニアという国の印象が、実際に活動してみて変わりました。以前は、この国はアフリカの中でも発展していて教育レベルも高く優秀、考え方も先進国に近いというイメージがあったのですが、実際は何かが違うと感じました。

教育の面では確かに他のアフリカの国よりも高いレベルですが、本当に優秀な人たちは国外に流出しているようです。貧富の差も大きく、お金持ちはごくわずかで、大多数は貧しい人びとです。都会には、立派な設備が整った施設や病院、外国人観光客向けの豪華なホテル、レストランなどがあるすぐ横で、水道や電気がない地区、スラムもあります。

大小合わせて民間のクリニックや病院がたくさんあり、現地保健省の病院もいくつもあるのですが、治療費の差が、明らかにケアのレベルの差につながっている現実を見ました。無料もしくは安価な保健省の施設では良いケアが受けられないと一般的に言われていますし、国立の大病院の前に棺桶屋が並んで商売をしている(縁起でもない!)のも見ました。現地のスタッフによると、国立の病院では命が救えないことも多いから、ということでした。

保健省が新しい病院をいくつも建設中(なかなか進まない)で、すでに出来上がった病院もあるのに、給料が払えないため医療スタッフを増やすことができず、せっかく作った新しい施設を使えない、という状況もありました。

十分な数の医療機関があるのになぜMSFがあえてこの場所で活動をしているのか、疑問も感じましたが、このような現状の中、実は本当に貧しい人たちが分娩をする場は限られていて、しかもケアのレベルに問題がある状況がわかりました。

ここ数年、MSFのいろいろな現場で感じていたことですが、ここでも現地スタッフにとても助けられました。その地の状況(外国人では得ることのできない微妙なことまで)をよくわかっているのは彼らで、人によってはものすごく強いネットワークを持っていて、彼らなしではやっていくのは難しいです。現地スタッフを尊重しうまくやっていくことがプロジェクトの成功にもつながります。
 
Q今後の展望は?

筋力回復(今回、車の移動ばかりでほとんど歩いていなかったので)と、ダイエット(派遣されると私は太ります)、それから旅行(次に向けてモチベーションを上げるため)をします。 

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

派遣中はいろいろなことが起こります。いつも何かしらの問題がありますが、あって当然。しかもそう簡単に状況は変わらない(というか変えられない)です。そんな中でも本当に必要なことが、少しでも改善されたところが見られればいいですよね。 

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2017年3月~2017年12月
  • 派遣国:イラク
  • プログラム地域:-
  • ポジション:医療チームリーダー
  • 派遣期間:2015年11月~2016年3月
  • 派遣国:コンゴ民主共和国
  • プログラム地域:マノノ
  • ポジション:プロジェクト・コーディネーター
  • 派遣期間:2015年8月~2015年11月
  • 派遣国:中央アフリカ共和国
  • プログラム地域:バンギ
  • ポジション:医療チームリーダー
  • 派遣期間:2014年4月~2015年2月
  • 派遣国:コンゴ民主共和国
  • プログラム地域:キサンガニ
  • ポジション:Nursing Team Supervisor
  • 派遣期間:2013年3月~2014年1月
  • 派遣国:コンゴ民主共和国
  • プログラム地域:シャブンダ
  • ポジション:医療チームリーダー
  • 派遣期間:2012年3月~2013年1月
  • 派遣国:ブルンジ
  • プログラム地域:ギテガ
  • ポジション:プログラム責任者
  • 派遣期間:2011年10月~2012年1月
  • 派遣国:コンゴ民主共和国
  • プログラム地域:キンサシャ
  • ポジション:副医療コーディネーター
  • 派遣期間:2010年11月~2011年7月
  • 派遣国:ソマリア
  • プログラム地域:ソマリランド・ブラオ
  • ポジション:医療チームリーダー
  • 派遣期間:2010年1月~2010年7月
  • 派遣国:コンゴ民主共和国
  • プログラム地域:ニャンガラ
  • ポジション:医療チームリーダー
  • 派遣期間:2009年5月~2009年11月
  • 派遣国:中央アフリカ共和国
  • プログラム地域:バタンガフォ
  • ポジション:助産師
  • 派遣期間:2008年8月~2009年1月
  • 派遣国:スーダン
  • プログラム地域:カグロ
  • ポジション:助産師/看護師
  • 派遣期間:2007年8月~2008年6月
  • 派遣国:ニジェール
  • プログラム地域:ダコロ/li>
  • ポジション:助産師/看護師
  • 派遣期間:2007年2月~2007年6月
  • 派遣国:チャド
  • プログラム地域:イリバ
  • ポジション:助産師
  • 派遣期間:2006年3月~2006年12月
  • 派遣国:コートジボワール
  • プログラム地域:ビヌイエ
  • ポジション:助産師
  • 派遣期間:2005年5月~2005年11月
  • 派遣国:コンゴ民主共和国
  • プログラム地域:ブニア
  • ポジション:看護師
  • 派遣期間:2004年2月~2004年5月
  • 派遣国:コンゴ民主共和国
  • プログラム地域:ブニア
  • ポジション:看護師
  • 派遣期間:2003年5月~2003年11月
  • 派遣国:ブルンジ
  • プログラム地域:マカンバ
  • ポジション:助産師

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