リーダーシップを発揮する女性たち
“一緒にがんばるだけです”
2022.03.08

医療活動マネジャー
レベッカ・スミス
レベッカ・スミスは、そこで医師として人道・医療援助活動に従事している。レベッカがMSFで働き始めたのは、彼女自身が難民として祖国リベリアの紛争から逃れ、コートジボワールに避難した時にさかのぼる。
女性であり、リーダーであるためには、こうした困難を乗り越え、強くならなければなりません

同じ難民の人びとのために
人道援助への関心は、私の場合幼い頃に始まっていました。子どもの頃、私の両親は、親のいない子どもや他人の面倒をよく見ていました。リベリアの社会では、誰もが誰かの世話をしています。私は人道的な人とはどういう人なのか、たくさんの例を目にしながら育ち、いつしかその考え方を自分のものとして身につけていったのです。
リベリアが内戦状態だった1990年、難民としてコートジボワールに逃れた私は、現地の診療所でボランティアの看護師として活動していました。自分の看護スキルを、私と同じ難民の人びとのために役立てたかったのです。働き始めてから3カ月後、栄養治療センターを開設していたMSFから、医療従事者を必要としていると打診があり、診療所から推薦された私はテストに合格した後、栄養治療アシスタントとして採用されたのです。
紛争の激化により活動を終了しなければならなくなった時、MSFはプロジェクトを私の故郷に近いリベリア南東部に移しました。そこで私は、看護師の研修を受けて最初に勤務していた病院で、当時の仲間たちと一緒に働き始めました。MSFは戦争で被害を受けた病院を改修し、半年後には私もプロジェクトのチームリーダーになったのです。
その後、残念なことに再び内戦が起きました。全てを残してコートジボワールに戻るしかない状況だったのですが、幸いにもMSFはリベリアの首都のモンロビアでも病院を開設していたのです。MSFが私を探しているという手紙を難民キャンプで受け取り、その後、モンロビアの病院の外科部門のチームリーダーになり、5年間勤務したのです。
バングラデシュでの活動
2010年に海外派遣スタッフとしてイエメンに赴任し、その後、南スーダン、ナイジェリア、ケニアでMSFの活動歴を重ねています。リベリアには、エボラ出血熱の大流行で危機に見舞われた際に戻りました。2020年4月には新型コロナウイルス感染症に関する啓発活動に携わり、手洗い石けんの戸別配布などを行いました。大流行の危機が去るのを待っていたところ、バングラデシュで活動する機会が来たのです。「行ってみないか」と聞かれ、「はい」と答えました。
バングラデシュでは現在、医師、看護活動と看護チームに関わるリーダーを兼任し、救急部、集中治療室、一般病棟、隔離病棟、検査室を担当しています。それぞれの分野の管理職として、病院全体の運営も統括しています。

粘り強く、気落ちせずに
私の仕事はリーダーとしての挑戦に満ちています。挑戦がなければ意味がないでしょう。リーダーシップを発揮するために大切なことは、辛抱強くあること。ある程度のことは耐えるとともに、さまざまな意見に耳を傾けることが必要です。
国によっては、女性に発言権が回ってくるのは最後だったり、全くなかったりします。そのため、 たとえリーダーになったとしても一筋縄ではいかないこともあるでしょう。何かを頼んでも相手がやってくれないことがあるからです。型にはまった見方をされる場合もあるかもしれません。女性は決まった場所に居て、料理に専念しているものだ、と。私たち女性は、意識的にそうした意見や反応の外に出ていくべきだと思っています。
女性であり、リーダーであるためには、こうした困難を乗り越え、強くならなければなりません。このような状況は将来的には改善していくとは思います。でもゆっくりとしか変わっていかないでしょう。それでも粘り強く、気落ちせずに、職業人として与えられた務めを果たすべきです。助けを必要としている人のために働いているのですから──。その気持ちを忘れずに、一緒にがんばるだけです。