孫に遺産は相続できる? 財産を残す6つの方法と注意点を徹底解説

更新日:2025年6月16日
監修者:庄田和樹(司法書士・土地家屋調査士・行政書士 司法書士法人 土地家屋調査士法人 行政書士法人 神楽坂法務合同事務所 代表 株式会社 遺言執行社 代表取締役)|脇坂誠也 認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク理事長(脇坂税務会計事務所 所長)

孫は原則として法定相続人ではないため、通常は祖父母の遺産を相続できませんが、事前に対策を行うことで可能になります。大切な孫に遺産を引き継がせる方法について紹介します。

目次

遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。

パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)

  • 国境なき医師団とは?
  • 遺贈寄付までの流れ
  • 公正証書遺言とその作り方
  • 自筆証書遺言とその書き方
  • 遺贈Q&A

1.孫に遺産の相続権はある?

民法では、相続権がある人(=法定相続人)について、以下の通り優先順位が定められています。なお、亡くなった方の配偶者は順位に関係なく常に法定相続人となります。

①死亡した方の子ども
②死亡した方の直系尊属(父母、祖父母など)
③死亡した方の兄弟姉妹

この順位には孫が含まれていないため、基本的に孫は法定相続人にはなりません。しかし、①の「死亡した方の子ども」が先に亡くなっている場合は、子どもに代わって孫が法定相続人になります。このような相続方法を代襲相続と呼びます。

2.遺産を孫に相続させるメリットと注意すべきこと

遺産を孫に相続させるメリットとそのときの注意点について紹介します。

遺産を孫に相続させるメリット

祖父母が「自分の遺産は孫に受け取ってほしい」と考える場合、孫に相続させることで祖父母の希望を叶えられます。孫を非常に大切に思っていたり、自分の後継者として捉えていたりする場合には、遺産を孫に相続させたいと思うことも少なくないでしょう。

また、本来であれば自分から子ども、子どもから孫へと2回相続が発生しますが、子どもを飛ばして孫に直接相続させると、トータルで考えたときの相続税は少なくなる可能性があります。

遺産を孫に相続させるときに注意すべきこと

孫に遺産を相続させると、その分他の相続人の取り分が減ることになります。「遺産はだいたいこのくらいもらえるだろう」と考えている相続人がいれば、思ったよりも自分に遺産が入らず、不満を持つかもしれません。その相続人と孫の人間関係が悪化してしまう可能性もあります。

加えて、代襲相続以外で孫に遺産を相続させる場合は、本来の相続税額と、相続税額の2割に相当する金額が加算されます(※)。孫の相続税の負担が大きくなってしまうことも注意点といえるでしょう。

3.孫に財産を残す方法(遺産相続)

孫に財産を残す方法として、まずは遺産相続による方法を紹介します。

方法① 遺言書に記す

遺言書がない場合、遺産の分け方について話し合う「遺産分割協議」が行われます。遺産分割協議に参加できるのは原則として法定相続人だけであるため、法定相続人に該当しない孫に遺産を相続させることはできません。

そのため、孫に遺産を相続させたいときは、遺言書を作成し、遺贈することをおすすめします。遺言書は故人の希望であり、優先して尊重されるべきと考えられている重要な書類です。

しかし、遺言書は法律で要件について細かく定められており、要件を満たしていないと無効になってしまう可能性もあります。したがって、弁護士などの専門家に相談した上で慎重に遺言書を作成することをおすすめします。

方法② 養子縁組

亡くなった方の子どもは第1順位で法定相続人となると説明しましたが、養子であってもそれは変わりません。養子縁組によって孫を子どもにすることで、孫が法定相続人となります。この方法は、法定相続人の数を増やし、節税を狙うケースでよく用いられます。

そもそも相続税を計算する上では、基礎控除(課税価格の合計額から差し引くことで、税負担を軽減する仕組み)の金額が高い方が有利です。相続税の基礎控除額は以下のように計算します。

基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数(※1)

したがって、孫を養子にすることで法定相続人の数が増えると、基礎控除額が増えて節税対策に繋がります。なお、相続税の基礎控除額を計算する上では、法定相続人の数に含められる養子の数に制限があります(※2)。

方法③ 代襲相続

亡くなった方の子どもが先に亡くなっている場合、子どもの代わりに孫が法定相続人となり、これを代襲相続と呼ぶと説明しました。この場合は手続きなどを行う必要はありません。また代襲相続により相続することとなった孫は、相続税額の2割加算の対象とはなりません。

代襲相続では、本来子どもが相続するはずだった割合をそのまま孫が取得します。このことを知らずに遺産分割協議を進めてしまう事例もあるため、自身の子どもが亡くなっていて、かつ孫がいる場合には、他の家族に事前に共有したり、遺言書を書いて相続方法を指定したりすることも有効です。

4.孫への遺産相続、法定相続分は何割?

