特集

スーダン:紛争から1年 戦闘下の人びとの命を守る

2024.04.15

2023年4月15日にスーダン軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の間で紛争が始まって1年。スーダンの人びとは、空爆や銃撃、略奪、性暴力といった激しい暴力に直面している。国連によると避難を強いられた人は800万人を超え、多くはスーダン国内や近隣諸国のキャンプでの暮らしを余儀なくされている。

国境なき医師団(MSF)はスーダン国内で医療援助を継続するとともに、近隣国でも対応を続けている。危機の中を生きる人びとの命を守るための活動、そして直面する課題とは──。 

【動画】紛争開始から1年、底知れないスーダンの厳しい現実 #Talk About Sudan

国境なき医師団の日本人スタッフが語る、紛争の1年 #スーダンの話をしよう

指を切られた少女、銃で撃たれた赤ちゃん──国境なき医師団の日本人スタッフが語る、紛争の1年 #スーダンの話をしよう

そこに守るべき命があるから──国境なき医師団の日本人スタッフが語る、紛争の1年 #スーダンの話をしよう

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スーダンの人びとが置かれた状況とは?

極めて高い医療ニーズ

ザムザム・キャンプのMSF診療所に集まる女性と子どもたち Ⓒ Mohamed Zakaria
ザムザム・キャンプのMSF診療所に集まる女性と子どもたち Ⓒ Mohamed Zakaria
2023年4月以降、スーダンの医療ニーズは極めて高くなっている。MSFは、戦闘の激しい地域で、人びとに爆風や銃弾による傷などの治療を行っている。これまでに2万2800件以上の外傷治療と、4600件以上の外科手術に対応した。

直接的な暴力だけでなく、間接的な被害も深刻だ。紛争の影響を受けた地域では病院の70~80%が機能していない。多くの人が医療を受けるため、危険な長距離の移動を強いられている。 
診察を待つ患者 Ⓒ Ahmad Mahmoud/MSF
診察を待つ患者 Ⓒ Ahmad Mahmoud/MSF
劣悪な生活環境、清潔な水の不足、予防接種や医療アクセスの欠如は、感染症流行の温床となり、病気のまん延状況を著しく悪化させている。MSFは、10万人以上のマラリア患者、2000人以上のコレラ患者、何千人ものはしか患者に対応してきた。

医療アクセスの欠如は妊婦にも大きな影響を及ぼしている。MSFはこの1年間で8400件以上の分娩を支援し、1600件の帝王切開に対応した。

栄養失調の問題も深刻だ。北ダルフールの避難民キャンプで行われた調査では、子どものほぼ4分の1が急性栄養失調で、7%が重度の急性栄養失調であることが判明。キャンプでは2時間に1人の割合で子どもが亡くなっている。MSFは、1年間で3万人以上の急性栄養失調の対応を支援した。 

人道アクセスの妨害も

破壊されたMSFの車両 Ⓒ MSF
破壊されたMSFの車両 Ⓒ MSF
スーダンで提供されている人道援助は、膨大な医療ニーズから考えると大海のほんの一滴にすぎない。特にこの半年間は、スーダン国内における「即応支援部隊(RSF)」の支配地域で、援助を必要としている地域へのスタッフや物資の移動を含めた援助活動が、組織的に妨害されてきた。

スタッフの入国ビザや、国内を移動するための許可証の取得も難しく、ポート・スーダンから「即応支援部隊(RSF)」の支配地域へ移動する際の、前線を越えるための許可は何度も却下されている。また、チャドや南スーダンなど、国境を越えて援助物資がスーダン国内に入るのを阻止しようとする動きもある。

このような障壁を克服し、民間人や援助活動従事者の保護が十分ではない中で活動を模索することは、絶え間ない困難を伴い、MSFが取り組むべき課題となっている。 

スーダンで国境なき医師団が行っていることとは?

国内と近隣国で医療を提供

MSFはスーダンで、緊急の治療や手術、避難民のための移動診療、感染症や慢性疾患の治療、安全な分娩を含む妊産婦ケア、小児医療、水と衛生に関する支援、医療施設への医薬品・医療物資の提供を行っている。また、保健省スタッフへの給与サポートや研修、ロジスティクス面での支援も実施。紛争前から行う医療活動の一部も継続している。

現在、スーダンの10州において、30以上の医療施設で活動及び支援を行っている。(ハルツーム州、ジャジーラ州、白ナイル州、青ナイル州、ゲダレフ州、西ダルフール州、北ダルフール州、南ダルフール州、中央ダルフール州、紅海州)また、カッサラ州でも避難した人びとのニーズに対応している。

また、南スーダンとチャドでも、スーダンからの難民や帰還民への支援を行っている。
ハルツームの病院で手術の準備を進める医師 © MSF/Ala Kheir
ハルツームの病院で手術の準備を進める医師 © MSF/Ala Kheir
国境なき医師団の活動地(2024年3月18日時点)
国境なき医師団の活動地(2024年3月18日時点)

主な活動

保健省と連携し活動を行うMSFスタッフ Ⓒ Ala Kheir/MSF 
保健省と連携し活動を行うMSFスタッフ Ⓒ Ala Kheir/MSF 
2024年2月時点で、938人以上のスーダン人スタッフと109人の海外派遣スタッフがスーダン及び近隣国で活動している。主な取り組みは以下になる。

■母子保健と小児医療 
■栄養失調の対応 
■感染症と慢性疾患 
■救急外来と外科手術 
■性暴力の被害者への心のケア 
■医療物資などの寄贈、医療施設の再建、保健省スタッフへの給与サポート 

さらなる悲劇を防ぐため、MSFは以下を求めている。

  • 人道支援活動の大幅な拡大
  • 医療スタッフ・援助活動従事者・民間人の安全確保
  • 医療・人道援助スタッフおよび物資を自由に移動できるようにすること
  • 人びとの人道援助へのアクセスが妨げられないようにすること

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トップ写真:チャド・アドレのMSF栄養治療センターで診療を待つ患者=2023年8月2日  © MSF

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