相続財産を寄付した場合の「特例」や「寄付金控除」とは? 適用するメリットと寄付先や計算方法を解説

更新日:2026年4月28日
監修者:庄田和樹(司法書士・土地家屋調査士・行政書士 司法書士法人 土地家屋調査士法人 行政書士法人 神楽坂法務合同事務所 代表 ウィルサポート株式会社 代表取締役)

相続した財産を国や地方公共団体、特定の公益法人等に寄付すると、「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」を受けられます。さらに、寄付の内容によっては所得税などの控除に加え、住民税の寄付金控除も受けられる場合があり、重ねて税負担を軽減できる可能性があります。

ただし、「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」を受けるためには一定の要件を満たすことが必要です。ここでは「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」のメリットや計算方法、要件について詳しく解説します。

目次

遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。

パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)

  • 国境なき医師団とは?
  • 遺贈寄付までの流れ
  • 公正証書遺言とその作り方
  • 自筆証書遺言とその書き方
  • 遺贈Q&A

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1.「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」とは何か

国や地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人等に財産を寄付した時、寄付された財産は相続税の課税対象とならない特例のことをいいます。この特例を利用するためには、その財産を相続税の申告書の提出期限までに寄付を完了することなどの要件があります。

なお、寄付をする方や寄付先の状況などによっても相続税の取り扱われ方が異なるため、この特例を利用される方は、国税庁のウェブサイトなどもあわせて確認されることをおすすめします。

2.相続税がかかるケース

そもそも、相続税は、被相続人(亡くなった方)から取得した財産の合計額が、一定額を超える場合に課される税金です。

これらの財産の合計額から、被相続人の債務の額を差し引き、さらに、加算対象期間(※)内に被相続人から暦年課税による贈与を受けて取得した財産の価額を加算した金額を基に、相続税の課税対象かどうかが判定されます。

計算式に表すと、以下のようになります。

課税対象となる財産の合計額-基礎控除額=課税対象となる金額

基礎控除額とは、納税者の個々の事情に配慮する目的で定められた金額のことです。基礎控除額は以下のように計算できます。

3000万円+600万円 × 法定相続人の数=基礎控除額

法定相続人の数え方や計算方法にはさまざまなルールがありますが、一般的なケースでは、以下の金額を超えると相続税がかかる計算になります。

3.「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」を受けるために満たす必要がある要件

「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」を受けるために必要な要件を3つ紹介します。

相続税の期限までに寄付の手続きを完了する

相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内と定められています。つまり、10カ月以内に対象の財産を寄付し、申告書の作成と納付を行わなくてはなりません。

相続税の申告を行う時は、相続税の申告書の他に、「相続財産の明細書(第14表)」を添付します。

また、「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」を受けるためには、寄付をしたことを証明する「寄付金受領証明書」が必要です。これは寄付先の名称や金額などが記載された書類で、寄付金を支払って1週間〜1カ月程度で郵送によって入手できます。発行に時間がかかることもあるため、申告期限が迫っている場合には注意が必要です。

相続財産をそのままの形で寄付する

「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」を受けるためには、相続によって得た財産をそのままの形で寄付する必要があります。例えば、有価証券は有価証券のまま、不動産は不動産のまま寄付することが必要です。不動産を売却し、その分の現金で寄付をしたとしても、相続人が相続財産を寄付した場合の特例は適用されません。

寄付先として認められた団体であること

「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」は、寄付先が以下のいずれかであることも要件とされています。

国境なき医師団日本に対する相続した財産の寄付も、相続人が相続財産を寄付した場合の特例の対象となります。「亡くなられた方の財産を、次の世代の命を救うために使いたい」といった思いから、たくさんの方に寄付をいただいています。

国境なき医師団では、換価性のある不動産については現物でのご寄付の相談もお受けしています。

4.「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」以外にも

「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」以外にも、相続財産からの寄付にかかわる税制優遇制度があります。そのメリットを、所得税と住民税の2つのポイントから解説します。

所得税の寄付金控除

前項では「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」に触れましたが、個人が寄付金を支出した場合、所得税に対して寄付金控除(所得控除)が適用されます。
このうち、寄付先が政党もしくは政治資金団体、または認定NPO法人等もしくは一定の公益法人等であった場合は、寄付金控除(所得控除)または寄付金特別控除(税額控除)のどちらか有利な方を選ぶことができます。

所得税の寄付金控除(所得控除)とは、国や地方公共団体、認定NPO法人などに対して「特定寄附金」(※)を支払った場合に受けられる所得控除です。所得税の課税対象となる金額から寄付金控除額を差し引くことで、課税対象となる所得額が減額されます。

寄付金控除額の具体的な計算方法は以下の通りです。

①と②のうちいずれか低い金額-2000円=寄付金控除額

①:その年に支出した特定寄附金の額の合計額
②:その年の総所得金額等の40%相当額(寄付先が政党の場合は30%)

寄付金控除によって所得税の減額を行う際は、以下の計算式によって減額分を求められます。

寄付金控除額 × 所得税率 × 1.021(復興特別所得税)=減額分

寄付金特別控除(税額控除)とは、個人が、政党もしくは政治資金団体に対して、または認定NPO法人等や公益社団法人等に対する寄付をした場合、前述の寄付金控除(所得控除)以外に選ぶことのできるものです。

