海外派遣スタッフ体験談
英語もフランス語も通じない、緊急援助の現場で:アサニ 美里
2018年03月23日アサニ 美里
- 職種
- 医療コーディネーター
- 活動地
- イラク
- 活動期間
- 2017年3月~2017年12月

- Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?
前回の中央アフリカ共和国での活動が終了した時に、次はいつ頃から行けそうかタイミングを考え、ポジションとタイミングにマッチしたその状況に合わせて決めました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?
英語のレッスンをしました。アフリカのフランス語圏の国での活動が多く、長らく英語圏の国に行っていなかったので、英語を忘れてしまっていました。
- Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?

不安定な状況下での緊急援助も展開
緊急援助プロジェクトの経験が役に立ちました。 私が到着する2~3日前に現地の状況が一変して、シリアのラッカで過激派勢力「イスラム国」を封じ込めるための攻撃があり、大勢の避難者が出ました。
プロジェクトでは、それほど多くのけが人はやってきませんでしたが、私が現場に到着するなり、プロジェクトの通常の活動を理解する前に緊急対応することになり、通常の活動と同時に動かしていかなければならない状況でした。
優先順位を決定して緊急対応をし、活動の戦略構築と同時進行で、新しい緊急援助を立ち上げるのに過去の経験が生かされました。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

MSFは移動診療を行っている
通常の活動では、基礎医療センター(小児科を含む一般診療、非感染性疾患・慢性疾患のプログラム、性と生殖に関する診察、心理ケア)が2ヵ所、基礎的緊急産科・新生児ケアを行っていました。
3月末~6月上旬にかけ、上記の通常活動に加えて緊急援助活動を立ち上げ、プロジェクトもイラからシリア、クルド人自治区や避難民キャンプなど、変化しました。
業務としては、医療チームの監督とサポートを担いました。プロジェクト・コーディネーターとともに戦略設定の責任を負い、関係各所と交渉しました。
6月上旬までは、2つの移動診療チームを設置するなど緊急援助活動の立ち上げに関わり、その後は医療コーディネーターへ引き継ぎました。
外国人派遣スタッフは7人で、プロジェクト・コーディネーター、ロジスティシャン、アドミニストレーター、医療スタッフが4人。現地スタッフは通常・緊急プロジェクトを合わせて160~170人 ほどいました。
患者の主な症例は、呼吸器感染症、胃腸炎、高血圧、糖尿病、慢性心疾患などでした。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
初めの約2ヵ月間(緊急活動も行っていた期間)は、日曜にオフィスでミーテイングし、月~水曜もしくは木曜まで緊急援助活動に携わっていました。金曜と土曜が休日ですが、緊急の状況なので、休日返上で通常の活動に携わっていました。
その後は元の状況に落ち着き、週に1日はなんとか休みが取れるようになりました。
- Q現地での住居環境について教えてください。
これまでのMSF経験でアフリカしか知らなかった私にとって、ありえないぐらい上等な環境でした。綺麗な部屋で、トイレも水洗、シャワーもお湯が出ます。
気候が厳しいですが(夏は気温40度以上、冬はとても寒く雪が降ることもあるらしい)、エアコンがあったのでなんとか生き延びました。エアコンなしでは無理でしょう…。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

この地域は公用語が英語でもフランス語でもないため、現地保健省などの役職者も英語があまり話せません。つまり、私も1人では仕事ができず、常にアシスタントや通訳との二人三脚でした。通訳者が本当にきちんと正しく通訳してくれているのか時々分からないこともありました。現地では医療スタッフでも(たとえ医師でも)英語ができる人間がわずかしかおらず、コミュニケーションの難しさを感じました。
移動診療の立ち上げの時、現地で新たに採用した医療スタッフが全員やる気満々だったのに、行き先が前線にごく近いところと分かると、半分以上のスタッフ(特に医師)が拒否してしまい、チームを作るのに苦労しました。
セキュリティー上リスクが高い場所であるのと、「イスラム国」の脅威の中で生きてきたスタッフに強制することはできません。結局、避難民キャンプの中で医療資格者を見つけ、その人たちが働いてくれました。
アフリカとは全く違った現場状況やニーズの中で活動することで、また違った困難さ、目標を知ることができました。
- Q今後の展望は?
次回は(やっぱり)アフリカのプロジェクトに行きたいです。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
現地に行って状況が違っていたり、急に変化したりすることはよくあることなので、そんなにびっくりせず、こんなものかと楽しんでください。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2015年11月~2016年3月
- 派遣国:コンゴ民主共和国
- プログラム地域:マノノ
- ポジション:プロジェクト・コーディネーター
- 派遣期間:2015年8月~2015年11月
- 派遣国:中央アフリカ共和国
- プログラム地域:バンギ
- ポジション:医療チームリーダー
- 派遣期間:2014年4月~2015年2月
- 派遣国:コンゴ民主共和国
- プログラム地域:キサンガニ
- ポジション:Nursing Team Supervisor
- 派遣期間:2013年3月~2014年1月
- 派遣国:コンゴ民主共和国
- プログラム地域:シャブンダ
- ポジション:医療チームリーダー
- 派遣期間:2012年3月~2013年1月
- 派遣国:ブルンジ
- プログラム地域:ギテガ
- ポジション:プログラム責任者
- 派遣期間:2011年10月~2012年1月
- 派遣国:コンゴ民主共和国
- プログラム地域:キンサシャ
- ポジション:副医療コーディネーター
- 派遣期間:2010年11月~2011年7月
- 派遣国:ソマリア
- プログラム地域:ソマリランド・ブラオ
- ポジション:医療チームリーダー
- 派遣期間:2010年1月~2010年7月
- 派遣国:コンゴ民主共和国
- プログラム地域:ニャンガラ
- ポジション:医療チームリーダー
- 派遣期間:2009年5月~2009年11月
- 派遣国:中央アフリカ共和国
- プログラム地域:バタンガフォ
- ポジション:助産師
- 派遣期間:2008年8月~2009年1月
- 派遣国:スーダン
- プログラム地域:カグロ
- ポジション:助産師/看護師
- 派遣期間:2007年8月~2008年6月
- 派遣国:ニジェール
- プログラム地域:ダコロ
- ポジション:助産師/看護師
- 派遣期間:2007年2月~2007年6月
- 派遣国:チャド
- プログラム地域:イリバ
- ポジション:助産師
- 派遣期間:2006年3月~2006年12月
- 派遣国:コートジボワール
- プログラム地域:ビヌイエ
- ポジション:助産師
- 派遣期間:2005年5月~2005年11月
- 派遣国:コンゴ民主共和国
- プログラム地域:ブニア
- ポジション:看護師
- 派遣期間:2004年2月~2004年5月
- 派遣国:コンゴ民主共和国
- プログラム地域:ブニア
- ポジション:看護師
- 派遣期間:2003年5月~2003年11月
- 派遣国:ブルンジ
- プログラム地域:マカンバ
- ポジション:助産師