兄弟姉妹が遺産相続を行う際のよくあるトラブル・事例について解説
更新日:2025年6月30日
監修者:三浦美樹 司法書士(日本承継寄付協会 代表理事)

子どもがいない人が亡くなった場合、その兄弟姉妹が遺産の相続人になる可能性があります。しかし、遺産相続ではさまざまなトラブルが発生することも少なくありません。今回は、どんな時に兄弟姉妹が相続人になるのか、兄弟姉妹が遺産を相続する際の注意点、起こりやすいトラブルについて解説していきます。
目次
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遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。
パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)
- 国境なき医師団とは?
- 遺贈寄付までの流れ
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- 自筆証書遺言とその書き方
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1.兄弟姉妹が法定相続人になるケース
被相続人(亡くなった方)の兄弟姉妹が法定相続人になるかどうかは、相続が発生した時点での状況によって変わってきます。相続人になるケースと相続人にならないケースのどちらもあります。
2.兄弟姉妹の法定相続人の範囲・順位
法定相続人とは、民法で定められた相続人を指します。被相続人の配偶者は常に法定相続人となりますが、それ以外の親族については、相続順位と呼ばれる順番に基づいて法定相続人が決定されます。
順位 | 法定相続人 |
---|---|
常に相続人 | 死亡した人の配偶者 |
第1順位 | 死亡した人の子ども |
第2順位 | 死亡した人の直系尊属(父母、祖父母など) |
第3順位 | 死亡した人の兄弟姉妹 |
兄弟姉妹の法定相続人の範囲
相続順位が高い人に相続が発生した場合、下位の人は原則として法定相続人にはなりません。
兄弟姉妹の相続順位は第3順位であるため、第1順位の子どもと第2順位の直系尊属がいない場合に法定相続人となります。
兄弟姉妹の法定相続人の順位
全ての兄弟姉妹に共通の父母がいる場合は、全員が同じ順位です。
父母のいずれかが異なる兄弟姉妹の法定相続分は、父母が同じ兄弟姉妹の相続分の1/2です。
3.兄弟姉妹が相続人になるケースと相続割合
相続人が配偶者と兄弟姉妹のケース
被相続人に配偶者がいるものの、子ども・孫・親・祖父母がいない場合で、かつ被相続人に兄弟姉妹がいるケースです。このケースでは、以下の割合で相続財産を配分します。
- 配偶者:4分の3・兄弟姉妹:4分の1
兄弟姉妹が複数人いる場合は、この4分の1をさらに兄弟姉妹の人数で分割します。
例えば、配偶者と3人の兄弟姉妹で3000万円の相続財産を分ける場合には、配偶者が相続する財産は4分の3の2250万円です。残りの4分の1を3人の兄弟姉妹で分けると、250万円ずつ受け取ることになります。
相続人が兄弟姉妹のみのケース
被相続人に配偶者・子ども・孫・親・祖父母のいずれもおらず、兄弟姉妹だけがいるケースでは、兄弟姉妹が法定相続人となり、相続財産の全てを受け取ります。
兄弟姉妹が複数人いる場合には、兄弟姉妹の人数で相続財産を分割します。例えば、相続財産が3000万円で3人の兄弟姉妹がいる場合には、1人1000万円ずつ受け取ります。
被相続人に子ども・孫・親・祖父母がいるが、全員が相続放棄をしたケース
被相続人に子ども・孫・親・祖父母のいずれかがおり、存命であっても、全員が相続放棄をすれば、被相続人の兄弟姉妹に相続権が与えられます。
ただし、相続する側の視点に立って言えば、全員が相続放棄をしたということは、遺産の分け方を協議してトラブルになった場合や、遺産に借金が含まれている場合など、何らかのリスクがあるということも少なくありません。そのため、相続放棄された財産は、相続するべきなのかどうか慎重にチェックすることが望ましいでしょう。
遺言書に兄弟姉妹に相続させると記載があるケース
