特集

内戦開始から2年

#スーダンの話をしよう──いま、人びとの命を守るために

2025.04.15

2023年4月15日にスーダン軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の間で紛争が始まり、内戦状態となったスーダン。2年に及ぶ激しい戦闘により、何百万人もの人びとが家を追われ、傷つき、命を落としています。この紛争は世界で最も深刻な人道危機となり、その影響は国境を越え、近隣国にも及んでいます。

国境なき医師団(MSF)は、スーダン国内および近隣国で医療・人道援助活動を続けています。危機を生きる人びとの命を守るための活動、直面する課題、そしていまスーダンの人びとに必要な支援とは──。

戦闘開始から2年。いま改めてスーダンで起きていることについて考えてみませんか。

スーダンでいま何が起きている?

「人びとに対する戦争」

スーダンの内戦は、「人びとに対する戦争」です。内戦がスーダンの人びとに与える影響、特に紛争当事者による市民への暴力の影響を、MSFは目の当たりにしてきました。

スーダン軍(SAF)は、市民が密集する地域に繰り返し無差別な爆撃を行っています。準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」およびその支援組織は、組織的な性暴力、拉致、大量殺りく、人道援助物資の略奪、医療施設の占拠といった非道な作戦を繰り広げています。双方とも街を包囲し、重要な民間インフラを破壊し、人道援助を妨害しています。

動画:2分34秒

この「人びとに対する戦争」に沈黙することはできません──。スーダンを訪れたMSFスイスの事務局長、スティーブン・コーニッシュは、「世界最大の医療・人道危機に即した対応が必要」と訴えます。

世界最大の避難民危機

スーダンで起きている紛争は、世界最大の避難民危機を引き起こしています。およそ1300万人の人びとが紛争により家を追われ、これはスーダンの全人口のほぼ4分の1に相当します。890万人の国内避難民のほか、近隣国へも390万人が難民として逃れています。
 
多くの人が避難民キャンプなどで過酷な生活を送り、最も基本的なニーズも満たされていません。ほとんどの場合、生きるためのすべてを援助団体による支援に頼らざるを得ない状況です。

南スーダンで避難生活を送る一家=2023年8月 Ⓒ Sean Sutton/Panos Pictures
南スーダンで避難生活を送る一家=2023年8月 Ⓒ Sean Sutton/Panos Pictures
戦闘の激化により避難する北ダルフール州の人びと=2024年6月 Ⓒ MSF
戦闘の激化により避難する北ダルフール州の人びと=2024年6月 Ⓒ MSF

必要な医療を受けることができない

危機的な栄養失調率、高い妊産婦と5歳未満の子どもの死亡率、コレラ、はしか、デング熱といった感染症のまん延などが深刻化するなか、何百万人ものスーダンの人びとは必要な医療を受けることができません。この状況は、不安定な情勢、物資不足、医療物資を輸送する際の妨害によりさらに悪化しています。

カッサラ州にあるMSFのコレラ治療センター=2024年9月 Ⓒ Mohammed Elhassan
カッサラ州にあるMSFのコレラ治療センター=2024年9月 Ⓒ Mohammed Elhassan
コレラの予防について伝えるMSFの健康促進活動=2024年11月 Ⓒ Faiz Abubakr
コレラの予防について伝えるMSFの健康促進活動=2024年11月 Ⓒ Faiz Abubakr

広がる栄養失調と飢きん

深刻な栄養失調と飢きんが、スーダンを襲っています。スーダンの人口の半分にあたる2460万人の人びとが深刻な食料不安に直面しており、そのうち850万人は緊急事態または飢きんに近い状態といわれています(※)

現在、国連が複数の地域で飢きんが確認されたと発表しているのは、世界のなかでもスーダンのみです。緊急の人道的介入がなければ、何十万人もの命が危険にさらされることになります。2024年8月、北ダルフール州の国内避難民キャンプ、ザムザム・キャンプで飢きんが公式に確認された後、10の地域に広がっており、さらに17の地域が飢きんの瀬戸際に立たされています。

※総合的食料安全保障レベル分類(IPC)の報告書

ザムザム・キャンプで患者に対応するMSFスタッフ=2024年4月 Ⓒ Mohamed Zakaria
ザムザム・キャンプで患者に対応するMSFスタッフ=2024年4月 Ⓒ Mohamed Zakaria
MSFの支援する栄養治療センターに入院した男の子=2025年3月 Ⓒ Tom Casey/MSF<br> <br>
MSFの支援する栄養治療センターに入院した男の子=2025年3月 Ⓒ Tom Casey/MSF