代襲相続が生じた場合、孫の法定相続分は何割になるか考えてみましょう。

例えば、被相続人(亡くなった方)の家族が以下の場合だったとします。

配偶者は常に法定相続人となり、この場合の法定相続分は2分の1となります。その残りを3人の兄弟で分けるため、兄弟の法定相続分は6分の1ずつとなります。しかし長男はすでに亡くなっているため、長男の法定相続分は、代わりに長男の子である孫2人が引き継ぎます。6分の1を2人で分けるため、孫の法定相続分は12分の1ずつとなります。このように、代襲相続が生じた場合の孫の法定相続分は、子どものきょうだいの人数に加えて、孫自身のきょうだいの数によって変わってきます。

5.孫に財産を残す方法(遺産相続以外)

孫に財産を残す方法として、ここからは、遺産相続以外の方法を紹介します。

方法④ 生前贈与

生きているうちに財産を贈与することを生前贈与といいます。金額や対象を好きに決められるため、自分の財産を確実に渡したい方がいる場合に利用しやすい方法です。

生前贈与を行うと、その方との関係性や基礎控除後の財産の金額に応じた贈与税が発生します。なお、贈与税は1年に110万円までの基礎控除があるため、金額内であれば贈与税は不要です(※1)。この仕組みを利用して、毎年110万円以下の贈与を行う「暦年贈与」を行う方もいます。贈与された方は相続税のために確定申告を行う必要がない点もメリットといえます。

ただし、この方法を利用するためには、亡くなる前7年間の贈与財産は相続税の課税対象となる「生前贈与加算」の制度も押さえておく必要があります(※2)。

方法⑤ 教育資金の一括贈与の活用

2026年3月31日までに教育資金に充てる目的で孫にお金を振り込んだ場合、最大1500万円まで非課税になります(※)。

この制度を活用する際は、金融機関に孫(受贈者)名義の口座を開設し、お金を一括で振り込みます。また、金融機関に「教育資金非課税申告書」を提出するなどの要件が設けられています。全ての金融機関がこの制度に対応しているわけではないので、検討している金融機関のホームページなどで事前に確認しましょう。

ここでいう教育資金とは、学校の入学金や授業料はもちろん、学習塾やスポーツ教室といった学校以外のサービスに対して支払う費用なども該当します。ただし、後者の場合は非課税枠が500万円であることに注意が必要です。

方法⑥ 生命保険の受取人への設定

生命保険金の受取人を孫に設定することで、自身が死亡した際に孫にお金を残す方法です。生命保険金は被相続人が所有する財産ではありませんが、相続によって取得するものであるとみなされるため、他の遺産とは扱いが異なります。

例えば、生命保険金は遺産分割協議で協議する遺産の対象ではありません。受取人を指定していれば、他の相続人が「生命保険金は自分が受け取りたい」と主張したとしても、原則として受取人が取得することになります。ただし、生命保険金は課税対象であるため、金額によっては孫が相続税を支払う必要があります(※)。

6.孫に遺産相続をする際の注意点

孫に遺産を相続する際の注意点を3つ紹介します。

孫が支払う相続税が高くなる

遺言書もしくは養子縁組によって孫が遺産を相続すると、相続税は通常より2割高くなります。多額の遺産がある場合には、大まかな相続税額を事前に計算しておくといいでしょう。代襲相続の場合は2割加算がないため、通常通りの方法で計算を行います。

他の相続人の取り分が減る

孫が多くの遺産を相続すると、他の相続人が「本当はもっと遺産をもらえるはずだったのに」と不満を持つかもしれません。不満を抱いた相続人が、遺留分を請求する場合もありえます(次項で説明します)。トラブルに発展しないよう、他の相続人の気持ちも十分に配慮しながら決めるのが望ましいでしょう。

他の相続人が遺留分を請求する可能性がある

被相続人の配偶者・子ども・直系尊属(父母・祖父母など)は、「遺留分」を請求する権利が認められています。遺留分とは最低限保障された相続分のことです。

孫に全額遺産を相続したいと思い、そのような遺言書を書くこと自体は問題ありません。しかし、他の相続人が遺留分を請求することで、孫の取り分が減ってしまう可能性があることを覚えておきましょう。

7.まとめ

孫は基本的に遺産を相続できませんが、遺言書・養子縁組・代襲相続のいずれかの方法によって相続させることが可能です。また、遺産を相続するだけではなく、生前贈与などの制度を利用して財産を渡すこともできます。

多額の財産がある場合には、孫が支払うことになる相続税や贈与税についても考える必要があります。必要に応じて専門家に相談するなどして、できるだけスムーズな相続を目指しましょう。

遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。

パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)

  • 国境なき医師団とは?
  • 遺贈寄付までの流れ
  • 公正証書遺言とその作り方
  • 自筆証書遺言とその書き方
  • 遺贈Q&A

8.遺贈寄付に関するご相談

遺贈寄付の手続きは、誰にとってもはじめての体験。でも、相談できる人が身近にいない、という声も聞かれます。「国境なき医師団遺贈寄付ご相談窓口」には、幅広い知識と経験豊富な専任のスタッフがいます。遺言書の書き方から手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。

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国境なき医師団 遺贈寄付ご相談窓口

遺贈寄付専任スタッフがお手伝いします。

国境なき医師団には、幅広い知識と相談経験豊富な専任のスタッフがいます。
遺言書の書き方から、手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。

監修者情報

庄田和樹 司法書士・土地家屋調査士・行政書士 司法書士法人 土地家屋調査士法人 行政書士法人 神楽坂法務合同事務所 代表 株式会社 遺言執行社 代表取締役

信託銀行、司法書士法人勤務を経て独立。司法書士、土地家屋調査士、行政書士として相続等の問題の解決に注力するとともに、株式会社 遺言執行社を設立し、遺言書作成サポート、死後事務委任契約をはじめとする専門的なサービスを提供している。