相続では、遺言書に兄弟姉妹に相続させる旨の記載があった場合は、遺言書の内容が優先されることとなります。したがって、遺言書の内容によっては、配偶者や子ども、直系尊属がいた場合でも、遺産を相続させることが可能です。
ただし、遺言書であっても遺留分を侵害することはできず、配偶者・直系尊属・子どもの遺留分を侵害しないように配慮する必要があります。
遺留分とは、法定相続人に最低限保障される遺産取得分のことです。
4.兄弟姉妹の遺産相続の注意点
兄弟姉妹には遺留分が認められていない
法定相続人は民法で定められた相続人ですが、被相続人の意思は重視すべきと考えられているため、遺言書がある場合には法定相続人よりも遺言書の内容が優先されます。
しかし、遺言書に「全ての財産を友人のAさんに譲る」などと記載されていた場合、法定相続人が全く遺産を受け取れないという事態が発生します。そのような事態に配慮して定められているのが「遺留分」という制度です。この制度により、一部の相続人は、被相続人の意思とは関係なく、被相続人の財産の一定の割合の金額を取得する権利が認められています。
遺留分が認められているのは、以下の親族です。
- 被相続人の配偶者
- 子どもなどの直系卑属
- 父母などの直系尊属
ここに兄弟姉妹は含まれておらず、遺留分の対象となりません。つまり、遺言書に「遺産は○○(兄弟姉妹以外の誰か)に全て譲る」などと記載されていた場合には、被相続人の兄弟姉妹は遺産を受け取れなくなります。
兄弟姉妹に遺留分が認められないのは、兄弟姉妹は相続順位が第3順位と低く、互いに自立している関係であると考えられているためです。
なお、代襲相続となった場合はこの限りではありません。遺留分について、詳しくはこちらをご覧ください。
兄弟姉妹の代襲相続は1代まで
本来、相続人になるはずの人が既に亡くなっている場合、その権利はその子どもや孫に引き継がれることとなります。これを、代襲相続といいます。兄弟姉妹が相続人となる場合での代襲相続は1代までとなっているため、もし兄弟姉妹の相続人が既に亡くなっている場合は、その子どもまでなら相続することが認められます。つまり、被相続人からすると、甥や姪にあたる人が代襲相続できるということです。
兄弟姉妹の相続税額は2割加算される
相続財産を取得するとその財産の割合に応じて相続税を支払う必要が出てきます。兄弟姉妹が相続する場合、相続税は2割増しで計算され、これは法定相続人であった場合にも適用となります(※)。
戸籍などの必要書類を集めるのに時間がかかる
兄弟姉妹が相続するには、血縁関係の証明のために以下の書類を取得しなければなりません。
- 相続人である兄弟姉妹の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本
- 両親の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本 〈以下は場合によっては必要となる書類〉
- 祖父母が死亡したことが分かる戸籍(除籍)謄本
- (被相続人よりも先に亡くなっている兄弟姉妹がいる場合)亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの書類
戸籍謄本は、本籍地以外でも取得できるようになりました。それでも、これらを揃えるには一定の時間や手間がかかります。
5.兄弟姉妹の遺産相続で起こりがちなトラブル
兄弟姉妹の遺産相続では、以下のようなトラブルに悩む方も少なくありません。具体的に見ていきましょう。
兄弟姉妹が非協力的
相続での遺産分割は、遺言書に記載がない限り、相続人全員で遺産分割協議を行い、どのように分けるかを話し合いで決めていくこととなります。
この際、対象となる人全員が遺産分割協議に参加して協力的にならなければ、相続手続きは完了しません。特に、配偶者がいる場合、遺産の全てを配偶者に相続させたいと思っていても、遺言書に記載していなければ認められません。兄弟姉妹が非協力的だと遺産分割協議がまとまらず、トラブルになることも少なくないようです。
遺産が不動産のみ
相続できる遺産が不動産のみの場合、遺言書に記載がなければ兄弟姉妹にもその不動産を相続できる権利が発生します。被相続人に配偶者や子どもがおらず、両親も亡くなっている場合は、兄弟姉妹で話し合ってその不動産をどう分けるか決めていくこととなります。