医療施設は機能せず、医療への攻撃も

世界保健機関(WHO)によると、戦闘の影響を受けた地域では、7割以上の医療施設がほとんど機能していないか、完全に閉鎖されています。近年で最大の人道危機の一つが起きるなか、何百万人もの人びとが必要な治療を受けることができていません。
 
また、紛争が始まって以降、医療スタッフ、インフラ、車両、物資が標的にされた80件以上の暴力事件を、MSFは記録しています。医療施設は略奪・破壊され、医薬品は盗まれています。医療従事者も暴行を受け、脅迫され、殺害されています。このような攻撃はあってはならず、医療従事者や医療施設は標的ではありません。

攻撃を受けたニヤラ教育病院=2024年9月 Ⓒ Abdalla Berima/MSF
攻撃を受けたニヤラ教育病院=2024年9月 Ⓒ Abdalla Berima/MSF
北ダルフール州エル・ファシールのサウジ病院。攻撃を受け患者や医療スタッフの死傷が相次いだ=2024年12月 Ⓒ MSF
北ダルフール州エル・ファシールのサウジ病院。攻撃を受け患者や医療スタッフの死傷が相次いだ=2024年12月 Ⓒ MSF
首を撃たれた女性はチャドの病院で治療を受けた=2023年6月 Ⓒ Mohammad Ghannam/MSF
首を撃たれた女性はチャドの病院で治療を受けた=2023年6月 Ⓒ Mohammad Ghannam/MSF

スーダンで国境なき医師団(MSF)が行っていることとは?

国内10州、33以上の施設で医療を提供

MSFは現在、スーダンの10州において、33以上の医療施設で活動および支援を行っています。対象地域は、ハルツーム州、白ナイル州、青ナイル州、ナイル川州、ゲダレフ州、南コルドファン州、西ダルフール州、北ダルフール州、南ダルフール州、中央ダルフール州です。MSFはスーダン軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」が支配する両地域で活動を行っています。外傷ケア、妊産婦ケア、栄養失調の治療をはじめ、そのほかの医療も提供しています。(2025年4月時点)

国境なき医師団はスーダン10州で活動(2025年4月時点)
国境なき医師団はスーダン10州で活動(2025年4月時点)

MSFは、スーダンで紛争が激化して以降、380万を超える人びとが避難するチャドと南スーダンでも対応を続けています。

MSFの主な取り組み

救急外来の受け入れ件数 32万件以上
分娩介助件数 3万5300件以上
栄養失調の治療をした子どもの数 6万7000人以上

(2023年4月~2025年4月の活動実績)

いま何が起きている?──MSFの活動地から

スーダンの活動ニュース一覧へ

国境なき医師団(MSF)が訴えること

民間人、民間地域、民間インフラ、医療従事者および医療施設の保護を

  • スーダンの内戦は、「人びとに対する戦争」です。紛争当事者は民間人の生命をほとんど尊重することなく互いに攻撃を続けており、人びとは激しい暴力にさらされています。民間人、民間地域、民間インフラは保護されなければなりません。
  • 医療従事者および医療施設は、決して標的にされたり攻撃されたりしてはいけません。すべての紛争当事者によってそれらは常に尊重され、保護されなければなりません。

人道的対応の大幅な拡大を

  • スーダンにおける人道支援は、依然として深刻な資金不足に直面しています。また、紛争地域への人道アクセスが制限されていることも、障壁となっています。
  • スーダンの人びとのニーズに応えるためには、緊急に人道的対応の規模を拡大する必要があります。

これ以上待つことはできない──いますぐ行動を

  • スーダンの人びとは、安全と安心を脅かす恐怖に2年も耐えてきました。いま、人びとは保護と支援を緊急に必要としています。これ以上、待つことはできません。待つべきでもありません。
  • 紛争当事者による、支援物資や人員に対する移動制限はただちに解除されなければなりません。特にダルフール地方では、雨期になると洪水により道路が冠水・遮断されます。雨期を前に、人道アクセスの確保は急務です。

命を救う活動を、どうぞご支援ください。

寄付をする

※国境なき医師団への寄付は税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。

チャド、アドレの一時滞在キャンプ。80歳の患者、アイシャ・Gさんにヘルスプロモーターのアイシャ・Bが付き添い、MSFの診療所に向かう=2024年7月 Ⓒ Ante Bussmann/MSF
チャド、アドレの一時滞在キャンプ。80歳の患者、アイシャ・Gさんにヘルスプロモーターのアイシャ・Bが付き添い、MSFの診療所に向かう=2024年7月 Ⓒ Ante Bussmann/MSF

トップ写真:母親に付き添い、MSFの移動診療を訪れたアイシャさん。MSFは南スーダン、レンクでスーダンから避難した人びとに医療を提供している=2025年1月 Ⓒ Paula Casado Aguirregabiria/MSF

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