政党もしくは政治資金団体に寄付をした場合

(その年中に支出した政党等に対する寄附金の額の合計額-2000円)× 30%=(政党等寄附金特別控除額)

認定NPO法人に寄付をした場合

(その年中に支出した認定NPO法人等に対する寄附金の額の合計額-2000円) × 40%=(認定NPO法人等寄附金特別控除額)

公益社団法人に寄付をした場合

(その年中に支出した公益社団法人等に対する寄附金(一定の要件を満たすもの)の額の合計額-2000円)× 40%=(公益社団法人等寄附金特別控除額)

前述の寄付金控除(所得控除)とこれらを比べて、有利な方を選んで控除を受けることができます。

住民税の寄付金控除

相続税・所得税だけではなく、住民税にも寄付金控除の制度があります。住民税の寄付金控除は、寄付先と寄付金の用途によって「基本控除」と「特例控除」(ふるさと納税)の2種類に分けられます。

〈基本控除〉
都道府県、市区町村、特定の公益法人、および居住地区内の認定NPO法人といった、条例で指定された寄付先に寄付をした場合に受けられる控除です。以下のように基本控除額を計算します。

(寄付金額-2000円)× 控除率(※)=基本控除額

〈特例控除(ふるさと納税)〉
ふるさと納税は応援したい都道府県・市区町村を選んで寄付できる制度です。
総務大臣が指定する地方自治体に寄付すると、基本控除に加えて特例控除が受けられます。

(寄付金額-2000円)×(90%-所得税率 × 1.021)=特例控除額

特例控除額は「住民税所得割額」の20%が限度です。住民税所得割額とは、課税対象となる所得金額 × 税率(基本的に10%)で計算できます。

ふるさと納税について、あるいは、ふるさと納税による寄付金控除についてのご相談は、税務署や税理士、あるいはポータルサイトのサポートセンターへお問い合わせください。

5.「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」に関するQ&A

「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」を受けるための手続き方法は?

「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」を受けるためには、相続税の申告書を記入した上で税務署へ提出する必要があります。なお、寄付した財産は相続・遺贈によって取得した財産であることや、寄付先が国や地方公共団体、特定の公益法人であることなどの要件があります。

相続税における申告期限はいつまで?

相続税の申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内です。寄付金控除を受けるためには、期限までに寄付を行い、申告・納税を行う必要があります。

申告書にはどのような添付書類が必要?

税務署のウェブサイトからダウンロードできる「相続財産の明細書(第14表)」や、寄付先から送られてくる「寄付金受領証明書」の添付が必要です。

6.国境なき医師団日本への寄付は、税制優遇措置の対象です

国境なき医師団日本は諸轄庁である東京都により認定を受けた「認定NPO法人」です。したがって、国境なき医師団日本への寄付は、相続財産からのご寄付を含め、相続税・所得税・住民税などにおける税制優遇措置の対象になります。確定申告書の作成時に、寄付金を「認定NPO法人等に対する寄付金」として申告することで税制優遇措置を受けられます。

寄付の税制優遇措置に関して、詳しくは以下のURLを御覧ください。

7.まとめ

相続した財産を国や地方公共団体、特定の公益法人に寄付することで、「相続人が相続財産を寄付した場合の特例」を受けられます。また、所得税にも寄付金控除が適用されるため、税負担を軽減できる可能性があります。

ただし、寄付金控除を受けるためには一定の要件を満たす必要があります。相続した財産の規模が大きい場合や、内容が複雑な場合は、必要に応じて税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。

遺産からの寄付の方法や注意点などをご説明した資料をご用意しています。

パンフレットに掲載されている内容は以下の通りです。(一部)

  • 国境なき医師団とは?
  • 遺贈寄付までの流れ
  • 公正証書遺言とその作り方
  • 自筆証書遺言とその書き方
  • 遺贈Q&A

8. 遺贈寄付に関するご相談

遺贈寄付の手続きは、誰にとってもはじめての体験。でも、相談できる人が身近にいない、という声も聞かれます。「国境なき医師団遺贈寄付ご相談窓口」には、幅広い知識と経験豊富な専任のスタッフがいます。遺言書の書き方から手続き上のことまで、遺贈のことなら何でも、お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

国境なき医師団 遺贈寄付ご相談窓口

遺贈寄付専任スタッフがお手伝いします。

国境なき医師団には、幅広い知識と相談経験豊富な専任のスタッフがいます。
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監修者情報

庄田和樹 司法書士・土地家屋調査士・行政書士 司法書士法人 土地家屋調査士法人 行政書士法人 神楽坂法務合同事務所 代表 ウィルサポート株式会社 代表取締役

信託銀行、司法書士法人勤務を経て独立。司法書士、土地家屋調査士、行政書士として相続等の問題の解決に注力するとともに、株式会社 遺言執行社を設立し、遺言書作成サポート、死後事務委任契約をはじめとする専門的なサービスを提供している。