トラブルに発展しやすいのは、被相続人に配偶者がいるケースです。配偶者は、これまで住み続けた家で暮らしたいと思っていても、遺言書に「配偶者に全ての遺産を相続させる」という旨の記載がなければ、場合によっては家を売却して遺産を分割する必要があるのです。
先述したように、兄弟姉妹への相続において遺留分は認められません。したがって、遺言書にきちんと配偶者に不動産を相続させると記載されていれば、トラブルを回避しやすくなります。
絶縁している兄弟姉妹がいる
絶縁して所在不明な兄弟姉妹がいる場合、その人の存在を無視して遺産分割協議を行うことはできません。ただ、所在が分かったとしても、絶縁状態であれば協力が得られず協議が進まないこともあるでしょう。
こうした場合は、弁護士などの協力を得て、直接兄弟姉妹が話し合いをしなくても済むように手続きを進めるとよいかもしれません。また、絶縁状態の兄弟姉妹の所在すら分からない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらい、相続手続きを進めることが可能です。
後のトラブルに発展しないように、弁護士や家庭裁判所に相談しながら遺産の分割を考えていくことをおすすめします。
6.兄弟姉妹の遺産相続のポイント
遺産に関する兄弟姉妹間のトラブルを防ぐために、事前に行える対策を2つご紹介します。
財産の全体像を明確にする
相続をする際は、預貯金や土地・建物など、被相続人が所有する財産を把握した上で協議を行います。多くの財産を所有している場合、財産を把握しきれなかったり、後になって出てきたりといった事態が発生することもあります。生前に財産目録を作成して全体像を明確にしておき、協議をスムーズに進められるようにしましょう。
遺言書を作成する
遺言書があればその内容に従って遺産を分割するため、兄弟姉妹間のトラブルを防止する効果が期待できます。遺言書には、公証役場で作成する「公正証書遺言」や、自分で記載する「自筆証書遺言」があり、不備の起こりにくさや信頼性の高さ、費用などから考えて選択することが可能です。トラブルを防ぐことを重視して、弁護士、司法書士、行政書士、税理士などの専門家に相談してもいいでしょう。(遺言書の種類と作成方法について、詳しくはこちら)
7.まとめ
被相続人の家族の状況によっては、兄弟姉妹が遺産を相続するケースも出てきます。ここでご紹介した注意点をよく確認し、できるだけトラブルが生じないように進めていくにはどうすればよいのか、そのポイントを押さえておきましょう。特に、配偶者がいる場合は注意が必要です。遺された配偶者と兄弟姉妹との間でトラブルを起こさないためにも、遺言書を残すことは重要といえるでしょう。
遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。
パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)
- 国境なき医師団とは?
- 遺贈寄付までの流れ
- 公正証書遺言とその作り方
- 自筆証書遺言とその書き方
- 遺贈Q&A

8. 遺贈寄付に関するご相談
遺贈寄付の手続きは、誰にとってもはじめての体験。でも、相談できる人が身近にいない、という声も聞かれます。「国境なき医師団遺贈寄付ご相談窓口」には、幅広い知識と経験豊富な専任のスタッフがいます。遺言書の書き方から手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。
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三浦 美樹 司法書士 (一社)日本承継寄付協会
代表理事 司法書士法人東京さくら
代表
司法書士開業当初から、相続の専門家として多くの相続の支援を行う。誰もが最後の想いを残せる少額からの遺贈寄付にも力をいれている。
平成19年 司法書士試験合格
平成23年 チェスター司法書士事務所を開業
平成29年 さくら本郷司法書士事務所に名称変更
令和元年 一般社団法人承継寄付協会設立 代表理事就任
令和2年 司法書士法人東京さくらとして法人化